3040230 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

碁法の谷の庵にて

全138件 (138件中 1-10件目)

1 2 3 4 5 6 ... 14 >

法律いろいろ

2021年10月01日
XML
カテゴリ:法律いろいろ
児童に対し,経済的虐待と呼ばれる虐待…児童の財産を奪ったり、あるいは管理を全くせずに子に財産的な損害を与えてしまう虐待が行われることがあります。


・児童がアルバイトをしたときに、バイト代を巻き上げる。生活費として多少入れてもらう程度ならともかく、弱い立場に付け込んでほとんど全部出させてしまう。
・親の連れ子や養子などの場合、相続などで子にのみ財産が入ることがあるが、その財産を「管理する」と称して巻き上げてしまう。
・多額の債務を抱えた配偶者が死亡し、相続放棄が必要な場合であるのに何もせず、子が多額の借金を抱えてしまう。
・子役芸能人の親が、子役に入る多額の収入を全て使い込んでしまう。(「クーガン法」で検索してみましょう)
子に奨学金を申し込ませ、その金銭を学費に使わず自分で使ってしまう。子は自分で働いて学費を出すか学費不足で学業継続断念するしかない上、奨学金の返済までしなければならない(大学生の場合「ほぼ法律上の児童に当たらないという問題もある」)。
・児童個人が小遣いなどで買った財産の大半を売って代金をネコババする。あるいはしつけと称して捨てる。



 こうした児童に対する経済的虐待は、非常に深刻なものがあります。
 家庭内の事な上、児童に財産についての意識などほとんど望めないし、学校や近所の目で分かる可能性がほとんどないため気づかれにくく、気が付いたときには児童には財産がないどころか借金まで負わされ、若くして何が何だか分からないまま親のせいで破産するしかないという事態になることもあります。
 殴る蹴る熱湯を浴びせるといった直接的な暴力のように一刻を争うという訳ではないかもしれませんが、児童の将来に非常に大きな悪影響を及ぼすことは間違いありません。
 学業や独り立ちをしようにも先立つ財産がない、学業を修めていないため就職などにも難儀するという問題はもちろん、自らの努力して得たバイト代などを収奪されたことが分かれば、それは努力の否定となり児童の精神にも重大な悪影響があることは容易に察することができます。
 毒親被害体験談でも、親が子のために金銭を使わず、それどころか子に入ってきた財産を巻き上げたり捨てたりと言った例が上がります。


しかし、児童虐待の防止等に関する法律、略して児童虐待防止法第二条上の定義を見ると…

一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。(身体的虐待)

二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。(性的虐待)

三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。(育児放棄・ネグレクト)

四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。(精神的虐待)


以上4つのみが挙げられており、子の財産を巻き上げる、あるいは子の財産管理が放漫で結果児童に多大な負担を負わせるという経済的虐待は全く記載がありません
 収奪の精神的悪影響で精神的虐待というようなこじつけはもしかしたらできるかもしれませんが、せいぜいその程度です。高校生相手のバイト代巻き上げならともかく、相続財産巻き上げなどだとそもそも子ども自身に財産を奪われているという認識がないので精神方面は特に問題ない可能性もあり得ます。
「ちびまる子ちゃん」なんかでも、お年玉を預かられるのはいいとしてそのお金の話をしようとしたら電話をぷつんと切られるというような話がありましたが、これが本当ならアウトと言わざるを得ません。
(同作の作風と言えばそれまでですが、まる子の親はNHK代金をモノクロでごまかしたりなんかも告発されていたりして結構黒いです)



 高齢者の虐待については、財産の収奪を行う経済的虐待が立派に虐待として定義づけられている(高齢者虐待防止法2条4項2号、同条5項ホ)のに、どうしたことでしょうか。
以下は私の推測ですが、児童虐待の定義に財産の収奪・管理懈怠がない理由として

①高齢者は財産が多い場合がかなり多いが、児童には財産などない場合が多いので、収奪の対象となりにくい。
②未成年者に対して親権があれば財産の管理権もあるし、ケースによって親が代理して使用することも違法とは言えない。問題のある使用と問題のない使用の区別が難しすぎる(高齢者相手に親権はない。裁判所が申立を受けて後見人等を選任するだけ)。
③親が財産を収奪するからと言って、児童相談所が財産にまで目を光らせるのは難しい。また少々の問題ある管理を理由に一々児相が介入するのも現在の児相関連の予算・人手からすると現実的ではない。
④身体的な暴力などと違って一刻を争う訳ではない場合が多く、親権がまずいなら、親権停止・喪失の審判(民法834条・835条)の上で未成年後見人をつける形でなどで対処すればよい。
⑤あまりにもひどい親の場合、経済的虐待一本ということはなく精神的・身体的虐待なども同時進行しているのでそれならそっちで保護すればいい


と言ったあたりが原因なのではないかと推測します。

 しかし、子役や相続の例を挙げた通り、子に財産がない、と決めつけるのは早計です。
 親から親権を奪うとなれば、当然親権者として不適切であるという証拠をそれなりに集めなければなりません。強制的な調査権もないのに家庭内という密室で起こるそれを調査するのは非常に大変で、まして児相でも虐待として扱えないとなると非常に厳しくなります。
 当然子自身に親から自分の財産を守る能力など期待することは不可能です。弁護士相談しようなんて考えもしないでしょうし、仮に弁護士に相談された所で「親権だ」と言い張られると裁判で勝つのは至難の可能性が高くなります。
 親からの相談、例えばギャンブルに金を使いすぎて破産せざるを得ず、その際に子の金を使いまくったことを白状したようなケースなどでも、これが児童虐待に当たるなら弁護士でも守秘義務をぶっちぎって通告できます(児童虐待防止法6条)が、経済的虐待が児童虐待に含まれないとなると、児相に通告すると守秘義務違反になってしまう可能性もあり、児相に通報しようにもできないことがありえます。

 こうした障害を乗り越えて仮に調査し、親による使い込みなどが判明したとして、財産管理に問題があるからと言って親から引きはがすのは副作用があまりに強く、強く踏み切れない場合が多いでしょう。被害者意識のない児童からすれば、介入者の方が敵に見えてくるでしょう。
 親以外に財産を管理する未成年者後見人をつけようにも、子に財産がある場合は報酬を払わなければならず、子の財産という視点からも得かどうかという問題があります。
 子に財産がないのに後見人ともなれば最悪後見人がボランティア仕事をすることになります。(実際この手の後見は先立つ費用の問題でボランティア後見になりやすく、頼んだ裁判所や弁護士会も、別途ある程度報酬的においしそうな仕事を優先的に回すことで引き受け手の確保に努めるという話もあります。)
 
 更に、親が子の財産を収奪したとしても、窃盗や詐欺・横領・恐喝であれば親族相盗例(刑法244条など)として刑を免除されてしまいます。
 刑の免除は無罪ではないのですが、捜査が全面的に成功裏に終わってさえ処罰がないのが分かり切っている状態では警察も動くことは困難です。

 更に親だということを信じ、親が正当に代理していると信じて取引をした相手方に損をさせる訳にはいかないので、親の収奪を分かってて取引したというのでもない限り、取引そのものは無効になってくれず、子は親の取引相手から正当に財産を奪われます。
 その場合は親への責任追及で対応する外なく、当然そんな親が金銭を持っている訳もないので取られ損に終わることもあります。

 児童に対する経済的虐待は確かに件数としてはそんなに多くないかもしれませんが、一度起きてしまった場合に非常に深刻なことになりやすいという性質を持っていると思います。


 もちろん、親の側にも事情がある場合も多いと思います。
 どうしても親に収入がないので子の財産を使わざるを得ないケース、子のための投資として十分正当な範囲のものもあるでしょう。そういう事情であると分かれば、虐待として扱う必要まではないでしょうし、場合によっては親の就職などの支援につながるかもしれません。
 障害があるなどの原因で、暴力などは一切振るわないが財産管理という観点だけはもうどうしようもないレベルでダメという親もいると思います。障害が原因ではどれだけ叱ろうと無意味ですから、これも後見などの支援につなげることで解決すべきものです。
 ただ、それも虐待疑惑として一旦白日の下にさらさないと本当か分からないのです。




 こうした諸問題から、「児童虐待には経済的虐待を含めるよう法改正を行う」ことを私は強く望みます。
 


 なお、大阪府など条例レベルではこうした経済的虐待を児童虐待に含めている例もあります。
大阪府子供を虐待から守る条例2条3号


 ついでと言っては何ですが、親族間の窃盗や横領などを不処罰にする親族相盗例も、廃止の方向で考えるべきではないかと思います。
 また、銀行の子ども口座から使い込み目的で下ろした場合、形式的な被害者は銀行となって親族相盗例の適用はありません。法改正がなされるまでの間はこうした手法による経済的虐待について厳格運用していくことでつないでいくことが必要であろうと思います。
(家庭内では財産の帰属があいまいになりやすく、その中で踏み越えたような場合を一定程度救済する規定も必要だとは思いますが)






