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碁法の谷の庵にて

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2016年10月14日
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テーマ:ニュース(99406)
カテゴリ:囲碁~それ以外

 かつて,羽生善治七冠の全タイトル制覇を167日で終わらせた三浦弘行九段が,スマートフォンによるカンニング疑惑などを理由に将棋連盟ともめ,最終的には年内いっぱい出場禁止,挑戦が決まっていた竜王戦について挑戦者を丸山忠久九段と差し替えるという事態になったようです。

 

 情報がいろいろとあるようですが,連盟からの情報開示が不十分という印象です。

 日本将棋連盟の公式サイトでの告知にはカンニング疑惑については載っていないようですし,処分の直接の理由は「休場すると言っていたのに休場届が出されなかった」ということのようです。

 竜王戦という超重要棋戦の挑戦手合まで進んでおきながら,病気などの正当な理由なく出場しないのだと考えるならば,なるほど処分としては一理あるかとも思います。

 他方,三浦九段側からの反論もあるようです。
 対応は弁護士に任せているということなので(もちろん私は片田舎の弁護士なので頼まれたりはしてませんよ)詳細は待つことになるでしょうか。

 A級経験を持つ某有名棋士は「1億%クロ」と宣言したりしていますし,A級棋士経験者としての将棋の力量をもってすればその辺りに敏感になれる要素もあるのかもしれませんが,個人的には外していた場合が恐ろしすぎるし,他の有力棋士にも疑問を感じている棋士もいるようですし,連盟の発表が全てとも限らないと言えば限らないので,本件についての事実関係の断定は差し控えます。

 

 

 なお,三浦九段の離席が疑われた原因と一部で言われているようですが,アマチュア碁打ちの私個人としては,対局中の離席はそれなりにやります。

 緊張が度を超すと本当に吐きそうなので,何とか気息を落ち着けるためには場を離れるという手法は非常に有効だと思います。また,休みの時に何をするかも気分次第です。外に行って深呼吸してくる,トイレ行ってくる,何もすることがないけどとりあえずトイレ行ってやっぱり出ずに戻る,なんてこともありますし,1回1回の休みに何をしたかなんて私はいちいち覚えていません。

 一手誤ると即投了、誤ってなくても投了一直線コースなのかも…みたいな勝負所になると私としては本当に脳みそが沸騰しているかのような感覚を覚えるので,勝負どころになるほど離席が増える,というのも全くおかしくないと思います。もちろん離席することで集中が切れてしまう例もありますから,この辺りは持ち時間の使い方同様,人次第だといえるでしょう。

 「ヒカルの碁」でも,プロ試験編でヒカルと対局した椿が対局中に気分転換としてバイクで近くを走り回っているシーンがありました。

 プロよりはるかに短い持ち時間で打っている私ですらそうで,中には時間がある間は一手打つごとに席を離れているような人すらいます。
 アマチュアよりはるかに長い持ち時間と更なる集中を求められる環境で戦うトップ棋士が長期間の離席を行うことは何もおかしな話ではないだろうし,むしろ否定されたら大変だと考えます。

 

 さて,私が今回の件に関して考えたことは,日本将棋連盟,将来的には日本棋院もそうでしょうが,カンニングなどの不正行為に対して,きちんとした調査の規則などはあったのか,なかったとすれば作っておくべきではないのだろうか,ということです。

 どういう処罰をするかに関しては,先日除名まで含めた厳しい処分を定めたという話が記事にあったのを覚えています。
 しかし,具体的にどのような事実があってどのような事実が認められたのか,その辺りの歯切れが竜王戦の挑戦者変更という大事件にもかかわらず悪いと感じられます。
 三浦九段本人からの聴聞はしたようですが,そのやりとりもよく分からず,むしろ三浦九段からは調査への反発ともとれる言い分が出たという話までがあるため,こうした疑問がわいてきたのです。



 競技への信頼性を揺るがす不正行為を阻止するために,競技を主催する組織などが相当な範囲で検査をする。

 これ自体は非常に真っ当で正当であり,社会的な承認も得られていると思います。

 

 スポーツ界におけるドーピング検査がまさしくそうで,囲碁界ですら,2010年のアジア競技大会でドーピング検査がルール化され,実施されました。選手たちもドーピングについて研修を受けたようですし,一部には違和感を表明する棋士もいたようですが,だからと言って検査拒否と言い出せば,当然失格になっていたことでしょう。

