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碁法の谷の庵にて

2018年04月02日
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カテゴリ:法律いろいろ
PTAに関して,入退会が自由であることが近時報道されています。

 PTAが入退会自由であることは,法的に見て争点にもなりえないレベルで全く当然のことです。
 別に判例が分かれていたり,行政などが強制加入できるという見解を出したわけでもなく,何で今更こんなことを言うんだ?と言うくらい当然です。

 日本の法律上強制加入できる団体は日本では弁護士会や日弁連など法的にそのことが定められた団体位です。しかも,それについても「辞めると言った際に辞める自由」は原則として保障されています。弁護士会ならば「退会したら弁護士として活動できない」というだけであり,退会自体を認めず入会の形を取り続けるということは基本的にありません。(弁護士法上懲戒手続に付された場合には手続が終わるまで登録取消できないという規定はありますが,これも法律に規定がなければ正当化できないでしょう)

 PTAに属するのは慣習だから条文になくても慣習法で所属義務がある、と言う意見も見たことがあります。しかし,慣習法として認められるのは「公の秩序」に反しないことが求められます。
 憲法21条で定められた結社の自由は,国民が組織に所属する・所属しない自由を保障しており,これを踏みにじるような規定は私人の行為なので憲法違反ではありませんが、公序良俗違反なのです。

 組合契約についての判例ですが「やむを得ない事由があるのに脱退を認めない規約は公序良俗違反」という判例もあり(最判平成11年2月23日。なお,やむを得ない事由がある場合に脱退できないことは民法678条に規定あり)、脱退させないというのは公序良俗違反です。
 組織に属するというのは,その分権利を得られる可能性がありますが,逆に義務を負担する可能性もあることです。
 それを強制するというのは人権侵害になる可能性が非常に高いのであり,ちょっとやそっとのことでは正当化できないのです。(弁護士法の規定も,弁護士の持つ高度な公共性,監督の必要性と独立性の要請が合わさってやっと正当化できる代物でありそれらが欠ければ違憲の疑いが強くなると思います)



 厳しい言い方をしますが,この記事を読んでえっ,強制参加じゃないの?みたいに思ったPTA役員の方がいるとすれば,私はとっととPTA役員を辞めるべきだと思っています。
 そういう方々は,これからいう法的責任の恐怖におびえる可能性が出てきます。PTAを巡る報道で接する事例を見てると「これはPTAの担当者などが刑事責任を問われる可能性が相当程度あるのではないか」と感じるものも多いのです。
 それをこれから列挙します。委員等になられた皆さんは,自分のやっていることがこれにあてはまっていないか,気を付けてください。

一,本人の意思に関係なく名前をPTAに登録してしまう



 強制加入と言うことで名簿などに登録した「だけ」では,私には該当する罪名を思い浮かべることはできませんでした。
 単に登録しただけでその後何も要求しないなら,実害には乏しい面はあるでしょう。
 しかしながら,登録しただけでその後何も要求しないならPTAがこんなに問題になるはずもありません。この先はいよいよ犯罪成立の地雷原が待っています。


二,名簿登録に当たって本人のいない所で申込書を勝手に書く(あるいは許可を得て代筆したことにしてしまう)



 アウト。
 権利義務関係の証明になりえる書証に本人の許諾なく勝手に名前を書くのは有印私文書偽造罪。
 判をついていなくとも名前を書けば「有印」です。3月以上5年以下の懲役です。