最終更新日  2021年10月01日 21時00分05秒
コメント(0) | コメントを書く


2018年05月10日
カテゴリ:法律いろいろ


表題のようなことを言うと,「酷い!懲戒請求者を委縮させるつもりなのか!!」と騒ぎ立てする人が出てきます。
およそ10年前ですが、私が当時ロー生で橋下氏の懲戒扇動が問題になったのを追い回していた頃、あちこちのブログその他でそんなコメントは嫌というほど見てきました。

今回の佐々木亮弁護士らに対する大量懲戒請求の件。
懲戒請求の内容自体が心情的にすら同情を得られていない(むしろ佐々木弁護士などはブラック企業への取り組みで市民的にもヒーローに近い)のでさほど大きくはありませんが、弁護士の恫喝だ、SLAPP訴訟だとご丁寧に言っている人がいます。
(光市の件では懲戒請求者側が心情的には同情を得られていたせいか、取ってつけたレベルとはいえ「それらしき」理由づけは結構見ました)


しかし,懲戒請求の法的な位置づけは普通の民事裁判や苦情申し立てよりも刑事告訴・告発に遥かに近い。
このことは自信を持ってお伝えすることが出来ます。

一、双方とも虚偽の理由で行えば虚偽告訴罪(刑法172条)となる。民事裁判では虚偽の提訴をしてもそれだけで罪になるとは限らない。
二、懲戒請求・刑事告発は「責任を持って行えば(←ここ重要)」誰でもできる。(民事裁判は法的な請求権者がやらなければならない)
三、民事裁判と比べ、誤告発・誤懲戒請求には告発者・懲戒請求者の注意義務が比較的高度と解されている。
四、民事裁判は取下げれば裁判が終わるが、懲戒請求・刑事告発は取下げても捜査は終わらない。
(弁護士会・捜査機関にその後も調査する権限は失われず、捜査を進めて最終的に有罪・懲戒に持ち込んでもよい。事実上終了することはある。)
弁護士に懲戒請求をするというのは、警察に「あの弁護士が罪を犯しました」とタレこむくらいのことだという訳です。
犯罪でも罰金などで済むものもあるわけなので、弁護士の懲戒処分より内容は軽い刑罰、というのだって十分あり得ますから,懲戒請求より刑罰を求める告訴・告発の方が重い,とは一概に言えません。


さて、刑事告訴・告発でも、告訴・告発者は上記の責任を負います。

故意に嘘の理由を並べて警察に泣きついて処罰を求めれば、虚偽告訴罪です。夫の気を引きたいという勝手な理由で嘘をついて他人の処罰を求め,結果として1年間の刑務所暮らしをするはめになった人もいます。
誤告訴・誤告発で責任を追及するということも行われています、自称被害者たる告訴者が敗訴した裁判もあります。
法廷では事件の立証のために事件について知っていることをきちんと証言しなければならないことも考えられ、故意に誤った証言をすれば偽証罪で追加処罰が待っています。
もちろん、無罪になってしまって逆に被告発者から訴えられた場合には、告発先の警察署なり検察庁なりで裁判をされても文句は言えないことになります。
これらのことを前提に、「誰もが刑事告訴・告発できるのに、告発者にこんなに重い責任を負わせるなんて不当だ!!」なんて話は寡聞にして聞きません。
自称被害者を提訴する訴訟を「本来の被害者を委縮させる」SLAPP訴訟だという意見も見た経験はありません。
大体,そういう人たちは誤告発された人たちは,法的に通る請求の場合ですら泣き寝入りしろ、ということなのでしょうかね?(法的に通らないとお考えならまだ筋は通りますが)。


被害者である告訴者の場合にはもっと裁判に伴う負担を軽くしてほしいという意見が被害者団体からしばしば出ています(個人的には行き過ぎと思えるほどに)が、それも被害者たる心情の保護が理由であり、第三者である告発者にそんなことは言われていないはずです。



警察にインチキや感情的不満を通報すれば、どうなるかくらいわかりそうなもの。
警察官に「こんなことを通報するな」と怒られたら「警察権力に名を借りた恫喝だ!」とでもいう気でしょうか?
まさか、「警察官は怖い」けど、「弁護士なら怖くない」から強く出ているのでしょうか?







最終更新日  2018年05月10日 12時10分11秒
コメント(0) | コメントを書く
2018年04月02日
カテゴリ:法律いろいろ
PTAに関して,入退会が自由であることが近時報道されています。

 PTAが入退会自由であることは,法的に見て争点にもなりえないレベルで全く当然のことです。
 別に判例が分かれていたり,行政などが強制加入できるという見解を出したわけでもなく,何で今更こんなことを言うんだ?と言うくらい当然です。

 日本の法律上強制加入できる団体は日本では弁護士会や日弁連など法的にそのことが定められた団体位です。しかも,それについても「辞めると言った際に辞める自由」は原則として保障されています。弁護士会ならば「退会したら弁護士として活動できない」というだけであり,退会自体を認めず入会の形を取り続けるということは基本的にありません。(弁護士法上懲戒手続に付された場合には手続が終わるまで登録取消できないという規定はありますが,これも法律に規定がなければ正当化できないでしょう)

 PTAに属するのは慣習だから条文になくても慣習法で所属義務がある、と言う意見も見たことがあります。しかし,慣習法として認められるのは「公の秩序」に反しないことが求められます。
 憲法21条で定められた結社の自由は,国民が組織に所属する・所属しない自由を保障しており,これを踏みにじるような規定は私人の行為なので憲法違反ではありませんが、公序良俗違反なのです。

 組合契約についての判例ですが「やむを得ない事由があるのに脱退を認めない規約は公序良俗違反」という判例もあり(最判平成11年2月23日。なお,やむを得ない事由がある場合に脱退できないことは民法678条に規定あり)、脱退させないというのは公序良俗違反です。
 組織に属するというのは,その分権利を得られる可能性がありますが,逆に義務を負担する可能性もあることです。
 それを強制するというのは人権侵害になる可能性が非常に高いのであり,ちょっとやそっとのことでは正当化できないのです。(弁護士法の規定も,弁護士の持つ高度な公共性,監督の必要性と独立性の要請が合わさってやっと正当化できる代物でありそれらが欠ければ違憲の疑いが強くなると思います)



 厳しい言い方をしますが,この記事を読んでえっ,強制参加じゃないの?みたいに思ったPTA役員の方がいるとすれば,私はとっととPTA役員を辞めるべきだと思っています。
 そういう方々は,これからいう法的責任の恐怖におびえる可能性が出てきます。PTAを巡る報道で接する事例を見てると「これはPTAの担当者などが刑事責任を問われる可能性が相当程度あるのではないか」と感じるものも多いのです。
 それをこれから列挙します。委員等になられた皆さんは,自分のやっていることがこれにあてはまっていないか,気を付けてください。

一,本人の意思に関係なく名前をPTAに登録してしまう



 強制加入と言うことで名簿などに登録した「だけ」では,私には該当する罪名を思い浮かべることはできませんでした。
 単に登録しただけでその後何も要求しないなら,実害には乏しい面はあるでしょう。
 しかしながら,登録しただけでその後何も要求しないならPTAがこんなに問題になるはずもありません。この先はいよいよ犯罪成立の地雷原が待っています。


二,名簿登録に当たって本人のいない所で申込書を勝手に書く(あるいは許可を得て代筆したことにしてしまう)



 アウト。
 権利義務関係の証明になりえる書証に本人の許諾なく勝手に名前を書くのは有印私文書偽造罪。
 判をついていなくとも名前を書けば「有印」です。3月以上5年以下の懲役です。

三,入会義務・支払義務をちらつかせる



 これもアウトです。
 先述した通り,PTAに入会義務はありませんし,入会していなければPTAに対して支払い義務はありません。義務があるかないか微妙な所で義務があると通知してしまったのはやむを得ないと思われますが(それがダメなら私も犯罪者と言う可能性も…),PTAに支払い義務がないのは上記の通り自明の理。
 あるいは,入会手続きを取っていないのに「入会したことになっているから払え」というのも同様です。
 法的な義務の存在を誤認させる詐欺と捉えるか,脅しとみて恐喝と捉えるかは要求の方法などによって分かれるかもしれませんが,どちらにせよそうした支払義務をちらつかせて払わせる行為は詐欺罪又は恐喝罪でいずれも10年以下の懲役となります。
 単純に支払いを請求しただけならばともかく,支払わない意思を表明した親御さんなどに「それなら地域で暮らしていくのは難しい」とか「学校で子供が不利益を受ける」というような害悪の告知を行うと,いよいよ恐喝罪の成立が現実味を帯びてくることになります。
 詐欺罪・恐喝罪とも未遂罪処罰規定があるので,例え親御さんが屈することなく最後まで毅然と拒否したとしても詐欺未遂罪・恐喝未遂罪と言うことになります。

