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碁法の谷の庵にて

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2014年04月08日
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カテゴリ:法律いろいろ




新大学1年生の皆さん、進学おめでとうございます。



大学に入ってから実家を離れて独り立ちする方も多いかと思います。
私の囲碁関係の知り合いも何人か都市部の大学に行きました。



しかし、大学生が困った犯罪をやってしまう例は後を絶ちません。
カルト系のサークルの被害者となることなどは、大学側も相当頑張って広報していると思いますが、実際には「加害者になってしまう」という路線もあるのです。



半ば脅されていたが、警察に駆け込もうとも思えなかった

まさか犯罪とは思わなかった

悪い手口に使われるなんて思いが至らなかった。

相手が同意してるから問題ないと思っていた。

つい軽い気持ちで。

みんなやってるから



私が今まで弁護した犯罪者たちの中に、「こてこてに悪人だったから」これから説明するような犯罪をしでかしたという人は、大学生どころか大の大人にもいません。
大体、上のような比較的軽いつもりでやっています。

人間の悪性と、起こってしまう悲劇の結果は必ずしも対応してしません。

救いようのない悪人なのに大した被害は起こさないこともあれば、
誰もが持つ僅かな出来心や気のゆるみが取り返しのつかない結果を招いてしまうケースもある、と言うことです。

しかし、こうした人間の弱さが、犯罪を正当化する理由や、被害者に賠償しなくてよい理由とはなる例はほとんどありません。


そして、そんな弱さは周囲がとやかく言えば、あるいは自覚を持てば一朝一夕に直るようなものでもありません。
むしろ自分にそんな弱さがない、という自信を持つ方が危ないと言えます。
大学生になったからにはそんな弱さから卒業すべきだ!!というような言説もあります。
しかし、これは正論&理想には違いありませんが、現実の問題解決や抑止にはゴミの役にも立たないでしょう。
そんな弱さが自分&周囲を破滅させないようにするためには、
知識でもってあれはダメ、これはダメと覚えていく方が断然手っ取り早いのです。







さて、大学生が巻き込まれそうな犯罪にはどんなものがあるでしょうか。



一、「銀行(郵貯含む)口座作って売ってほしい。」

他人に口座自体を売る目的を隠して口座を作るのは、れっきとした詐欺罪です。
銀行から通帳やカードを騙し取った詐欺罪になるということで、最高裁の判例も出ています。

銀行や郵便局では、こうした口座売買は犯罪であるというポスターが貼ってあることが多いです。
が、これに気付いても、別に問題ないだろうと思ってやってしまう方、多いようです。



二、「携帯契約してきて、売ってほしい」

普通携帯は売ったりするなと言う約款がついています。

なので、売る目的を隠して携帯を契約し、携帯を受け取るのは、これまた詐欺罪です。
赤の他人の名前を書くと文書偽造罪もおまけでついてきます。

一、二とも、こうして取ってきた口座や携帯は、振り込め詐欺とか、ヤミ金の振込先とか、そういったろくでもない目的に使われてしまうことが多くなっています。
そのため、実際の被害額が高額でなく、これまで犯罪をしでかしたことがなくとも(銀行にとって通帳やカードそれ自体の価値は大したことはない)お説教で終了とはならず、正式な裁判とされる傾向にあります。

また、おいしい仕事だなぁと思って常習犯になると、そういう振り込め詐欺やヤミ金と共犯で何千万円もの被害を出した連中と深くつるんでいたという疑いをかけられる可能性もあります。
そもそも、犯罪で金を稼ぐような連中が下っ端にだけ手厚く金を払い続ける保障もありません。
あとになって大ボスたちが「俺たちはあいつに使われてただけなんだ!!」と罪をこちらになすりつけてくる可能性さえあるのです。



三、「書類の受け渡しの簡単なお仕事!!」

振り込め詐欺ならぬ、「オレオレ詐欺」「母さん助けて詐欺」の金銭受取役の公算大です。

法律の解釈上は、詐欺の受取役と知らなければ罪にはなりません。
しかし、本当に知らなかったのか、気付けて当たり前だろうとされることは考えられます(冤罪ですが、裁判所に認めてもらえなければ意味がありません)。

また、知らなかったと認められても、詐欺に加担したことは間違いないので、被害者に対する賠償義務はほぼ不可避でしょう。
顔を覚えられてしまいやすい分、指示者がのうのうと罪を逃れ、自分だけが捕まってしまう危険も高くなります。
仮に退学にならずとも大学なんか行っている余裕はなく、働き始めて返すようでないと、利息もたまっていくことになります。

しかし、被害者の方が老後のためなり、お子さんのためなりにこつこつためた金銭を持って行ってしまったわけです。
一番悪いのは指示者かもしれませんが、被害者からしてみれば「知ったことではない、勝手にお前らでケンカしてろ」ということになります。



私も、直接金銭を渡すタイプの母さん助けて詐欺の受取役を弁護したことがあります(若干フェイクあり)。

彼は詐欺の受取役とは最初気付かず、仕事を頼まれ、報酬の約束もして現地に向かおうとしたところ、手口を聞いて詐欺の受取役と途中で気づきました。
怖くなってやめようかとも考えたそうですが、辞めたら何をされるのか分からないという状況になり、結局ずるずると受け取りをやってしまいました。

