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碁法の谷の庵にて

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2012年08月13日
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カテゴリ:法律いろいろ
 一般の刑事事件と少年審判は、色彩がかなり違います。
 
 同じ部分も違うところもあって、実に曖昧。
 私などは鵺(ぬえ)的少年審判なんていう言い方をする(悪口ではない)のですが、その違いの大きなところを付添人弁護士の視点から今日は話してみようかなぁと思います。
 同時に、自分のお子さんが捕まってしまった親御さんの参考になれば、と思います。



 大きな違いはいくつかあるのですが、その最大の違いといってもいいのが、少年審判における親(親権者)です。

 少年審判においては、親御さんがものすごく重要な関与をします。
 私自身も弁護士として付添人をやってきていますが、少年(少年審判だと女子でも少年という)本人に勝るとも劣らず、親御さんの重要性が極めて高いと言えます

 普通の成人一般の刑事事件の弁護人でも、親に協力を依頼することはあります。
 被害弁償金や保釈金を出してもらったり、情状証人として出廷してもらったりと、親の役割はそれ相応に大きいですし、弁護人としても協力があればとても心強いです。
 しかしながら、それすら少年審判における重要性とは比べ物にならないほどだと言えるでしょう。それが証拠に、少年審判では親御さんは少年のすぐ横に座り、必ず呼び出されます。弁護士の付添人以上に親御さんは重要な存在なのです。



 親御さんの役割の一つは、審判で少年を守る役割です。

 少年審判では、子どもに自分を守る力はほとんどありません。大人だっていきなり裁判にかけられたら自分の身は弁護士に頼まなければほとんど守れないのですから、まして子どもにそんな力がある訳がないのです。
 裁判所も少年の立場に配慮するのは当然行いますが、それでも親がついていなければ子どもは自分の身を守れないでしょう。

 そして、事件によって例外はなくもないですが、少年が一番信頼しているのは、弁護士の付添人でも家庭裁判所の調査官でも少年鑑別所の担当者(技官)でもありません。突然捕まってから現れた、弁護士etcを名乗る謎の人間に全幅の信頼をおけ、と言われたって無理な話です。スーツで現れる人間は警察の手先だと思ってしまう少年すらいるといいます(私は幸い、遭遇したことはありませんが・・・)。
 修羅場に立たされた少年にとって一番の味方として信頼をおけるのは、ずーっと保護者をやってきた親御さんしかいないのです。
 
 否認事件なら、親御さんが励まし続けなければ、少年は否認を続ける気力だってわかなくなるでしょう。大の大人ですら、否認を続けることに疲れ果て、嘘の自白をしてしまう訳ですから。弁護士が毎日接見をしたからと言って励まし効果があるのかどうか、怪しいものがあります。

 自白事件ですら、親御さんが全く面会に来なければ、少年が見捨てられたと思ってしまう例だって少なくありません。親御さんだって仕事がある場合が通常ですから、ある程度なら、付添人や調査官からそうじゃないとなだめます(付添人として、親御さんとの信頼関係にヒビを入れないことには相当気を使います)が、それも程度問題です。
 もしここで親御さんと少年の信頼関係が壊れてしまったら少年を家に戻しても、非行防止の効果は上がりません。
 非行防止のためには少年院に入れるしかない、保護観察にするのでも家に戻るのではなく、どこかの篤志家に預かってもらう保護観察をするしかない、検察官送致して刑務所いけということになってしまいます。
 親がきちっと協力してくれるからこそ保護観察で済ませられる件は、決して少なくないのです。



 そして、もう一つは、少年審判は子育てのあり方を責任を問わない形でチェックしているということです。

 少年審判は、少年の立ち直りを考えます。 特に重大な事件ならば、成人同様の刑事処罰をするような件もありますが、それでも「一旦は」立ち直りに向けてどうするという少年審判を行います。
 少年がなぜ罪を犯してしまったのか。どう教育していけば非行に走らないのか。非行に走らせない現実的手段は何かないのか。それを知るためには、少年の成長の様子を見てきた親にこれまでの子育てを正直に語ってもらうことが不可欠です。
 少年自身から聞くのももちろんですが、親御さんの視点は欠かせません

 そして、よほどの重罪でない限り、今後少年は社会に戻る可能性が高い(少年院ですら、何年も入っている訳ではない)と言えます。
 戻ってきた時に、どう観護養育していくかを考えていかなければなりません。
 裁判所にせよ、弁護士の付添人にせよ、審判が終われば少年に関わり続けることは難しくなります。成人した後まで少年に付き合ってくれるのは親御さんしかいないのです。