四,役員に無理やり任命して仕事をさせる



 やり方によってはアウト。
 害悪を告知して役員としての職務を無理に行わせることは,強要罪に該当する可能性が出てきます。
 1:1で告知しているうちはまだしも,集会などで衆人環視の中で「やってください」と迫る行為は本人の拒否の意思表示を封じるもので,強要罪の成立が認められる可能性がかなり高いと考えます。
 一歩間違うと同席した方々全員共犯と言う恐れも…
 こちらは3年以下の懲役です。未遂罪処罰規定があるので,親御さんから最後まで拒否されても同じです。
 また,「役員を決めるまで返しません」は監禁罪で3月以上5年以下の懲役となる可能性があります。

五,共同絶交



 PTAに加わらない人と個人レベルで絶交するだけならば個人の自由です。
 しかしながら,PTAと言う組織や,あるいは組織と同一視できるメンバーで共同して決議をした上で絶交するいわゆる「村八分」は脅迫罪に当たる可能性があります。
 村八分が違法になる場合については以前書きましたのでこちらの記述をお読みいただければと思います。


 むろん,これらが割と全国的に常態化してしまっており,全国的な認識の共有にまだまだ至っているとは言い難いことや,やっている側も私利私欲が目的ではない可能性が高い分,例え警察や検察が入る事態になったとしても初回ならば処分は起訴猶予くらいで済むのではないかと思われます。
 しかし,その場合も「支払わせたお金は全て返し,役員任命の在り方も見直し,入会は任意にするなどしっかりやるのが大前提。次に似たようなことをすれば今度は正式裁判になる可能性が高い」と言うこと理解した上でなければ起訴猶予は困難でしょう。
 手続が終わった後に再度続ければ,では法廷に被告人として立っていただきましょうか…と言うことにならざるを得ない可能性は出てきてしまいます。


 PTAで自分がとろうとしている行動が犯罪になるかどうか。不安に思った人は「自分の行動をヤクザが組織的にやっていたら罪かどうか」を考えてみるとよいでしょう。

「オウ,お前俺たちのシマに住むんだよな。加入義務あるんだよ加入しろよ。申込書に名前は勝手に書いといたぞ。」
「オウ,俺たちのシマに住んでるんだろ。これやれよ。それと金払えよ」
「オウ,俺たちの仕事なんだよ,やるまで帰っていい訳ねえだろ返さねえよ」

 ヤクザがやっていると考えたら,これって罪じゃないの?と誰しもが疑問を抱くことでしょう

 厳密にはヤクザの場合暴対法で犯罪の成立要件が緩められている場合がありますが、「一般人ならやってよい」という訳ではありません。

 PTAの中には子供のために一生懸命に頑張っているPTAがあることは私も分かっていますから,ヤクザ呼ばわりすることにはいささかの後ろめたさもあります。
 しかしながら,PTAという多数かつ地域に根付いた存在かつ子どもの利益まで握る存在を敵に回すのは,人によってはヤクザの脅迫より恐ろしいものと感じることもあります。
 例え善意であれ,PTAで役員をやっている方々は,自分の発言や行動はヤクザのそれと同じくらい人にものを強制する力があるということを分かった上で委員をやることをお勧めします。






最終更新日  2018年04月02日 14時30分22秒
コメント(0) | コメントを書く
2018年01月08日
カテゴリ:法律いろいろ
題名を見て一瞬何だ?と思われるかもしれませんが、とりあえず本文を読んでくだされば、意味が分かるかと思います。


 本日は成人の日ですが、成人関係では少年法の適用年齢がしばしば問題になっています。
 基本的には適用年齢を下げる、という路線で検討が進められているようです。少年法を守ろうという主張をする方々も、成人年齢を引き上げようという主張はあまり見ません。



 しかし、私はこう考えています。

​「18歳から20歳までは少年法の適用範囲を狭め、20歳から22歳位までは、少年法の適用可能性を残すべきである」​



 現在の少年法では、20歳未満であれば嫌疑なしなどごく一部の例外を除いて全ての件を家庭裁判所に送致する、という扱いになっています。(全件送致主義)
 そして、これが必ずしも少年に対して甘いわけではなく、比較的多い傷害・窃盗などの件ではむしろ成年より厳罰(厳処分)となるケースが多いという話は、以前の記事でも話しましたのでここでは多言しません。
 「​少年法は甘くない!!​」の記事をお読みください。

 その上で、私は、18歳から20歳までは全件、少年審判に回すかどうかについて検察の裁量権を増大させるのが良いと考えています。
 検察の方で、家裁送致して少年審判にするか、起訴して通常の刑事裁判にするか選べるというわけです。
 代わって、20歳から22歳くらいまで、検察は家裁送致できないのですが、これを家裁送致して少年審判によって対処する可能性を認めるべきではなかろうかということです。
 もちろん、これによって20歳以上が少年院に入ったり、保護観察などの処分を受けることもありになるので、少年院法や更生保護法などの関係法令も整備が必要になります。
 まず、18歳から20歳までについて。

 18歳から20歳までの場合、交通違反で検挙されることが結構ありますが、その場合保護観察や少年院というのは余りにも重すぎるケースがあります。
 保護観察や少年院は処遇側のコストもそれなりにあり(保護司は人手不足)、軽微な案件でもとりあえずやらせておけばいい、という訳にもいかないでしょう。
 結果として、家庭裁判所は審判を開くことなく書面だけ見て検察官に送致。で、検察官は罰金処分でおしまいという対応がしばしば取られています。
 重大事件でしばしば行われる検察官送致ですが、実は検察官送致の7割近くはそういう風に罰金にするために送致する案件です。
 さて、こういった件について、​わざわざ家庭裁判所に送致することが果たして必要なのか?​という問題があります。
 家庭裁判所に送って家庭裁判所が検察官送致する手間がほぼまるまる無駄に近くなっています。
 だとしたら、大人の裁判として扱い、検察官が最初から起訴した方が良い、というのは合理的な思考だと思います。
 なお、検察官が家裁に回すべき件を起訴した場合に、裁判所の判断で家裁に戻せるようにすることも必要ですが、これは現在も対応する規定があります(​少年法55条​)。




 では、20歳から22歳についてはどうでしょうか。
 刑事裁判をやっていると、20歳をちょっと回った程度の被疑者・被告人もいます。
​ そして、彼らを見ると、​​精神的に幼く、どう見ても少年と変わらないぞ、と​​いうケースも少なくありません。​
 ロースクールで教わった私の元裁判官の師匠も、10年前ですが
 「20歳を少し回ったくらいの被告人を見ていると明らかに幼く、処罰より少年法の処分のほうがいいんじゃないかと感じられることも少なくない
 と話していました。
 法廷でだけ被告人と向き合う刑事裁判官ですらこう感じるくらいですが、弁護人をやっているとずっと被告人と向き合うことになります。その弁護人から見ても、「どう見ても子供だ」と感じられるケースは少なくありません。

 何より問題なのが、環境調整です。
 成年だって大半が社会復帰するのですから、社会復帰後、どのような環境で生きていくのか、というのを整えるのは非常に重要です。
 特に、年少者は社会経験に乏しいので特に重要です。
 成年者なら大丈夫か、というとそうとも言えません。20歳になった途端全てが自分でできるようになる人ばかりではなく、親族等がいるならば、その支援を是非とも仰ぎたいところです。
​ ところが、親族などとももめてしまっており、明らかに社会的に「自活能力がない状態で放り出されている」というケースが多いのです。​
 そういうのを放置していると、住む環境を調整しないと再犯一直線とか、悪い人たちに声をかけられてズルズル・・・というケースも少なくありません。
 たとえ彼らを刑務所に収監したとしても、問題を先送りにする上浦島太郎化し社会復帰を難しくするばかりになります。
 家庭の環境調整は少年審判なら裁判所サイドも関与する形でまだそれなりに行われますし、場合によっては補導委託、つまり社会の中で篤志家に引き取ってもらい、裁判所まで含めて関与しながら自立への道筋について様子を見ていくというような手も使えますが、成人の刑事事件だとそれが使えず、検察と弁護人が動くしかありません。
 しかし、検察はそこまで深く家庭内調整に関われるわけではありません。
 付添人弁護士は本人の意思を無視して活動できません。最悪の場合家族に連絡することさえ「嫌」と言われてしまえばそれまで(家族があまりにも酷いため連絡先が分かっていても連絡拒否する被告人は少なくない)ということがあります。執行猶予判決になったあと、家族とも上手く連絡が取れず、更生緊急保護制度(身寄りのない被告人などが釈放された後に支援される制度)等に放り投げておしまいにせざるを得ないようなケースもあります。​少年審判ならば、付添人弁護士が動きにくくとも裁判所サイドが動くことが可能になり、上記のような「おしまい」のリスクも軽減されます。
 検察も、量刑には相場があります。あまりに派手に逸脱した処分は公平を害することもあり、簡単にはできません。
 初犯で小額の泥棒でも行き場がないから実刑・・・となると罪と罰があまりに釣り合わず、結局検察は不起訴などの対応を、裁判所も実刑にはできず、判決は執行猶予ということにするしかありません。
​ それならば、少年審判にした上で対応したほうが柔軟で更生させ易いということも起こり得るのです。
 