で、被害者の方が顔を覚えていたため、逮捕されてしまったという訳です。

被害者から取ってしまったお金は百万円単位(詳細な金額は伏せます)。
詐欺で受け取ったお金については、彼は結局なんやかんやと言いくるめられて全部指示者に取り上げられ、貰えるはずだった報酬もないどころか交通費さえ自腹でした。

指示者は名前さえ分からず、完全なトカゲの尻尾きりに遭ってしまったのです。
しかし、1円も貰っていない下っ端でも、詐欺の片棒を担いでしまった以上、被害者に対して全額を支払う義務は残ってしまっています。
彼が今後どうやって払っていくのかといえば、前科のついた状態で給料のいい仕事先を見つけるか、被害者が見逃してくれるのを祈るしかないのが実情です。



四、夜の危険な火遊び


恋愛関係でも、犯罪に手を出してしまう例もあります。

例えば、高校生以下の異性(女性に限らない点に注意)と夜の火遊びをした結果、青少年健全育成条例等でしょっ引かれてしまうという例(青少年健全育成条例がない都道府県は長野県位で、それでさえ市町村条例の可能性がある)。

結婚を前提に真剣に付き合っていたんだというのであれば罪にはなりません(こうした条例はあくまでも不健全な性的交際等を処罰するもの)が、真剣な交際であると認めてもらうのも大変です。
決して合意していればいいんだ、という訳にはいかないことは知っておく必要があります。



私が過去に弁護した中には、青少年健全育成条例に引っかかった大学生がいました。
彼は、前科など全くなかったのに、執行猶予付とは言え有罪判決をもらってしまいました。
この手の条例違反について検察は一回でも即公判請求が通例で、彼の処分ばかりが特に重かったという訳ではありません。
結果、彼は小さい頃からの夢だった仕事(どんな仕事かは守秘義務と言うことで…)を諦めなければならなくなってしまいました。

それどころか、一歩間違えば、条例違反よりはるかに重い罪である、強〇(←コードに引っかかるので伏字)などと言った重大犯罪で告訴されてしまう恐れもあります。
被害者の親等が事態について大騒ぎした結果、被害者にも半ば催眠がかかったようになってしまい、その時点では合意がなかったと考え始めてしまう可能性もあるためです。



五、アルコールハラスメント


忘れちゃいけないアルコールハラスメント。

その場の雰囲気にのまれてついつい…と言うのは私も正直経験があります。いや、今でもできるか怪しいと言えます。
しかし、それで人が死にでもしたらえらいことです。
直接飲ませた人物は勿論のこと、周囲ではやし立てていた人物も、責任を問われることが十分考えられます。

以前は(今でも?)「自分で飲んだだけ、断られなかった」と言う言い分が通じたようですが、裁判所も社会的にアルコールハラスメントが認知されるにつれ、「断りにくい雰囲気を作るだけでもダメ」とかなり厳しい対応を取るようになってきているようです。
飲ませた相手が死んでしまったら、直接飲ませた人どころか、周囲で囃し立てた飲み会参加者が、軒並み刑事裁判にかけられかねません。

刑事裁判が何とかなったとしても、民事責任については(ある意味刑事裁判以上に)悲惨なことになります。周囲にいただけの人物も民事責任を問われる可能性は高いと言えるでしょう。
交通事故ならまだしも保険に入っているでしょうが、アルコールハラスメントに保険はないので、死ぬ思いで自腹を切り続ける必要があります。

慰謝料と将来働いて得られる逸失利益(大学生が被害者だと将来の収入も高く算定される)、裁判になった時の相手方の弁護士費用、葬儀費用・・・概算ですが、賠償額は1億円に上ることも覚悟する必要があります。

半分の5千万円で折り合ったと仮定しても、利息だけで月20万円超(!)。重大な過失ある生命・身体侵害では破産免責も対象外なので、死ぬまで返し続ける必要が出てくる可能性があります。








さて、こうした罪を犯してしまった場合、20歳未満であれば、少年審判で処分が決せられることになりますが、20歳以上になってしまえばもう大人と同じ刑事責任を負うことになります。

大人と同じ刑罰を受けたならば、履歴書の賞罰欄にも、前科がありますと書かなければなりません。
後からばれれば即クビでも文句は言えない可能性が出てきます。

例え少年審判でも、大人ならほぼ執行猶予なのに少年審判故に少年院行きになる可能性が相応にあるということや、大人なら20日勾留で起訴猶予や略式裁判で罰金なのに少年審判だと20日勾留の後に4週間の少年鑑別所留置があり得ることを考えれば、少年審判ならではの厳しさがある世界と言えます。



夢や希望を持って大学生活に踏み出したのに、僅かな心の弱さのために、大学生活どころか人生全体が台無しになってしまう…
不憫なことだと思いますが、一番不憫なのは被害者ですし、被害者の被った被害を償う立場にいるのは自分しかいない以上、あとから親に泣きついても、弁護士がついたとしても、どうしようもないと思っていなければなりません。
これを防ぐためには、全ての犯罪を網羅的に覚えるべき・・・といったところで、それは無理な相談でしょう。
司法試験の刑法をやったって無理といえます。


ならば、考えるべきことは「君子危うきに近寄らず」です。
大学や、社会一般でやってはいけないとされていることにアンテナを伸ばし、それについて軽い気持ちで考えない。
これは大の大人でも難しいことなのですが、それしかないのです。


大学生になった皆さんは、くれぐれも自己防衛を怠らず、加害者にも被害者にもならない大学生活をエンジョイしてほしいと思います。





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最終更新日  2014年04月08日 21時00分20秒
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