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碁法の谷の庵にて

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2016年11月25日
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テーマ:囲碁全般(745)
カテゴリ:囲碁~碁界一般編
 第2回囲碁電王戦、ひと通り見させていただきました。
 あ、もちろん対局者は私じゃありませんよ(笑)。
 生放送で見ていた対局もあるので、ニコニコで見ていた方は、もしかすると私のコメントを見たかもしれませんね。
 第2回囲碁電王戦は、対局プログラムのDeepZenGo(DZG)に関する情報が乏しかったこともあり、勝敗予想は難しかったところがありました。
 AlphaGo(AG)と同格なら私は迷わずDZGの3-0に賭けたことでしょうが、AGよりは落ちるようです。
 とはいえ、全く勝負にならないほど弱いならこうした形で挑んでは来ないという推測は簡単です。
 人間(趙治勲名誉名人)の●×●と言う結果や対局の内容は、興行としても、ソフトの力を見るという意味でも、まずまず成功だったのではないでしょうか。



 第1局。黒(趙治勲)が目外しを連打。
 治勲先生の棋譜にそこまで詳しいわけではありませんが、目外しを使う印象は全くありません。
おそらく、変化球を投げてみて様子を見る、という感覚なのだと推察しました。
 序盤は黒(趙治勲)苦戦に見えました。右辺黒カカリに対してのカタツキは、個人的には全く違和感のなかった手なのですが、プロ目線からは驚きを持って迎えられたようです。
 中盤までのねじり合いを見てもDZGが押しているのではないかと見ましたが、手どころでのミスが痛く、最後はAGも見せた劣勢時からの暴走が発動。
 黒の勝利となりました。



 第2局は、左下隅のワカレがあまり白(趙治勲)良さそうに見えなかったのですが、その後確実に差を広げられた感じがしました。
 左上のハサミツケはものすごい厚みを背景にした「打たれてみればなるほど」という手で、私としてはここは大人しく後退して他日を期する方が良いのではないかと思ったのですが、白反発。
 結果論ですが、やはり出が無理な手だったように思われ、そのあとはDZGが自然に打ち進め、最後は撲殺して終了になりました。



 第3局は、黒(趙治勲)全く奇をてらわず小林流でやってきました。
 1局目2局目がDZGのお手並拝見という感もあったのに対し、いよいよ本気できたという感じを抱きました。
 右辺は黒苦戦に陥りそうなコースも見えたのですが、取って凌いだなら多少は黒良かったのだと思います。
 白模様に入ってきた黒に対しての攻めもあまりうまくいかず、黒が押し切った形となりました。
 ニュースでは黒が逆転勝ちのように報じられていましたが、私は難しい局面が長かったとは思うものの、基本的にはずっと黒がよかったと思いました。
 最後は投了でしたが最後まで打っても多分黒勝っているでしょう。(実験の意味も込めてできる限り最後まで打って欲しかった気はしますが・・・)
 それと、井山六冠の解説はたぶん初めて聞いたのですが、普通に解説うまいと思いました。
 
 シリーズを通じての内容方面への感想は,以下の通りです。
 なお,私はアマチュアとしてはかなり強い部類ですが所詮アマチュアですし,コンピュータ囲碁にそこまで詳しいわけでもありません。



一、DZGが得意なのは大局観、読みは苦手
 私は以前,天頂の囲碁(DZGの前身であるZenがプログラムされている)を購入して何局か打ったことがあり、ある程度その棋風や弱点を見ています。
 「プログラムは大局観が苦手」みたいな意見は囲碁を知らない人によく見ますが、私から見ればそれは大きな間違いと断言してもいいように思います。
 プログラムが得意なのはむしろ大局観に属する部分で、部分的な死活の読みはむしろ苦手にしています。
 
 「対局」ではなく、「詰碁」に関して言えば、プロの名人クラス以上に答えを出せるプログラムはかなり前から既にあります。
 ところが、「詰碁」ではなく「対局」となると、長手数一本道な詰碁は、AGでも石塔シボリ読めなかったりということもあるくらいです。
 DZGでも、この問題を解決するには至ってはいませんでした。
 囲碁電王戦でも、第1局で見せたように、DZGに死活ミスやヨセミスが目立ち、部分の筋の問題がわかっていません。
 中国の「世界最強」柯潔もプログラムはヨセに弱点があるといっていたそうですが,おそらくは同じものを感じていたのだと思います。
 AGでも旧天頂の囲碁でも同じだったのですから,これは現在のコンピュータ囲碁が持っている宿命的な弱点と考えていいのではないでしょうか。今のところ人類の勝機はそこにある、といってもいいでしょう。