 こうした成人と少年の区別について形式的な年齢で区切らず、中間的な年齢を設けてどちらに振り分けるかの裁量を大きくする、というのはドイツなどにも例があります。(『​少年法の適⽤年齢引下げをめぐる議論​』12頁以下参照)
 また、成人年齢18歳の議論が進む中で、18・19歳の「成人」の更生をどうカバーしていくかという点でも、この考え方が使える可能性があります。
 
 
 
​​​​ もちろん少年審判には期間が短すぎて時間切れが起こりやすいなど、少年審判ならではの難点もある訳ですし、仮に中間的な年齢と設けるにしても制度設計には難しいものがある(例えば、私は検察の裁量権を増大させるとしましたが、裁量の主体を検察にするか裁判所にするかなどは考え方がいろいろありそうです)と思いますが、成年の刑事事件で裁くか、少年審判で対応するかは一長一短があり、柔軟な解決を模索することが、犯罪を防ぐことにもつながるであろうと思います。






最終更新日  2018年01月08日 14時08分03秒
コメント(0) | コメントを書く
2015年11月25日
カテゴリ:法律いろいろ

 https://twitter.com/ntglider3/status/669139524748886017
 こんなツイートを見つけました。

 まとめサイトへのリンクも貼っておきましょう。



 学生さんの飲み会での飲酒強要が死者まで出す重大な問題になっている中、こんな知恵?を絞る学生さんがいる、ということのようですね。

 しかし、曲がりなりにも法律の専門家として忠告しておきますが、飲酒強要に関するトラブルが発生した際、こんな念書が有効になるという可能性はないと思っているべきです。

飲酒を強要したり酔い潰したりすれば、本来ならば
一、民事法上の損害賠償責任
二、強要罪・傷害罪・死亡した場合には(重)過失致死罪・傷害致死罪などの刑事責任
三、大学や所属組織からの懲戒処分

などの責任追及を受ける可能性があるわけですが、こんな念書一枚で責任を逃れることはできないというべきでしょう。


まず、人間の生命さえも危険にさらすような飲酒の強要について、事前に包括的に同意する、ということは到底考え辛いと言わざるを得ません。
従って、念書も「無理に書かされた真意に基づかないもの」と判断される可能性が高くなります。
また、仮に本当に同意していたと判断してもらえたとしても、その生命・身体を明らかに危険にさらすような行為に至るまで容認するものと解釈するのは、公序良俗に反するとみなされると考えられます。


 さらに、刑事責任に関していえば、「同意していたかどうか」は書類ではなく実際に同意していたかどうかで決められます。
 飲酒させた時点で飲酒を強要していることが明らかになれば、どんなに「そのときの書類には同意と書いてあるじゃないか」、などと騒いだところで「強要している」と判断されます。
同意していると思っていたから故意がなかったという弁解に使える可能性は皆無ではありません が、紙っぺら一枚でなるほど、これは同意してるとみても仕方ないね、なんて可能性はまずないでしょう。

 それどころか、こんな念書を事前にとっておいたということは、飲酒の強要が常態化していたこと、更にはそれが危険で責任を問われてもやむを得ないことを本人が認識していたことを示す可能性が高く、その意味で事件が発生した時に事件を起こした側がどれほど悪質な人物であるかを示す資料になってしまう可能性も高いと言えるでしょう。


 学生さんの浅知恵ごときで逃れられるほど、飲酒強要・酔い潰しの責任は甘くないのです。
 わけのわからない念書の作成に力を入れるくらいなら、飲酒に対してのサークル内の啓発に力を入れるのが一番です。







最終更新日  2015年11月25日 14時48分36秒
コメント(0) | コメントを書く
2015年01月08日
カテゴリ:法律いろいろ
 ネットオークションでのお買い物は、掘り出し物発見の可能性がある半面、金だけとられて品物が送られてこない、あるいは送られてきた商品が事前説明と全然違うというようなリスクがしばしば指摘されます。
 しかし、実は購入者が商品の返還請求を受けたり、最悪の場合犯罪者になってしまうというリスクも存在しているのです。


 新年、ネットオークションでこんなツイートが流れていました。

 ヤフオクでお好みのカテゴリーで「夫and処分」で検索かけると画像も付けずに「夫のコレクションですが処分します」という出品が時々ある。参考画像もついてないから、タダ同然で落札できるんだけど、実際はお宝の山だったりする。だって夫の秘蔵のコレクションだったりするから。

 

参照 

https://twitter.com/juns76/status/550641199007035392

 妻が夫のコレクションをネットオークションで売却処分したと説明して出品することがあるので、それを狙って競り落とそうよ、と言う訳です。
 よーし、ではそれ狙ってみるかーとやるとえらいことになるかもしれませんよ?というのが今回のテーマです。

 もちろん、妻が夫のコレクションをオークションに出すこと(夫が妻のコレクションを出した場合も同じですが、今回はツイートに合わせて妻が夫のコレクションを出したものとして統一します)自体は、いけないこととは即断できません。
 夫が何らかの原因で亡くなり、相続した遺品を処分していることも考えられるでしょう。
 夫が売却したいのだけど、夫がIDをもっていないので、IDをもっている妻が実質的な代行として売却することも、それ自体はいけないことではありません(オークションの運営規約上の問題は別ですが)。

 そう言う所から買うのであれば、問題ない(ネットオークション一般に潜む危険は勿論残りますが)のです。
 今までそう言う所から買ってしまった人たちは、特に請求が来ていないのであれば、きっと妻がちゃんと承諾を取るなりなんなりしてくれたのでしょう。


 しかし、もし妻が夫婦喧嘩とか、大掃除などのつもりで夫のコレクションを勝手に大規模処分して、それをオークションの出品文に堂々と記載してしまっていて、その辺りの経緯が全て夫にばれたらどうでしょうか。
 裁判で微妙な要素が存在する所もあるので、これから書くことは、「必ずそうなる」とは限りませんが、「あり得る最悪のコース」としてお読みください。


 例え所有権者以外から買い受けた場合であっても、平穏かつ公然に他人の財産を手に入れた場合、そこに過失がなかった場合には即時取得(民法192条)によって、買い受けた人は所有権を無事取得できます。
 通常の小売店で買い物をする分には、購入者は別に品物が小売店のものであることを殊更確認する必要はありません。そもそも一消費者に確認すること等無理としたものです。
 また、ネットオークションの場合、そもそも品物の所有権の確認をすること自体が無理でしょう。基本的には、一見して他人の物でない限り、本人のものと信じてよいと判断されると思われます。
 しかし、そもそも夫の物を妻が出していると露骨に説明文に書いてあるとなれば、話は違ってきます。
 入札者としては、そもそもこれは出品者のものではない、と言うことを簡単に認識できます。
 出品者のものではないということは、これは「盗品」ではないの?と言う疑いが生じて当然のことです。
 委任状も何も確認してないのに、「妻だから」という一事をもって夫の物でも承諾を得ていると誤信した、と言うのは難しいように思います。そのような言い分が通ってしまえば、夫婦の財産的独立を規定した民法の親族と財産に関する基本秩序が破壊されてしまう恐れがあります。
 夫婦間であれば日常家事については代理権がある、とする規定(民法761条)もありますが、小売店での一般の買い物や子ども関係の買い物、光熱費などならいざ知らず、夫個人のコレクションの品の売却となると日常家事の代理とは言えない可能性が高いということになるように思います(特に、大規模に売り払っている場合)。
 日常家事債務とは、基本的に「日常生活を送るために通常必要であると考えられる債務」を指すと考えられますから、コレクションを大量に保有する経済力の持ち主が、ネットオークションの二束三文の金額で販売することが日常生活を送るために通常必要、とは到底考えられません。

 そして、出品されたことに気付いた夫としては、激怒して妻が書いた送付先からあなたの住所を突き止め、返還を求めてくるということが考えられます。
 「夫の物を妻が売っている」という事態にもかかわらず、夫の承諾について何も確認しなかったのであれば、過失を取られても仕方ないように思われるのです。