 
 また,労働法的に考えれば,非違行為の疑いが存在した場合に社内でそれを調査する権利は企業にはありますし,労働者にも必要かつ合理的な範囲であれば労務提供義務の一部として応じる義務があります(富士重工業事件・最判昭和52年12月13日)。

 棋士は労働者には当たらないと思われる(関西棋院の厚生年金関係でそのような判例があります)のでそっくりそのままの考え方を持ってくることは難しいでしょうが,正当な検査をし,そのための調査に理由なく応じないことについて競技界として一定の制裁を行うことに関しての正当化は十分できるとは思います。

 

 しかし,現にきちんと調査についてルールが定められそれに従って運用されているのであれば,ルールに従って粛々と事実認定をし,それに従って処分をすればよく,その過程や結果・調査ルールを同時に公表すれば,本当なのかが問題となるような事態にはならなかった(問題だとする声は出るにしても,一定の信用性は担保された)はずですが,それがないのが気になるのです。

 こうした調査や処分に関して,隅から隅まで完全な形で決めきることは難しいとは思います。

 しかしながら,処分ルールと同時に調査方法についてもルールが定められていないと,調査を受ける側としても「自分ばかり不公平に抜き打ちされた」という感覚になりかねません。立場上そういう調査を受けることは明示されたルールがなくとも受忍すべきなのではないかな,と個人的には思いますが,無用な反発を避けるべきこと,棋士たちに「どのような自己防衛をしておけば無用な疑いを抱かれずに済むのか」という意味での準備をさせる必要があることからしても,やはり調査に関しての基本的なルールは決めておき,しっかり棋士たちにも周知徹底させ,その上で従わせるべきだと思うのです。

 その上で調査に非協力的なら,それなりの対応を取ることだってできたと考えられます。
 

  

 囲碁界ではどうでしょうか。
 
 囲碁界でも,実は不正行為と取られても仕方のない緩い行為はあるように思います。
 一例として,ヒカルの碁の北斗杯編で描かれた森下九段vs進藤ヒカル戦。

 昼食休憩中に局面を見てヒカルと同門の冴木プロが濁し気味にいろいろ言っていますが,あれだって本来は対局の信頼性を疑わせる行為です。しかし,棋士の監修あるヒカルの碁であのように描かれていて,かつ特に作中問題にもされていなかったということは,ひとまずあれもあり得ることだったと考えられるでしょう。

 昭和でも,本因坊秀哉vs呉清源の160手目の妙手を前田陳爾が発見していてそれを瀬越憲作がばらしたことでトラブルになり,瀬越は日本棋院理事長を辞める羽目になったことがありました。

 こうした,勝負の公正を疑わせる「緩さ」は,特に国際棋戦を想定する場合,将来的には熾烈な争いになってしまうことも予想されます。

 大橋拓文六段が書かれているように,囲碁ソフトもプロ並みソフトが市販されるようになる可能性は十分あります。先日李世ドルを4-1で倒したAlphaGoは市販を予定していないようですが,Zenもプロに近くなってきているということですし,現在でも市販ソフトが市販のパソコンでアマチュア大会に出たら県代表くらいは十分目指すことができると考えられるでしょう。今棋士がカンニングをやってもバレるバレないは別にして得策ではないだろうとは思いますが,将来的にはバレない限りやった方が得策になることは十分考えられます。
 そして,なんとしてでも勝ちたい,そのためならば反則だってやってやるという気になる可能性もあるでしょう。アマチュアのネット将棋でも,既にソフト指しの問題は指摘されているところです。
 プロの場合生活がかかっているため,なおのことその誘惑が強くなったとしてもおかしくはありません。

 そうすると,囲碁界も,AlphaGoやそれに類するレベルの囲碁ソフトが市販されていない現状のうちにきちんとした性善説のみに頼らないルールを作っておくことが必要だと思います。

 きちんとルールを作らないままに今回のような何らかの疑惑事件が発生し,泥縄な調査を行うならば,ルールをきちんと作っていれば本来避けられたはずの不愉快な思いをする棋士やファンができ,囲碁界や棋士・棋戦への信頼が無意味に害されてしまうことは間違いありません。



 今回の事件の真相が何かについては今後も状況注視ですが,三浦九段にかかった嫌疑の真実がどのようなものであれ,本件は問題提起としては重要なものを含むように思います。






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最終更新日  2016年10月14日 16時07分52秒
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