 他方で、子供が少年犯罪に走ってしまうのは、多かれ少なかれ、親御さんの観護態勢に問題があるということも否定できません。純粋な過失犯とか、少年が何らかの病気とか、親から離れた寮生活で変な癖を覚えてしまった場合でもない限り、まともな家庭から重大な少年犯罪者は普通でません。
 私の遭遇した少年事件でも、家庭に何らかの問題を抱えている件が大多数でした。過半数は親が離婚・死別・服役・文字通り行方不明などで片親しかいませんでした。親御さん自身が病気だったこともありました。完全に親御さんの都合で自分の希望も反映されずに人生を振り回された(親は親でやむを得ない事情はあったのですが…)と言ってもよかった件もありました(詳細は守秘義務で勘弁)。
 例え両親揃っていても、子どもによって適切な子育ては変わります。放任主義がいいのか過干渉がいいのか、なんて誰にもわかりません。子育ては手探りです。その中で結論として誤った方針を選択してしまうこともあるでしょう。

 例え親御さんの観護養育に問題があったにせよ、親御さんが不誠実だから犯罪を起こした、親が悪い、と言える事件は決して多くありません
 
 その上で、今後どうするかを考えるためには、これまでの観護養育を把握した上で問題点の把握をしていくという形にしなければいけないのです。
 犯罪を起こしたからといって、頭ごなしにこれまでの十数年の養育を否定するのは、愚策そのものです。ただ子育てがダメだダメだといったところで、親御さんとしてはじゃあどうすればいいのか、という問題が残ります。
 のみならず、親御さんだって大半は子育てで苦労し、少年審判に自分の子が送られたことに心を痛めているのですから、頭ごなしの否定は親御さんを感情的にさせてしまいかねません。それで少年の面倒を見る気力を奪ってしまっては本末転倒です。
 どうしようもないほど保護環境を整えるのが無理な親御さんなら、あえて少年に諦めさせるということも考えざるをえないでしょうが、大半の件はそうではありません。第一、諦めさせたところで結局誰か(往々にして篤志家や税金で運営する所)が引き受けるのですから、親御さんが引き受けられるならそれが一番です。
 そして、少年審判に対する親御さんの取り組み方も、今後親御さんがきちんと少年を観護養育していくかどうかの一つの試金石になりえます。






 そんな訳で、私も、付添人になって、少年との話が付いたら、まずは親の連絡先をどこかから聞き出し、必ず親御さんに連絡を入れます。こちらから家庭訪問するか、事務所に来てもらうか、はたまたどこか別の場所で落ち合って、少年の事情を聴きだすか。
 もう諦めざるを得ない、というような件を除いて、最低限どれかをしないと、本格的な付添人活動ははじめられないと言っていいでしょうし、事務所は遠くて嫌、家には入らないで欲しい、どこでも会いたくないという親御さんであれば、親御さんの元に戻すという意見は付添人として書きにくくなります(少年に希望されれば書きますが、説得力が全く伴わない)。

 もちろん、少年の付添人なので、親御さんと対立することも時にはしなければいけません。
 私自身まだ20代、子育ての苦労を知らない身で、頭ごなしの否定とはならない程度に、この点はどうでしょうか、と言っていくことも必要になります。
 家庭裁判所の調査官の協力もお願いしながら、二人三脚に近い形で親御さんと話し合っていくことも必要になります。
 


 上の文章は付添人弁護士の視点から、親御さんの重要性について書かせていただきました。



 最後に、自分のお子さんが何かをやらかして捕まってしまった親御さんがもしここをみていたら、まずは誠実に審判と向き合って欲しいと思います。
 少年に会いに行って叱りつけるのは(程度問題で)構わないとしても、誠実に対応すらしない親御さんをあなたのお子さんは親として信用してくれるでしょうか?
 そのことを考えて欲しいと思います。





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最終更新日  2012年08月13日 19時51分22秒
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Re:少年審判と親御さん(付添人弁護士の視点から)(08/13)   Rの母 さん
二日後に、息子の審判がある母親です。
なかなか気持ちの整理ができないままでしたが、
このブログを見て家裁に行く決心がつきました。
一方的な、担当弁護士の話に理解できず毎日憂鬱でいろんなワードで検索し、こちらのブログにたどり着きました。

ありがとうございました。 (2014年11月05日 13時14分06秒)

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