 そうなれば、即時取得は成立せず、物は返さなければいけません

 しかも、妻と夫は別なので、それならせめて払った金を返して!!と言ったとしても、夫から
 「知らん、そんなことは俺の管轄外だ」
と返されてしまいます。
 金を返してもらうには、出品した妻から別途手間暇をかけて金を取り立てなければなりません。出品者夫婦にこの事で亀裂が入り別居してたりすると、妻に金を実質持ち逃げされるというオチになる事も考えられるのです。





 ・・・とここで済んでくれたら実はまだいい想定なのです。
 最悪の事態としては、「刑事告訴」がなされることが考えられます。

 夫の物を勝手に売り払ったことが一読して了解できるような文章が出品文に記載されている場合を考えてみましょう。
 他人の物を勝手に売り払うことは、例え夫婦間といえども、横領罪や窃盗罪などの犯罪を構成します。
 当然、検索して夫の物品を処分しているのを狙ったわけですから、読んでなくて他人物とは思わなかったという言い分は聞きにくいでしょう。
 「本当は夫の物でもでもま、いっか♪」なんて軽い気持ちで買えば、未必の故意を取られる可能性があります(未必の故意でも有罪と言う判例があります)。

 そしてそういった犯罪で所有者の下を離れた盗品を、盗品と知りながら金を出して買い取るのは、被害者の盗品の取り返しを困難にしたことや、泥棒を助長するも同然の行為ということで、「盗品等有償譲受」という犯罪になります。
 最高懲役は10年!!もちろん初犯でいきなり刑務所直行と言うことはないでしょうし、品物をきちんと返せば起訴猶予か罰金(罰金のみの科刑はありえませんでしたので訂正いたします。罰金の場合は、懲役と併せて科せられることとなります)くらいと個人的には予想しますが、前科一犯になるというシャレにならない事態を招く可能性があります。

 ちなみに夫婦間での窃盗罪や横領罪は犯罪としては成立しますが、刑が免除されるので、きちんと籍が入っていれば妻は夫がどれほど怒り狂おうと処罰されません(夫から離婚を叩きつけられる可能性はありますが)。
 売った妻は何の処罰も受けず、買った方ばかりが処罰されるという笑えない事態を招く可能性さえあるのです。(そうした法律の規定自体には、私は批判的ですが)


 夫のコレクションの大規模処分を狙ってオークションに入札するのは、(私個人としては入札自体そもそもお勧めしない所ですが)必ず出品者に連絡を取った上で、夫から承諾をきちんと取れているのか、委任状などを確認した上で入札することが不可欠と言えるでしょう。
 欲しかったものだとばかりに、出品された夫のコレクションを安易に確かめもせず、あまつさえ自分から検索して購入しようとすることは、犬も食わない夫婦喧嘩を自分から金を払って食べるも同然の行為であると、憶えておいてほしい所です。







最終更新日  2015年01月09日 22時26分27秒
コメント(2) | コメントを書く
2014年08月04日
カテゴリ:法律いろいろ
  • さて、問題の回答です。

中国とかロシアとかシンガポールなどの解答を頂きました。


まあしかし、私ごときが諸外国の刑事司法制度にそんなに詳しいはずはないのであって・・・
これらの国の司法制度を私は知らないので、実際は正解かもしれませんが、今回の私の題意とは違うということでご了承願います。




実は、これは「日本の」刑事手続の「一つ」、少年審判です。
勉強してて当たり前ですね、私自身が何度もやっている手続なのですから。
指摘された通り叙述トリックを使っていますが、中国みたいな国の手続じゃね?と思ってもらえればまあ成功と言った所でしょうか。

そして、少年審判の根拠法令となっている少年法がどれだけ「少年を甘やかすんじゃない!!」と非難されている法律であるかはご存知ですよね。


しかし、少年審判は処分こそ少年院送致などに限定されてはいますが、実はその中で危ういものを含んでいる手続であると言えるのです。

 

  • 記事の解説 

先日書いた記事に即して解説させていただきます。

少年審判において罪刑法定主義はありません。
罪を犯してなくとも、虞犯(犯罪の恐れがある)と言うことで審判・処分することができます。従って、少年審判においては「罪刑法定主義」なんてものはなく、刑法の厳密な要件に当てはまらないケースであっても、処分することができるのです。
検察官送致して裁判するとなれば、罪刑法定主義が復活しますが、少年審判で終わってしまえば、何の罪を犯したと認定されたわけでもないのに少年院と言うこともあることになります。
少年審判の場合、少年には家庭裁判所調査官がつき、少年の家庭や学校から内面に踏み込んだ調査がされるので、犯罪行為それ自体にとどまらない危険性もかなりチェックされます。
大人の裁判は、成育歴などの内面に専門家が入って踏み込んだりすることはほとんどありません(裁判員裁判で審理迅速の要請が高まり、ますます難しくなったと言えます)。

日本の刑事裁判であれば、強制された任意性に疑いある供述調書は不同意と言う形で裁判所に読ませないということができます。
結果として読んだとしても(証拠能力判断のため目だけ通すことはあります)裁判所に事実認定の資料として使わせないということが可能です。
少年審判の場合、例え強制されていても裁判所に自動的に全部引き継がれてしまうので、筒抜けです。
書証に同意だ不同意だなんて概念は「そもそもない」のです。
こんな調書に信用性なんかないんだ、と主張することはもちろんできますが、裁判官に読まれ、資料として使われることを前提に対応することにならざるを得ません。

裁判所が少年院に送ると決定した場合、何年入れるかはきちんと決まっていないケースが通例です。
一応、原則として2年以内とされ概ね1年程度の処遇計画が作られますが厳密には決まりません。
また、処遇がうまく終わっていない場合には、裁判所の許可は必要ですし上限もありますが延長します、と言うことができます(少年院法11条2項)。
大人の刑事裁判なら、例えば懲役10年と言い渡せば、例え再犯の危険がありそうだな、と感じたとしても、10年を越えて収容することは許されません(別の犯罪が出てきたケースを除く)。

罰金のある犯罪を犯しても、罰金にすることはできません。
交通違反などで罰金にするのが妥当なケースでは、わざわざ検察官送致(逆送)して罰金刑にしてもらうという面倒な手続を踏まえることになります。
実は、検察官送致される事件の多くはこうした罰金見込の検察官送致だったりします。

本来保護観察が妥当な少年を少年院に送致してしまっても、「処分が著しく不当」でなければ高裁に異議を申し立てることさえできません(少年法32条)


少年法のこう言う所をつまんで記事にしたのが、先日の記事という訳です。

  • 付添人としても…

日数制限が厳しいため、大人の事件なら若干通用する引き伸ばし(被害弁償が終わるまで判決を待って…と言う事は公判1回、身柄事件でおよそ1ヶ月程度であればごく普通)が通じなかったり
例え自白事件であろうと少年鑑別所への面会を非常に足しげく行わなければならず、
更には事件記録さえ裁判所に見に行かなければならず、(普通の事件ならコピーを送ってもらえる)
記録は審判直前にできるため審判直前期は所用を入れられない
かと言って報酬が高いわけでもない

など、弁護士付添人サイドにとっても、少年事件は悲鳴ものです。

  • だからこその限界もある

ただし、その分少年審判では「少年院に送るのが限界」であり、少年刑務所に送りたい、場合によってはもっと重い刑罰を使いたい(例えば18歳を超えていれば死刑だってあり得る)と言う場合もあります。
その場合には、もっときちんとしたルールを整えた大人の刑事裁判でやる、と言うことになるのです。

また、実務的な運用も、個別的に疑問のある判断はあると言えど、全体的に抑制的に行われているとは言えるでしょう。
犯罪に当たらなくとも、虞犯でバシバシ少年院に叩き込んでいる、と言うような訳ではありません。


  • 大人より少年の方が厳しいこともある!!

