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碁法の谷の庵にて

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2015年01月08日
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カテゴリ:法律いろいろ
 ネットオークションでのお買い物は、掘り出し物発見の可能性がある半面、金だけとられて品物が送られてこない、あるいは送られてきた商品が事前説明と全然違うというようなリスクがしばしば指摘されます。
 しかし、実は購入者が商品の返還請求を受けたり、最悪の場合犯罪者になってしまうというリスクも存在しているのです。


 新年、ネットオークションでこんなツイートが流れていました。

 ヤフオクでお好みのカテゴリーで「夫and処分」で検索かけると画像も付けずに「夫のコレクションですが処分します」という出品が時々ある。参考画像もついてないから、タダ同然で落札できるんだけど、実際はお宝の山だったりする。だって夫の秘蔵のコレクションだったりするから。

 

参照 

https://twitter.com/juns76/status/550641199007035392

 妻が夫のコレクションをネットオークションで売却処分したと説明して出品することがあるので、それを狙って競り落とそうよ、と言う訳です。
 よーし、ではそれ狙ってみるかーとやるとえらいことになるかもしれませんよ?というのが今回のテーマです。

 もちろん、妻が夫のコレクションをオークションに出すこと(夫が妻のコレクションを出した場合も同じですが、今回はツイートに合わせて妻が夫のコレクションを出したものとして統一します)自体は、いけないこととは即断できません。
 夫が何らかの原因で亡くなり、相続した遺品を処分していることも考えられるでしょう。
 夫が売却したいのだけど、夫がIDをもっていないので、IDをもっている妻が実質的な代行として売却することも、それ自体はいけないことではありません(オークションの運営規約上の問題は別ですが)。

 そう言う所から買うのであれば、問題ない(ネットオークション一般に潜む危険は勿論残りますが)のです。
 今までそう言う所から買ってしまった人たちは、特に請求が来ていないのであれば、きっと妻がちゃんと承諾を取るなりなんなりしてくれたのでしょう。


 しかし、もし妻が夫婦喧嘩とか、大掃除などのつもりで夫のコレクションを勝手に大規模処分して、それをオークションの出品文に堂々と記載してしまっていて、その辺りの経緯が全て夫にばれたらどうでしょうか。
 裁判で微妙な要素が存在する所もあるので、これから書くことは、「必ずそうなる」とは限りませんが、「あり得る最悪のコース」としてお読みください。


 例え所有権者以外から買い受けた場合であっても、平穏かつ公然に他人の財産を手に入れた場合、そこに過失がなかった場合には即時取得(民法192条)によって、買い受けた人は所有権を無事取得できます。
 通常の小売店で買い物をする分には、購入者は別に品物が小売店のものであることを殊更確認する必要はありません。そもそも一消費者に確認すること等無理としたものです。
 また、ネットオークションの場合、そもそも品物の所有権の確認をすること自体が無理でしょう。基本的には、一見して他人の物でない限り、本人のものと信じてよいと判断されると思われます。
 しかし、そもそも夫の物を妻が出していると露骨に説明文に書いてあるとなれば、話は違ってきます。
 入札者としては、そもそもこれは出品者のものではない、と言うことを簡単に認識できます。
 出品者のものではないということは、これは「盗品」ではないの?と言う疑いが生じて当然のことです。
 委任状も何も確認してないのに、「妻だから」という一事をもって夫の物でも承諾を得ていると誤信した、と言うのは難しいように思います。そのような言い分が通ってしまえば、夫婦の財産的独立を規定した民法の親族と財産に関する基本秩序が破壊されてしまう恐れがあります。
 夫婦間であれば日常家事については代理権がある、とする規定(民法761条)もありますが、小売店での一般の買い物や子ども関係の買い物、光熱費などならいざ知らず、夫個人のコレクションの品の売却となると日常家事の代理とは言えない可能性が高いということになるように思います(特に、大規模に売り払っている場合)。
 日常家事債務とは、基本的に「日常生活を送るために通常必要であると考えられる債務」を指すと考えられますから、コレクションを大量に保有する経済力の持ち主が、ネットオークションの二束三文の金額で販売することが日常生活を送るために通常必要、とは到底考えられません。

