アミノ酸がトマトの成長に及ぼす影響
いわゆる有機物に含まれるアミノ酸は、植物が直接吸収するといわれ、注目されています。それに一石を投ずるであろう文献を読みました。 以下、その要約です。 「培養液中のアミノ酸がトマトの成長に及ぼす影響」 Garcia,A.L.,J.A.Franco,N.Nicolas and R.M.Vicente 実験に用いたトマトの品種:Asun 種子は1%次亜塩素酸ナトリウム溶液で殺菌処理した後、25℃暗黒下で発芽させた。 苗を昼温28℃、夜温18℃、湿度60~80%、16時間日長の条件下、ホーグランド培養液で5週間栽培した後、4つの処理区を設けた。 1.無処理区 2.アミノ酸処理区 0.2mMのセリン、アラニン、トリシン、フェニルアラニンを培養液に 混合 3.抗生物質処理区 50mg/lのアンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンを混合 4.アミノ酸+抗生物質処理区 処理開始から16日後までの茎直径、茎長、葉長、根と茎と葉の新鮮重および水分含有率、成長速度、相対成長速度、蒸散速度、気孔コンダクタンスを測定し、処理間で比較した。 茎直径、茎長、葉長について、無処理区とアミノ酸処理区では実験中増加し続けたが、両区を比較すると、アミノ酸処理区の成長は無処理区をやや下回っていた。 また、抗生物質処理区とアミノ酸+抗生物質処理区では処理開始後6~10日で増加が止まった。 実験終了時、抗生物質処理区とアミノ酸+抗生物質処理区の根の新鮮重は無処理区の20%以下であった。 成長速度、相対成長速度について、無処理区とアミノ酸処理区では直線的に増加したが、両区を比較すると、無処理区の方がやや大きかった。また、抗生物質処理区とアミノ酸+抗生物質処理区では処理開始から3日間減少した後、10日目まで増加、それ以降ゆるやかに減少した。 実験が進むにつれて、葉の水分含有率は、無処理区とアミノ酸処理区では増加したが、抗生物質処理区とアミノ酸+抗生物質処理区では減少した。 蒸散速度と気孔コンダクタンスはいずれの処理区でも減少した。 以上の結果から、アミノ酸処理区では無処理区に比べ、茎直径、茎長、葉長、成長速度などが劣ることが明らかとなった。 アミノ酸処理区の成長が無処理区をやや下回った原因として、アミノ酸の供給によって根と微生物の間で窒素に対する競争が助長されたためと考えられた。 また、抗生物質はトマトの成長に対して有毒であり、抗生物質の負の効果はアミノ酸の存在で軽減されなかった。参考:『農業および園芸』養賢堂