それでも、こうした視点の違いは、割と頻繁に「大人より少年の方が厳しく対応される」という事態を招きます

大人の刑事裁判であれば、初犯と言うこともありひとまずは執行猶予…と言う件はたくさんあります。
ところが、少年審判になると、本人の危険性が大きいとか、そういう点を見られて少年院直行…と言う例は後を絶ちません。
何せ危険性だけで処分したって違法な世界ではない以上、危険性部分を大きく取って処分を重くしたから違法だ、とは言えないからです。

私が付添をやった少年審判で少年院に送られた少年は、微妙な件もありましたが多くは「大人の刑事裁判なら執行猶予判決で外に出られる」と言える案件でした。
もちろん、少年だから正式な裁判のために拘束される期間が短く済み、処分も保護観察で済んだというような件もありますが。



他にも、比較的軽微な傷害事件(全治1週間以内の捻挫程度)の場合。

大人の事件であれば、初犯であれば勾留された後、略式裁判等で何十万円か罰金を払えば釈放となるのが通例です。
ケースによっては略式起訴されることもなく起訴猶予で釈放と言うこともあります。

少年の場合、そうとは限りません。
勾留の後も観護措置を取られて審判までの間4週間少年鑑別所に入ると言うことが珍しくないのです。
結果として保護観察などになったとしても、年単位で保護司に生活を見られ、不良の場合は少年院直行、と言うことさえある(保護司は機能不全という話も先日しましたが…)のです。




  • それでも少年法は叩かれる…

世間的に少年を甘やかしている!!廃止だ!!と騒がれている少年法の、こうした「ある意味で恐ろしい一面」について知っている人は、かなり少ないと感じます。
昨今大騒ぎとなり、またしても少年法が甘い!!という声の原動力となっている佐世保の殺人事件でも、仮に犯人の十分な危険性を事前立証できるとした場合、少年法のこうした「ある意味で恐ろしい一面」を使えば防ぐことができえたとさえ言えるのです。
大人の刑事裁判では殺人予備罪を使うのが関の山で、せいぜい凶器を購入したとかくらいにはならないと(しかも凶器として購入したことを立証しないと)防げません。




それでも少年法が少年に甘いと言う批判が吹き上がるのは、例えば殺人などの重大事件が結果として発生しているケースが通例となります。

殺人ならば、多くの件が検察官送致されます(年齢によって原則検察官送致とする規定もある)し、そこでは刑罰の減軽規定が出やすくなります。
そのため、少年法が軽いせいだ、と言う意見が吹き上がりがちです。
実際には、殺人のような重大事件よりも重めの傷害とか、交通事故とか、そういう件の方が断然多く、少年であるが故に厳罰となっているようなケースが少なくありません。

それに、大人の裁判だって、そんなにバシバシと厳罰が使われているとは言えません。
少年事件だから軽くなった!!と騒がれているような件でさえ、大人だと仮定してもまず死刑とか無期にはならんぞ?というのもしばしばです。
加えて、犯行時18歳1か月で死刑になった事例もある訳ですし、裁判員裁判で年少であることを強調した弁護は通じにくくなっているという話もあります。

少年だから報道が匿名なんだ、と言う話もあるのですが、実は重大事件だってせいぜい新聞の県版や地元新聞で報道されて終わり、仮に全国紙に載っても、逮捕の報が載って判決もちらっとで終了と言うことも珍しくないのが実情です。
日本の殺人は年間1000件弱、週に18件程度のペース。殺人事件のたびに佐世保の件のように毎度毎度マスコミがうわーっと吹き上がっていたら、新聞の社会面は殺人事件関連の報道で埋められてしまうでしょう。


  • 無知で少年法を叩くのは危険!!

少年法について議論すること自体をダメだなどと言う気はありません。
十分知識を持った上で論じた結果、これまでの法改正が行われてきたことも事実なので、今後もそのような流れが発生すること自体は十分ありえるといえるでしょう。

ただし、少年法に対する知識が足りないままに、少年法だから犯罪を防げないとか騒ぎ立てることは滑稽であり、また危険です。

少年たちがそのような報道や大騒ぎを聞き、「少年法が軽いなら、今のうちに犯罪をしようか・・・」等と考える危険もあるからです。
刑事処分の抑止力というのは、「実際の処分」もさる事ながら、「処分に対するイメージ」が重要になります。実際の処分を無視したイメージが蔓延ってしまった場合、そのイメージに従った抑止力しか持てないということになります。

抑止力なんか全く関係ないとか、処罰に抑止力なんてないんだ、という立論であればまだしも、抑止力の強化や重要性を主張しながら、自ら少年法が「それでも持っている抑止力」を台無しにするなど論外と言えます。
知識に基づく評論の中で発生するなら、それはそもそもが法律の不備であり、法改正で対応すべき所となるのでしょうが、印象だけでそういったリスクある主張を連発する行為は、言論の自由がある以上違法というのは難しいにせよ、倫理は問われます。


そうして抑止力が緩んだ結果として犯罪が起これば、被害者の人生や生活も滅茶苦茶、少年の人生も滅茶苦茶、裁判所も警察も時間を取られるばかり。
どれだけ少年を厳罰にしようと、誰一人として得をする者はいません。

「少年法自体に少年たちに舐められる要素がある」という面はあるのかもしれませんが、

 

「少年法を実際以上に舐めるように印象付けるような運動は、少年法改悪と変わらない」


ということも忘れてはいけないでしょう。









注:本記事は以前私が保存していたアニヲタwikiの少年法の項目について、書き方などを参考にして書かせていただいております。






最終更新日  2014年08月06日 17時34分51秒
コメント(2) | コメントを書く
2014年07月30日
カテゴリ:法律いろいろ
私が勉強した、ある国の刑事手続です。

実際、多くの人達から批判を浴びている刑事手続なのですが、さてどこの国の刑事手続か考えてみてください。

解答はまた後日。
誓って嘘ネタではないですが、ネタに気づいた専門家やお詳しい方は、解答を書き込むのをお控え願います。
分かった!!とかだけ書き込むのは構いませんが。





一、罪刑法定主義なんてない。罪を犯してなくとも、本人に危険性があると判断されるなら強制的に施設に放り込むことができる。

二、たとえ警察等に自白を強要されて作られた調書でも、その調書はそのまま裁判官に読まれてしまう
(日本の刑事裁判の場合、「不同意」という形で裁判官に読ませない手がある)

三、裁判所は施設に入れる期間を決めない。
 一旦決めた施設に入る期間が終わっても、「コイツはまたやらかすな」と思われたら施設に入る期間を延長できる。

四、「罰金」なんかない。

五、「処分がただ不当だ」というだけでは上の裁判所に審査し直してもらうことさえできない
(日本の刑事裁判の場合、量刑が「ただ不当」でも控訴できる。)






最終更新日  2014年07月30日 18時53分23秒
コメント(3) | コメントを書く
2014年04月08日
カテゴリ:法律いろいろ




新大学1年生の皆さん、進学おめでとうございます。



大学に入ってから実家を離れて独り立ちする方も多いかと思います。
私の囲碁関係の知り合いも何人か都市部の大学に行きました。



しかし、大学生が困った犯罪をやってしまう例は後を絶ちません。
カルト系のサークルの被害者となることなどは、大学側も相当頑張って広報していると思いますが、実際には「加害者になってしまう」という路線もあるのです。



半ば脅されていたが、警察に駆け込もうとも思えなかった

まさか犯罪とは思わなかった

悪い手口に使われるなんて思いが至らなかった。

相手が同意してるから問題ないと思っていた。

つい軽い気持ちで。

みんなやってるから



私が今まで弁護した犯罪者たちの中に、「こてこてに悪人だったから」これから説明するような犯罪をしでかしたという人は、大学生どころか大の大人にもいません。
大体、上のような比較的軽いつもりでやっています。

人間の悪性と、起こってしまう悲劇の結果は必ずしも対応してしません。

救いようのない悪人なのに大した被害は起こさないこともあれば、
誰もが持つ僅かな出来心や気のゆるみが取り返しのつかない結果を招いてしまうケースもある、と言うことです。

しかし、こうした人間の弱さが、犯罪を正当化する理由や、被害者に賠償しなくてよい理由とはなる例はほとんどありません。


そして、そんな弱さは周囲がとやかく言えば、あるいは自覚を持てば一朝一夕に直るようなものでもありません。
むしろ自分にそんな弱さがない、という自信を持つ方が危ないと言えます。
大学生になったからにはそんな弱さから卒業すべきだ!!というような言説もあります。
しかし、これは正論&理想には違いありませんが、現実の問題解決や抑止にはゴミの役にも立たないでしょう。
そんな弱さが自分&周囲を破滅させないようにするためには、
知識でもってあれはダメ、これはダメと覚えていく方が断然手っ取り早いのです。







さて、大学生が巻き込まれそうな犯罪にはどんなものがあるでしょうか。



一、「銀行(郵貯含む)口座作って売ってほしい。」

他人に口座自体を売る目的を隠して口座を作るのは、れっきとした詐欺罪です。
銀行から通帳やカードを騙し取った詐欺罪になるということで、最高裁の判例も出ています。

銀行や郵便局では、こうした口座売買は犯罪であるというポスターが貼ってあることが多いです。
が、これに気付いても、別に問題ないだろうと思ってやってしまう方、多いようです。



