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碁法の谷の庵にて

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2013年03月26日
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最近、債務の原因として問題になっているのが、奨学金です。
日本学生支援機構(旧日本育英会)から借りていた奨学金の返済に困ってしまい、多重債務や破産、と言う例がとても増えてしまっているのです。

まず大前提として、いま日本で準備されている整備されている奨学金は「借金」です。給付・プレゼントされる奨学金は、大学とかが個別的に用意しているものだけです。
借りたものは返すのは至極当然のことであり、学生支援機構が貸した奨学金を返せと請求するのも、本来なら至極当然な話です。

しかし、奨学金の大きな問題は「奨学金を借りる人間がどういう人か」と言うことを考えると見えてきます。

奨学金を借りるのは、高校から大学に進学する18歳くらいの人間です。
つまり、未成年者で、自分で家計(小遣いではない)のやりくりをしたこともない、それ以前にアルバイトさえしているとは限らない、というのが大半の少年少女たちです。

実際に奨学金を借りたとして、どれくらい返済するか、考えてみましょう。
奨学金は4分の1くらい無利子貸与もありますが、残りの有利子貸与の場合は利率3%、遅延すると利率は10%になります。
大学4年間で仮に月12万円、入学時増額50万円、年利3%のペースで借りつづけたとした場合、貸与を受ける額は利息込で実に843万円ほど。20年月賦の場合3万5000円ほどの返済になります。
元本が減らない状態で遅延してしまった場合、利息だけで月に7万円ほどになります。

そして、現在は大学を卒業したからと言ってそう簡単に高収入にはありつけません。
大卒でも2割以上が非正規労働者。年収300万を切るどころか仕事先が見つからない人すら別に珍しくありません。
奨学金延滞者の56%がバイトや休職状態で、87%は、年収300万円未満と言う統計もあります。
年収300万円を切っている状態で、およそ年間40万円の出費を追加で余儀なくされるのは、痛いどころでは済まされません。

それでも、借りている額面や月間の返済額などは、機構などの案内にもしっかり書いてあります。機構としては、これで説明が足りないのかよ、と考えるのかもしれません。

ところが、人が生きていくためにどれだけの金銭がいるのか、債務を抱えるというのがどれほどつらいことなのか、今自分の置かれている立場がどれほど不安定で不確実なものなのか。
奨学金が借金だということが言葉では分かっていても、その内実まで正確に理解して借りるに至るのは至難の業です。
大学を卒業して、後になってから困ったな…という例が後を絶たないのです。
中には、奨学金を返すために消費者金融に手を出すという悪循環に陥る人さえいます。もっと高い利息に借り換えるなど愚策そのものですが、首が回らなくなるとそういう対応を取ってしまう人は決して少なくありません。

本来なら、その辺については、支援機構や説明担当の教師、親御さん等々がきちっと説明、理解させた上で申し込むようにすべきところなのですが、親御さんも自身がこの手の認識に乏しく、まして自分の子どもにきっちり伝えるなんて望むべくもないのが実情です。
大人だって、そういうことがバシッと認識できる人たちばかりなら、多重債務者なんてそうそう出ません。


そして、一番の問題事例が、そもそも借りたつもりはない!というケースです。

何が起こったかと言えば、学生の親が勝手に奨学金を申請してしまうのです。
当の学生はと言えば、何の書類かもよく分からず親の求めに応じて入学等のサインかと思ってなんとなくサインすると、実は奨学金貸与の書類であり、巨額な債務があるなんてことに思いすら至らぬまま過ごしてしまい、後で協会から遅延損害金付で返済請求をされてはじめて事態に気付くという訳です。
流石に親に騙されてサインしたということを裁判で立証することができれば返済義務を免れるのですが、裁判で訴えられるのは騙されてサインする何年も後の話で、立証は一苦労です。
本人のサインまで別人が書いていました、と言うことなら筆跡鑑定でも出せば簡単ですが、本人のサインであるのが間違いない場合、裁判所としては反証がない限り本人は事情を知った上でサインしている、と判断されてしまいます。ただ単に本人が「覚えがない」と主張するだけで反証と認めてもらうのは至難の業です。
また、親が勝手にやらせただけだ、と言う主張が認められたとしても、その場合は親に返還義務が発生する(そうでなくとも、連帯保証人になっている場合が多い)のみならず、親が犯罪者として警察に突き出される覚悟さえ必要になります。
協会としてみれば、学生本人が借りたいと言うから貸したのに、学生本人に返済する意思があると騙して奨学金を得させた親の行動は詐欺に他なりません。金額も相当な額になります。そして返済されるわけでもないとなれば、事情が事情だからもうこんなことやっちゃだめだよ・・・で済ませる訳にもいかないことは十分に考えられると言えます(私が検察官ならそう考えるでしょう)。