 そして、出品されたことに気付いた夫としては、激怒して妻が書いた送付先からあなたの住所を突き止め、返還を求めてくるということが考えられます。
 「夫の物を妻が売っている」という事態にもかかわらず、夫の承諾について何も確認しなかったのであれば、過失を取られても仕方ないように思われるのです。

 そうなれば、即時取得は成立せず、物は返さなければいけません

 しかも、妻と夫は別なので、それならせめて払った金を返して!!と言ったとしても、夫から
 「知らん、そんなことは俺の管轄外だ」
と返されてしまいます。
 金を返してもらうには、出品した妻から別途手間暇をかけて金を取り立てなければなりません。出品者夫婦にこの事で亀裂が入り別居してたりすると、妻に金を実質持ち逃げされるというオチになる事も考えられるのです。





 ・・・とここで済んでくれたら実はまだいい想定なのです。
 最悪の事態としては、「刑事告訴」がなされることが考えられます。

 夫の物を勝手に売り払ったことが一読して了解できるような文章が出品文に記載されている場合を考えてみましょう。
 他人の物を勝手に売り払うことは、例え夫婦間といえども、横領罪や窃盗罪などの犯罪を構成します。
 当然、検索して夫の物品を処分しているのを狙ったわけですから、読んでなくて他人物とは思わなかったという言い分は聞きにくいでしょう。
 「本当は夫の物でもでもま、いっか♪」なんて軽い気持ちで買えば、未必の故意を取られる可能性があります(未必の故意でも有罪と言う判例があります)。

 そしてそういった犯罪で所有者の下を離れた盗品を、盗品と知りながら金を出して買い取るのは、被害者の盗品の取り返しを困難にしたことや、泥棒を助長するも同然の行為ということで、「盗品等有償譲受」という犯罪になります。
 最高懲役は10年!!もちろん初犯でいきなり刑務所直行と言うことはないでしょうし、品物をきちんと返せば起訴猶予か罰金(罰金のみの科刑はありえませんでしたので訂正いたします。罰金の場合は、懲役と併せて科せられることとなります)くらいと個人的には予想しますが、前科一犯になるというシャレにならない事態を招く可能性があります。

 ちなみに夫婦間での窃盗罪や横領罪は犯罪としては成立しますが、刑が免除されるので、きちんと籍が入っていれば妻は夫がどれほど怒り狂おうと処罰されません(夫から離婚を叩きつけられる可能性はありますが)。
 売った妻は何の処罰も受けず、買った方ばかりが処罰されるという笑えない事態を招く可能性さえあるのです。(そうした法律の規定自体には、私は批判的ですが)


 夫のコレクションの大規模処分を狙ってオークションに入札するのは、(私個人としては入札自体そもそもお勧めしない所ですが)必ず出品者に連絡を取った上で、夫から承諾をきちんと取れているのか、委任状などを確認した上で入札することが不可欠と言えるでしょう。
 欲しかったものだとばかりに、出品された夫のコレクションを安易に確かめもせず、あまつさえ自分から検索して購入しようとすることは、犬も食わない夫婦喧嘩を自分から金を払って食べるも同然の行為であると、憶えておいてほしい所です。






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最終更新日  2015年01月09日 22時26分27秒
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Re:ちょっと待て!!コレクションのオークションは危ないぞ(01/08)   冨田 稔 さん
> もちろん初犯でいきなり刑務所直行と言うことはないでしょうし、品物をきちんと返せば起訴猶予か罰金くらいと個人的には予想しますが、前科一犯になるというシャレにならない事態を招く可能性があります。

誠に申し訳ありませんが、盗品等有償譲受罪の法定刑は、「10年以下の懲役及び50万円以下の罰金」です。
起訴猶予は、もちろん、あり得ると思いますが、起訴された場合には、罰金のみの科刑はあり得ないと思います。 (2015年01月09日 20時11分40秒)

Re[1]:ちょっと待て!!コレクションのオークションは危ないぞ(01/08)   風の精ルーラ さん
冨田 稔さん
>誠に申し訳ありませんが、盗品等有償譲受罪の法定刑は、「10年以下の懲役及び50万円以下の罰金」です。
>起訴猶予は、もちろん、あり得ると思いますが、起訴された場合には、罰金のみの科刑はあり得ないと思います。

ご指摘ありがとうございます。
訂正を入れます。 (2015年01月09日 22時24分28秒)

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