二、「携帯契約してきて、売ってほしい」

普通携帯は売ったりするなと言う約款がついています。

なので、売る目的を隠して携帯を契約し、携帯を受け取るのは、これまた詐欺罪です。
赤の他人の名前を書くと文書偽造罪もおまけでついてきます。

一、二とも、こうして取ってきた口座や携帯は、振り込め詐欺とか、ヤミ金の振込先とか、そういったろくでもない目的に使われてしまうことが多くなっています。
そのため、実際の被害額が高額でなく、これまで犯罪をしでかしたことがなくとも(銀行にとって通帳やカードそれ自体の価値は大したことはない)お説教で終了とはならず、正式な裁判とされる傾向にあります。

また、おいしい仕事だなぁと思って常習犯になると、そういう振り込め詐欺やヤミ金と共犯で何千万円もの被害を出した連中と深くつるんでいたという疑いをかけられる可能性もあります。
そもそも、犯罪で金を稼ぐような連中が下っ端にだけ手厚く金を払い続ける保障もありません。
あとになって大ボスたちが「俺たちはあいつに使われてただけなんだ!!」と罪をこちらになすりつけてくる可能性さえあるのです。



三、「書類の受け渡しの簡単なお仕事!!」

振り込め詐欺ならぬ、「オレオレ詐欺」「母さん助けて詐欺」の金銭受取役の公算大です。

法律の解釈上は、詐欺の受取役と知らなければ罪にはなりません。
しかし、本当に知らなかったのか、気付けて当たり前だろうとされることは考えられます(冤罪ですが、裁判所に認めてもらえなければ意味がありません)。

また、知らなかったと認められても、詐欺に加担したことは間違いないので、被害者に対する賠償義務はほぼ不可避でしょう。
顔を覚えられてしまいやすい分、指示者がのうのうと罪を逃れ、自分だけが捕まってしまう危険も高くなります。
仮に退学にならずとも大学なんか行っている余裕はなく、働き始めて返すようでないと、利息もたまっていくことになります。

しかし、被害者の方が老後のためなり、お子さんのためなりにこつこつためた金銭を持って行ってしまったわけです。
一番悪いのは指示者かもしれませんが、被害者からしてみれば「知ったことではない、勝手にお前らでケンカしてろ」ということになります。



私も、直接金銭を渡すタイプの母さん助けて詐欺の受取役を弁護したことがあります(若干フェイクあり)。

彼は詐欺の受取役とは最初気付かず、仕事を頼まれ、報酬の約束もして現地に向かおうとしたところ、手口を聞いて詐欺の受取役と途中で気づきました。
怖くなってやめようかとも考えたそうですが、辞めたら何をされるのか分からないという状況になり、結局ずるずると受け取りをやってしまいました。

で、被害者の方が顔を覚えていたため、逮捕されてしまったという訳です。

被害者から取ってしまったお金は百万円単位(詳細な金額は伏せます)。
詐欺で受け取ったお金については、彼は結局なんやかんやと言いくるめられて全部指示者に取り上げられ、貰えるはずだった報酬もないどころか交通費さえ自腹でした。

指示者は名前さえ分からず、完全なトカゲの尻尾きりに遭ってしまったのです。
しかし、1円も貰っていない下っ端でも、詐欺の片棒を担いでしまった以上、被害者に対して全額を支払う義務は残ってしまっています。
彼が今後どうやって払っていくのかといえば、前科のついた状態で給料のいい仕事先を見つけるか、被害者が見逃してくれるのを祈るしかないのが実情です。



四、夜の危険な火遊び


恋愛関係でも、犯罪に手を出してしまう例もあります。

例えば、高校生以下の異性(女性に限らない点に注意)と夜の火遊びをした結果、青少年健全育成条例等でしょっ引かれてしまうという例(青少年健全育成条例がない都道府県は長野県位で、それでさえ市町村条例の可能性がある)。

結婚を前提に真剣に付き合っていたんだというのであれば罪にはなりません(こうした条例はあくまでも不健全な性的交際等を処罰するもの)が、真剣な交際であると認めてもらうのも大変です。
決して合意していればいいんだ、という訳にはいかないことは知っておく必要があります。



私が過去に弁護した中には、青少年健全育成条例に引っかかった大学生がいました。
彼は、前科など全くなかったのに、執行猶予付とは言え有罪判決をもらってしまいました。
この手の条例違反について検察は一回でも即公判請求が通例で、彼の処分ばかりが特に重かったという訳ではありません。
結果、彼は小さい頃からの夢だった仕事(どんな仕事かは守秘義務と言うことで…)を諦めなければならなくなってしまいました。

それどころか、一歩間違えば、条例違反よりはるかに重い罪である、強〇(←コードに引っかかるので伏字)などと言った重大犯罪で告訴されてしまう恐れもあります。
被害者の親等が事態について大騒ぎした結果、被害者にも半ば催眠がかかったようになってしまい、その時点では合意がなかったと考え始めてしまう可能性もあるためです。



五、アルコールハラスメント


忘れちゃいけないアルコールハラスメント。

その場の雰囲気にのまれてついつい…と言うのは私も正直経験があります。いや、今でもできるか怪しいと言えます。
しかし、それで人が死にでもしたらえらいことです。
直接飲ませた人物は勿論のこと、周囲ではやし立てていた人物も、責任を問われることが十分考えられます。

以前は(今でも?)「自分で飲んだだけ、断られなかった」と言う言い分が通じたようですが、裁判所も社会的にアルコールハラスメントが認知されるにつれ、「断りにくい雰囲気を作るだけでもダメ」とかなり厳しい対応を取るようになってきているようです。
飲ませた相手が死んでしまったら、直接飲ませた人どころか、周囲で囃し立てた飲み会参加者が、軒並み刑事裁判にかけられかねません。

刑事裁判が何とかなったとしても、民事責任については(ある意味刑事裁判以上に)悲惨なことになります。周囲にいただけの人物も民事責任を問われる可能性は高いと言えるでしょう。
交通事故ならまだしも保険に入っているでしょうが、アルコールハラスメントに保険はないので、死ぬ思いで自腹を切り続ける必要があります。

慰謝料と将来働いて得られる逸失利益(大学生が被害者だと将来の収入も高く算定される)、裁判になった時の相手方の弁護士費用、葬儀費用・・・概算ですが、賠償額は1億円に上ることも覚悟する必要があります。

半分の5千万円で折り合ったと仮定しても、利息だけで月20万円超(!)。重大な過失ある生命・身体侵害では破産免責も対象外なので、死ぬまで返し続ける必要が出てくる可能性があります。








さて、こうした罪を犯してしまった場合、20歳未満であれば、少年審判で処分が決せられることになりますが、20歳以上になってしまえばもう大人と同じ刑事責任を負うことになります。

大人と同じ刑罰を受けたならば、履歴書の賞罰欄にも、前科がありますと書かなければなりません。
後からばれれば即クビでも文句は言えない可能性が出てきます。

例え少年審判でも、大人ならほぼ執行猶予なのに少年審判故に少年院行きになる可能性が相応にあるということや、大人なら20日勾留で起訴猶予や略式裁判で罰金なのに少年審判だと20日勾留の後に4週間の少年鑑別所留置があり得ることを考えれば、少年審判ならではの厳しさがある世界と言えます。



夢や希望を持って大学生活に踏み出したのに、僅かな心の弱さのために、大学生活どころか人生全体が台無しになってしまう…
不憫なことだと思いますが、一番不憫なのは被害者ですし、被害者の被った被害を償う立場にいるのは自分しかいない以上、あとから親に泣きついても、弁護士がついたとしても、どうしようもないと思っていなければなりません。
これを防ぐためには、全ての犯罪を網羅的に覚えるべき・・・といったところで、それは無理な相談でしょう。
司法試験の刑法をやったって無理といえます。


ならば、考えるべきことは「君子危うきに近寄らず」です。
大学や、社会一般でやってはいけないとされていることにアンテナを伸ばし、それについて軽い気持ちで考えない。
これは大の大人でも難しいことなのですが、それしかないのです。


大学生になった皆さんは、くれぐれも自己防衛を怠らず、加害者にも被害者にもならない大学生活をエンジョイしてほしいと思います。






最終更新日  2014年04月08日 21時00分20秒
コメント(0) | コメントを書く
2014年02月20日
テーマ:ニュース(97609)
カテゴリ:法律いろいろ
先日、大津いじめ訴訟でデヴィ夫人の名誉毀損について、敗訴判決が下りました。



これについてデヴィ夫人が、ブログその他で気炎を上げています



しかし、これを見ているとお世辞にも得策とは言えない訴訟対応をしているとしか思えない、と言う印象を抱いて、纏めてみることにしました。





何らかの過ちを犯し、あるいは犯したと疑われ裁判で訴えられる。これ自体は、有名人・一般人問わず誰にでもありうることです。

有名人ならなおのことリスクは高くなるでしょう。

ブログに掲載したことを理由に名誉毀損で訴えられるのは、写真を掲載したならば誰にもある話です。
しかし今回デヴィ夫人が狙い撃ちになったのは、デヴィ夫人は有名人で居場所が分かりやすく、判決後の回収可能性もあること、デヴィ夫人の影響力の大きさと言った、有名であることに伴うものと考えられます。



