カテゴリ:弁護士としての経験から
私が法的な調べ物でいろいろ検索していたときのこと。
web上の法律相談(某弁○士ドッ○コムなど)法律相談の回答に行き当たりました。 webの記述を鵜呑みにして調べ物を済ますのは弁護士としてアレだと思いますが、ヒント位なら出てくることもあるので、いきづまったなと思ったら私は検索してみることがあります。 そして、法律相談の内容を読めば読むほど、「相談しているのは相手方だった」ということがあります。 訴訟外で主張を続けていたむちゃくちゃな言い分を法律相談サイトでも延々と書き連ねており、事案もそっくり、住所エリアまで書いていて、ぴたりと一致。 結果として、相手方の相談であったことがこちらにバレバレになってしまったのです。 当然、プリントアウトして後で証拠として使えるように保存しておきました。 私の体験ではありませんが、相談者が「これ、書いたの相手方だと思うんですが…」とプリントアウトして法律相談サイトの相手方の匿名相談を持ってきた、なんて話も聞いたことがあります。 相談に応じた弁護士には守秘義務があるとしても、web上という誰にも読める所に堂々と書いてしまった相談の中身が相手方や第三者に読まれてしまうことまではどうにもなりません。 例え名前を隠していても、これまでの経緯などを詳細に書くと、あるいは特徴的な主張や事実関係を書くと、相手方に読まれた途端に「あいつだ!」ということは簡単に起こりえるのです。 相手方だって、自分の件がどうなるか気になる訳ですから、関連する問題で検索して情報を探ろうとした結果、相手方の情報が手に入っちゃった、なんてことは別におかしくもなんともないわけです。 そんなリスクを意識せずにweb上に相談内容を延々と書いた結果、内容が相手方にバレてしまい、どんな主張をする気なのか、どんな証拠を持っている・持っていないのか、財産状態まで相手方に筒抜けということも起こります。 そうして相手方の情報が手に入った結果、 「そうか、こういう証拠を持っていないのか。それなら安心して訴えを起こせる。」 「こいつ、予想もしなかった財産持ってるみたいだ!!すぐに照会かけて、見つかったら仮差押だ!!」 「証拠が相談者が言ってるだけなので厳しいかと思っていたが、相手方がこうやって書いているとなれば重要な証拠になるぞ!!」 となってしまい、何とか自分に有利にしようとして行った相談が、盛大な自爆を招くということは十分に起こります。 また、刑事事件系の相談の場合、 「大まかな犯行時まで書いちゃって、フェイク情報でなければ読まれたら関係者に即バレするんじゃないか?」 「被害者が悪いようなニュアンスのことを書いて、私が被害者代理人ならこの記事を理由に絶対足許見るぞ・・・」 「万一警察・検察に気付かれたら身柄拘束を検討されかねないのではないか?」 (質問しただけで身柄拘束は不当ですが、悪意の有無を問わず証人への圧力の意図と取られかねない相談をしてしまうと十分勾留の理由になる) ということも考えられ、民事以上にシャレにならない事態を招く恐れがあります。 web上での匿名相談でもそういったリスクを踏まえて、あくまでも感触をつかむための前相談として行う分には、無料ということもあって使い出はあると思います。 法律相談サイトを使うべきではない、ということではありません。 ただし、使うならば、インターネット上の匿名相談は相手方にも読まれることを覚悟した上で行う気構えが必要です。 そして、何を話せば不利かわかっているような状態なら、そもそもweb上での相談は必要なく、弁護士に依頼直行できると思われますので、これなら話しても大丈夫、と考えるのは危険極まりないことです。 webでの相談は本当に簡易なものにとどめ、よくわからない点があったらその弁護士に聞き返すのではなく、ちゃんと時間を取り、弁護士に相談に行くべきです。 また、相談をきちんとやろうと、質問に対して突っ込んで質問返ししている弁護士や、相談者が延々と背景事情を話しているのにお付き合いして回答している弁護士を見ます。 私が見つけた件も、相談者に対しての親切のつもりなのか、弁護士があれこれと聞き出していて、こちらにも有利な情報が次々と出てきた、ということがありました。 個別的な事件への対処としてはどうもありがとうございます(笑)という所ですが、私はweb上で延々と聞き出そうとする弁護士はどうなの?と考えています。 相談する弁護士が突っ込んで質問して得ようとする情報は、それが的確な質問であればあるほど「相手方もぜひとも聞きたい情報」になります。 なので、聞き出す行為はもちろん、延々と話したがる相談者にお付き合いする行為は相手に非常に重要な情報を伝える結果を招く、極めて危険性の高い行為と言えます。 web上での無料相談に回答することがダメだとは思っていませんが、リスクを意識させないままに、読まれかねない環境で秘密に属する答えを引き出してしまうならば、その相談姿勢には重大な問題があると考えます。 突っ込んで質問をした上で責任ある回答をすることを主眼にしたいなら、教示するのはごくごく一般論にとどめた上で直接弁護士への相談を勧めるか、検索に引っかからない非公開の環境での相談において行うべきであると考えます。
最終更新日
2016年05月10日 15時03分15秒
コメント(0) | コメントを書く
[弁護士としての経験から] カテゴリの最新記事
|
|