三,入会義務・支払義務をちらつかせる



 これもアウトです。
 先述した通り,PTAに入会義務はありませんし,入会していなければPTAに対して支払い義務はありません。義務があるかないか微妙な所で義務があると通知してしまったのはやむを得ないと思われますが(それがダメなら私も犯罪者と言う可能性も…),PTAに支払い義務がないのは上記の通り自明の理。
 あるいは,入会手続きを取っていないのに「入会したことになっているから払え」というのも同様です。
 法的な義務の存在を誤認させる詐欺と捉えるか,脅しとみて恐喝と捉えるかは要求の方法などによって分かれるかもしれませんが,どちらにせよそうした支払義務をちらつかせて払わせる行為は詐欺罪又は恐喝罪でいずれも10年以下の懲役となります。
 単純に支払いを請求しただけならばともかく,支払わない意思を表明した親御さんなどに「それなら地域で暮らしていくのは難しい」とか「学校で子供が不利益を受ける」というような害悪の告知を行うと,いよいよ恐喝罪の成立が現実味を帯びてくることになります。
 詐欺罪・恐喝罪とも未遂罪処罰規定があるので,例え親御さんが屈することなく最後まで毅然と拒否したとしても詐欺未遂罪・恐喝未遂罪と言うことになります。

四,役員に無理やり任命して仕事をさせる



 やり方によってはアウト。
 害悪を告知して役員としての職務を無理に行わせることは,強要罪に該当する可能性が出てきます。
 1:1で告知しているうちはまだしも,集会などで衆人環視の中で「やってください」と迫る行為は本人の拒否の意思表示を封じるもので,強要罪の成立が認められる可能性がかなり高いと考えます。
 一歩間違うと同席した方々全員共犯と言う恐れも…
 こちらは3年以下の懲役です。未遂罪処罰規定があるので,親御さんから最後まで拒否されても同じです。
 また,「役員を決めるまで返しません」は監禁罪で3月以上5年以下の懲役となる可能性があります。

五,共同絶交



 PTAに加わらない人と個人レベルで絶交するだけならば個人の自由です。
 しかしながら,PTAと言う組織や,あるいは組織と同一視できるメンバーで共同して決議をした上で絶交するいわゆる「村八分」は脅迫罪に当たる可能性があります。
 村八分が違法になる場合については以前書きましたのでこちらの記述をお読みいただければと思います。


 むろん,これらが割と全国的に常態化してしまっており,全国的な認識の共有にまだまだ至っているとは言い難いことや,やっている側も私利私欲が目的ではない可能性が高い分,例え警察や検察が入る事態になったとしても初回ならば処分は起訴猶予くらいで済むのではないかと思われます。
 しかし,その場合も「支払わせたお金は全て返し,役員任命の在り方も見直し,入会は任意にするなどしっかりやるのが大前提。次に似たようなことをすれば今度は正式裁判になる可能性が高い」と言うこと理解した上でなければ起訴猶予は困難でしょう。
 手続が終わった後に再度続ければ,では法廷に被告人として立っていただきましょうか…と言うことにならざるを得ない可能性は出てきてしまいます。


 PTAで自分がとろうとしている行動が犯罪になるかどうか。不安に思った人は「自分の行動をヤクザが組織的にやっていたら罪かどうか」を考えてみるとよいでしょう。

「オウ,お前俺たちのシマに住むんだよな。加入義務あるんだよ加入しろよ。申込書に名前は勝手に書いといたぞ。」
「オウ,俺たちのシマに住んでるんだろ。これやれよ。それと金払えよ」
「オウ,俺たちの仕事なんだよ,やるまで帰っていい訳ねえだろ返さねえよ」

 ヤクザがやっていると考えたら,これって罪じゃないの?と誰しもが疑問を抱くことでしょう

 厳密にはヤクザの場合暴対法で犯罪の成立要件が緩められている場合がありますが、「一般人ならやってよい」という訳ではありません。

 PTAの中には子供のために一生懸命に頑張っているPTAがあることは私も分かっていますから,ヤクザ呼ばわりすることにはいささかの後ろめたさもあります。
 しかしながら,PTAという多数かつ地域に根付いた存在かつ子どもの利益まで握る存在を敵に回すのは,人によってはヤクザの脅迫より恐ろしいものと感じることもあります。
 例え善意であれ,PTAで役員をやっている方々は,自分の発言や行動はヤクザのそれと同じくらい人にものを強制する力があるということを分かった上で委員をやることをお勧めします。






最終更新日  2018年04月02日 14時30分22秒
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