もちろん、これに対して自己の正当性を応訴する、というのは権利ですし、そのこと自体については、第三者がとやかく言うことではないだろうと思います。

ところが、今回のデヴィ夫人の件有名人などが提訴された訴訟に対する応戦、特にブログや公式HPなどで記載されているものについては、リスクについてきちんと考えているのか、と思わざるを得ない、危険なものをちらほら見ます。





ブログやマスコミで訴訟についてコメントするリスクは、私に思い付くだけで以下のものが挙げられるでしょう。



欠点その1 手の内を見られる



そもそも、訴訟の主張内容をweb上に載せるというのは、要するに裁判の主張を全部事前に、相手方にも隠さないでつまびらかにするということです。自分のブログやHPを使っている場合、マスメディアが勝手に編集してしまったもので、本意はそうじゃないんだ、というような言い分も通じないことになります。

当然中身は筒抜けで、手の内を隠しておくなどと言うことはできません。相手方代理人から裁判上、プリントアウトされた上で証拠として提出されることもあります。私が相手方代理人なら、デヴィ夫人の判決後のブログ記事は監視、コメント削除まで含めて逐一プリントアウトして保存しておき、控訴審では自身に有利な証拠として提出するでしょう。

また、ブログ記事では相手方代理人どころか、「裁判官が見てしまう」恐れもあります。裁判で証拠で出されなければ判決の基礎とはならないでしょが、訴訟指揮や裁判官からの和解の勧め等に影響を及ぼす可能性もあるのです。

後々の方針変更をするに際しても、重大な支障を来たすでしょう。



欠点その2 損害額増大・新規不法行為成立の可能性



自身の法的正当性を主張するだけでなく、相手方に対する人身攻撃を内容とする主張を、裁判以外の場で主張する行為は特に危険です。

裁判を受ける権利が憲法で保障されている以上、無制限ではないにせよ一定程度の相手方への攻撃にわたる主張はやむを得ないと見なされ、例えそれが正当な主張と認められなかったとしても、違法な主張であって名誉毀損などを問う、と言うのは難しいとされるのが通例です。



しかしながら、あくまでもこれは裁判と言う場に直接関連するものだからこそその限度で許されていることであり、訴訟外でのイメージ獲得活動では、裁判を受ける権利と言うだけで弁護しきることは困難でしょう。



実際にこうした対応のまずさを引き金に起こった比較的有名な事例が、前大阪府知事である横山ノック氏のセクハラ訴訟(大阪地裁平成11年12月13日)です。

この訴訟では、セクハラ被害に遭った女性が横山ノック氏を訴え、横山ノック氏は公務の時間が惜しいという理由で不戦敗戦術をとりました。

ところが、裁判外ではその他の記者会見や大阪府議会における答弁で自己の正当性を主張し、被害女性に対して攻撃的な言説(判決文によれば「真っ赤な嘘」「明らかな選挙妨害」「でっち上げ」)を繰り返し、また民事訴訟法の規定や裁判における決定を意図的に歪曲したと疑われても仕方のない発言も行い、全国に放送されました。その結果出た判決で、裁判外での発言による名誉毀損判断についての一部を抜粋しますと・・・(赤字は筆者の補足です)



被告(横山ノック氏)による一方的な発言により、原告(セクハラ被害者)は、本来被害者であるにもかかわらず、ことさら被告を陥れるために虚偽の事実を申し立てたり、被告の反論の機会を奪っているかのように誤解されるかもしれないとか、さらに世間の好奇の目に晒され続けるのではないかとの強い不安感を抱くことにより、著しい精神的苦痛を受けたことが認められる。

 以上のように、被告は、自己の高い知名度を利用して、原告には何らの反論の機会すらない記者会見等の場において、原告を侮辱し非難する発言を繰り返すことにより原告に対して著しい名誉毀損行為をし、右発言内容がマスメディアを通じて連日のように全国に報道された。これにより原告が被った精神的苦痛を慰謝するには、三〇〇万円が相当である。




セクハラなどの慰謝料も認められていますので300万円が全額ではないですが、つまらない言い訳をせず、本当に「文字通り」不戦敗戦術をとっていたならば、少なくともこの300万円は払わなくても済んだお金です(名誉毀損民亊訴訟では、単発で見ても300万円は相当高い部類)。

争い事があるからと言って、イメージ獲得のために手段を選ばなくてもいい、などと言う考え方は通らないし、新規で不法行為を問われても文句は言えないのだ、と言うことなのです。

また、新規での不法行為とまでは言えなくとも、こうした一連の行動の執拗さが、慰謝料等の増額要素として働いてくる可能性はあります。例えば、過失100%の側が責任を全く認めない、あるいは殊更低い責任主張をしたために通常の交通事故より慰謝料が増えてしまったと言う現象は、交通事故などでもあります。


デヴィ夫人が発言通り控訴するのであれば、相手方も控訴・附帯控訴してくる可能性も十分にあります(原告の請求は一部退けられていますし、デヴィ夫人の影響力を理解していないと判決を批判もしているようですし)。控訴をしたはいいが、附帯控訴された上、もっと不利な判決を招いてしまいましたと言うことだって当然あります。

民事裁判でも、一審の判断が二審以降抜本的に変わってしまうのを狙う、と言うのは、有力な新証拠を出しでもしないとかなり苦しいものがあります。
一審で負けてしまった場合には、傷口を広げないためにも、控訴と言う手法を取るにせよ、せめてコメントは差し控える、控訴を表明するにせよ、主張立証は弁護士に任せてありますと言っておく方が安心でしょう。



欠点その3 弁護士との関係


担当弁護士としても、自分の依頼者が当該紛争の中で更に不法行為を重ねましたと言うことでは、面目丸つぶれも甚だしい所です。不法行為が弁護士の指導と疑われれば、相手方から懲戒請求をかけられたところで文句は言えません。

弁護士は依頼者のある程度の勇み足は見逃すことが多い(少なくとも私はそう)ですが、担当弁護士が止めていたのに強行して自爆、などと言うことになれば、辞任されても仕方ないということになりかねません。



また、仮に弁護士が粛々と進めてくれても厄介なことになります。

裁判では、向こうの代理人の弁護士がきちっと指導してくれるだろうし、それには従ってくれるだろうということを前提に和解に応じることが珍しくないのです。

代理人の手にも余ってる依頼者だな、と見られれば、履行の確保が疑わしい以上、和解条件も緩めませんと言うこともあります。
(デヴィ夫人は和解は断固応じない構えですから、その意味では覚悟はできているのでしょうが・・・)



それでもやるなら


一般的な利害得失でこうした戦術に効果があると考えられるのは、例えば文字通り裁判に1円分でも負けたら全てが終わってしまうような世界で、「捨て身の戦術」としてやむなし、と言うことはあるでしょう。刑事事件などがそうです。

また、広く伝えることでアリバイ証人などが登場する可能性があるような件であれば、そのためにリスク覚悟で広く伝える、と言うことも考えられるでしょう。名乗り出たアリバイ証人とは裏で話せば、相手方に漏れることもありません。

・・・しかしながら。現実問題としてこういった例は少数です。



また、利害得失なんてどうでもいい、こうした自分の言いたいことを言いきるこそが大事で、裁判の結果など二の次でいいんだ、と言う価値観を持っているのならば、それも一つの考え方かなぁ、とは思います。

それでも、マスメディアによる恣意的な編集、誤った法的知識に基づく発言が傷を広げる可能性等を踏まえれば、発言内容については弁護士サイドでチェックすることも重要でしょう。コントロールを離れないように、正式な記者会見を開くなり、マスメディアには文書で送るなり(それでだってコントロールを離れる例は後を絶たないのですが)といった慎重な対応が必要です。





絶対に勝てる案件ならばまだしも、現実に第一審で負けてしまった案件への対応として、デヴィ夫人のブログその他での対応は自分の傷口をさらに広げているようにしか見えないし、担当の代理人弁護士もこれでは苦心してるのではないのかな、というのを如実に感じます。

デヴィ夫人としては、自分の言いたいことを言えれば裁判で不利になるのも上等、という考え方の可能性は十分あると思いますが、少なくとも、そういう価値判断を持っている人でない限り得策とは言えないやり方であると考えています。






最終更新日  2014年02月20日 17時34分31秒
コメント(3) | コメントを書く

全138件 (138件中 1-10件目)

1 2 3 4 5 6 ... 14 >

PR


© Rakuten Group, Inc.