さらに弁護士視点から、サービサーがやたらと強硬対応してきて債務減縮にまるで応じない(消費者金融なら応じてくれる)とか、連帯保証人になる親御さんが死亡して相続でギャッとか、時効中断云々みたいな話もたくさんあるのですが、これ以上書き連ねるときりがないのでこの辺にしておきます。

そんなこんなで、奨学金に関する問題は弁護士の多くが頭を痛めています。



奨学金の制度について無利子貸与や給付型を今より増やすべきであるとは思いますが、財源の問題もある以上、結論として極制限的になることも仕方のないことなのでしょう。学習権保障や将来的な人材確保、諸外国の奨学金等との比較からの批判も当然ある訳で個人的に共感していますが、今回はそこには踏み込みません。
機構側も、今の経済情勢では回収とて思うに任せないでしょう。今まで回収が平穏に行けばこそ、これまで回収の焦げ付いてしまう事例については温情対応が取れていた(例えば、連帯保証人に対する請求はかつては緩く、なし崩し的に請求がなくなるというようなこともあったようです)のに、回収できないからこそこうした強硬対応を取らざるを得ないのでしょう。
消費者金融などより遥かに低利率で貸し、所得連動型返還制度などを新たに設けている学生支援機構の頑張りそれ自体は敬意を表すべきものと考えています。

とはいえ未成年者に大金を利息を取る形で貸す、という事態につき、未成年者を支援するという建前を持っているはずの機構が伝えるべき情報はこれでは足りない、というのが私の偽らざる意見です。

「僕は債務の額についてきちんと説明したはずだよ。実際の負担がどんなものか、説明を省略したけれど」

・・・それなんてキュゥべぇ(魔法少女まどか☆マギカ)でしょうか。
キュゥべぇは宇宙の熱的死を防ぐという崇高(?)な理念のために活動し、魔法少女になる、なったら戦いをしなければならないことはしっかり伝えて、その上かなえられる願いは大学進学どころか人智ではどうにもならないレベルのことまでできるし、実際かなえているのに、蛇蝎のように嫌われていることはアニメに関心をお持ちの方はご存知ですよね。
将来不確定で自立した経験もない未成年者に貸すということを踏まえれば、ただ単に外面だけ債務の額を伝えるのではなく、そこまでの説明をしなければキュゥべぇと同じではないでしょうか。

また、奨学金と言う言葉では借金であるという意識に結びつかない、と言う指摘も一理あると思います。
奨学金と言う言葉ではなく教育ローンなり貸金と言う言葉をバシッとつけて、あくまでもこれは貸金であるということをはっきりさせるべきであろうとも思います。


そして、機構に対して批判はしたものの、機構に問題点があるから奨学金を返さなくてもよいなどと言う話になる可能性はほとんどありません。
借りる側がきちんと自身の返すべき債務について意識せずに奨学金を借りることほど危険なことはありません。
これから奨学金を借りる学生さんは、自分の背負う債務がどれほどの金額かだけではなく、返済のために金を割くということのつらさをきちんと意識し、大学を卒業したから楽に返せるというものではないことをくれぐれも認識した上で、借りてほしいと思います。
能力はあっても大学進学を諦めよというような指摘は個人的にはおかしいとは思いますが、現状がそうである以上、それ前提に動かざるをえません。
また、海外では僅かな学費値上げに対し、大学当局に学生が猛抗議をかけるような事例もあります。私自身人のことを言えた義理ではありませんが、自身の大学生活を支える学費がどれほどのものか、入学前に考えてみるべきです。

また、親御さんも、奨学金を借りるに際しては、未成年者から相談があるはずです。あまり詳論しませんでしたが、奨学金には連帯保証人が求められます。そうなれば、まず親御さんに話が来る場合が大半でしょう。
連帯保証人になるな、などと言うつもりはありません。
しかし、連帯保証人になるに当たって、ご家庭の家計簿などを見せてもいいでしょう。
月に例えば3万円返すというのがどれだけの負担になるのか、と言うことをお子さんにしっかり伝えてあげてください。






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最終更新日  2013年03月26日 17時32分06秒
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