 現在の所DZGもAGも囲碁を読みつくしたという訳ではなく,「イメージ的にこう打てばいい」、と言う感覚で打っているため、部分に特化してでも正確な読みが必要な細部に至ると全局的なイメージでは読みの力が足りず、ぼろが出やすいのだろうと推測しています。
 人間は、こうした部分に特化した正確な読みが必要な時に、読みを部分に振り向けられるのが大きいのだと思います。
 更に、ヨセの局面でも、盤上に着点は200以上あったりするので、序盤と比べても読みがあまり楽にならず、却って「答えが出る」分ぼろがわかりやすくなるのでしょう。
 例えばプログラムでまだ見ぬ絵画の作者を鑑定する、と言うことになった場合,全体像から作者は横山大観なのかな?と思うことはできても、墨の質が違うとか紙の質が違うというような突っ込んだ違いには対応しきれない、と言うことなのではないかと思います。



二、撲殺モードは怖い
 天頂の囲碁でも,シノギ勝負(人間がしのぐ側)に持ち込むと突然恐ろしい力を発揮してくることがありました。
 人間同士で打ってればこんなの死にゃしないだろ,くらいの感覚で打てるのに,本当に恐ろしい勢いで殺しにかかってきて殺される…
 19路盤ではなんとかなるのですが、私が天頂の囲碁で13路盤で打っているとしょっちゅう起こる現象でした。
 第2局は,まさしくその流れだったように思います。
 第3局も,実際撲殺モードに出てくるのではないかと戦々恐々しながら見ていました。



三、中央重視の棋風
 人間の強い棋士は、隅や辺の実利を重視する場合が多いです。
 しかし、DZGの場合、対局中の形勢判断などを見ると中央を重視しているのがよくわかります。
 一流棋士で中央重視で有名なのは武宮正樹九段ですが,武宮九段でも隅や辺に代わることのできる柔軟な打ち筋をしており、棋風が弱点になってしまっているとは全く思えません。
 個人的にはDZGの中央重視の棋風は現状、弱点となっているようにも思えます。
 私と打っている天頂の囲碁も中央を重視していましたが、重視しすぎたせいかたまに何の脈絡もなく中央部にぽんと打つことがありました。
 DZGは流石に脈絡のない中央志向な手はなく、精度も私の使っている天頂の囲碁と比べて大幅に上がっているように感じましたが、それでも中央を重視する棋風であることには変わりがないように思いました。
 大体私が天頂の囲碁と打って勝つ時も、私が実利を取り、天頂の囲碁が中央を取り、私が周囲から弱点を突いてジリジリ削って勝つというのが多かったのですが、これは、囲碁電王戦第3局そのものとも言える展開です。
 そんなわけで、レベルが上がってディープラーニングを使ったDZGになってもやはり天頂の囲碁なんだな、という感触を抱きました。
 AGも5線カタツキを用いるなど中央志向の碁に思えますが、中央を重視する場合の「質」はAGの方が上のように思えます。



四、形勢判断が苦手
 プログラムは、相変わらず計算・形勢判断が苦手なようです。
 少なくとも、将棋プログラムの評価値同様に信頼していたら裏切られることは間違いありません。
 DZGは形勢判断が実際と比べて自信有り気なのです。(AGは形勢判断がよく分からない)
 第1回の囲碁電王戦、Zenが対局しているとき(特に江村さんとの13路盤対決)もそうでしたし私が天頂の囲碁と打っていてもそうでした。
 私が形勢悪くないはずなのに天頂の囲碁が評価値80で優勢をたたき出していることもありました。
 もちろん最後は私が勝っています。
 DZGの形勢判断は、プロどころか私が見ても「本当!?」というシーンが多く、DZGの形勢判断値が人間有利となった時にはほぼ人間勝勢が決まっている。
 以前「アドバンスド・囲碁ウォッチング」の話をしましたが、これではアドバンスドに役立つほどの形勢判断の実用化にはまだまだ遠いという感を抱きました。
 もちろん、解説棋士の判断と合わせ、プログラムがどう考えるのか、という視点から見る分には楽しいと思うのですが。










 総じて見ると、確かに恐ろしく強くなり、強い所はプロでも難しいだろうけど、弱い所も見られ、付け入るスキはありそう、と言う感じでした。
 スキの具合によっては力を発揮しきれず,全体的に見ての安定感に欠けているように思います。
 多分、日本のアマチュア棋戦にDZGが出場したとしても、優勝できるかは微妙ではないかと思います。
 地の棋力はもちろんアマチュアに入れば一番、私など一蹴されてしまうと思いますが、連戦のどこかでスキを出してしまうと、阿含杯に出場するような県代表上位クラスを相手にすればそこを突かれてしまい、優勝できないことは十分考えられると思います。
(なお,治勲先生なら多分優勝できると思います。)
 私の感想はざっとこんなものです。
 DZGが発売されるのか。
 発売されたとして私が使っているようなノートパソコンで十分性能が発揮できるのか。
 人間向けの「教師」や「解説」として役に立つのか。
 状況を見守っていきたいと思います。





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最終更新日  2016年11月25日 19時24分14秒
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