2019/12/25(水)21:35
『アパシー 学校であった怖い話 ドラマCD』制作秘話その16
今回は不知火美鶴役の堀越せなさんのお話です。
堀越せなさんと言えば、『アイカツスターズ!』の主人公虹野ゆめの歌唱担当をされていることで有名です。最近では、様々な舞台で活躍されていますよね。
そんな堀越さんも、オーディション応募組でした。
本当にたくさんのアイドルの方々が応募されてきて驚いたのですが、声優としてはほとんどお仕事をされていない彼女の武器は何といってもその歌唱力でした。
そこで一次通過のご連絡を差し上げたところ、堀越せなさんもお一人でオーディションを受けに来られました。
とにかく笑顔を絶やさない。
そして控えめ。
同じ笑顔でいながらも、元気を前面に押し出してはつらつな都築里佳さんと比べ、逆の印象を受けました。
しかし、屈託のない笑顔とやる気はひしひしと感じられ、大変好印象でした。
そして最終的な合格者を決めるにあたり、やはりアイドルの方に声優を務めていただくためにはその方の特性を活かした役柄を用意しなければアイドルのファンも、ナナコロのファンも納得しないだろうというのは必然。
なので、生歌こそ聞いたことないもののネットで動画を拝見するにあたり、その歌唱力を活かしてこその堀越せなさんだろうと判断し、それを想定したシナリオのプロットを描き、合格の連絡をさせていただきました。
それは鳴神学園にまつわる呪い歌を主軸にしたシナリオでした。
そのすべてを聞くと恐ろしい呪いを受けるという鳴神学園呪い歌を様々なキャラクター達がパートに分けて歌っていくというシナリオを考えていました。
み~こさん、野水伊織さん、都築里佳さん、そして堀越せなさん等々、他にも歌の上手い方が大勢いらっしゃる。
だからこそのシナリオでした。
今回、歌手としても活動している(というよりそちらの方が主軸)方がこんなにいるのに、それにドラマCDなのにそれを活かさないのは実にもったいないというのが本音でした。
実を言いますと堀越せなさんと都築里佳さんをキャスティングした時点で、堀越せなさんは合唱部のエース、そして都築里佳さんはダンス部のエースという立ち位置で互いがライバル視しているという設定を考えていました。
がしかし、プロットを作り終えた後、関係者の方に歌手の方々に歌ってもらう場合、別途歌唱料が発生する、作曲料とか音楽用収録スタジオ代とか、歌を歌うだけでさらに莫大な費用がかかると言われ、あえなく撃沈。
しかし、堀越せなさんの合唱部設定だけは外したくない。
都築里佳さんとは打ち合わせを重ねることで、彼女らしい特有のキャラクター像が出来上がったため問題はありませんでした。
そこで、堀越せなさんにはどんな役をやりたいのか打診してみると返ってきた返事は「どんな役でも頑張ります!!」というもの。
実際お会いして話を聞いても、彼女は本当に胸元で小さなガッツポーズを作って「頑張ります」という答えるばかり。
それは、どんな役でも絶対にこなして見せますという気持ちの表れでしょう。
そんな彼女は、み~こさんが出演されることを一入喜んでおりました。
「お知り合いですか?」と聞くと「お会いしたことはありません。でも、歌い手として先輩として憧れています」と言って胸元で小さくガッツポーズ。
というわけで、彼女だからこそのキャラクターをこちらで作ってみました。
控えめだけれど一生懸命な姿勢を持つ、可愛らしい堀越さんだからこそのキャラクター。
それを活かした設定で合唱部のエースという立ち位置を崩さないキャラクターを考えるのは、とても楽しい作業でした。
と言っても、舞台は鳴神学園です。
登場人物は一癖も二癖もある連中ばかり。
不知火美里が持っている陰、裏設定をきっちりとレポート用紙にまとめ、堀越せなさんにお渡ししました。
「うわあ、私のキャラクターを作っていただけたんですか。嬉しいです。頑張ります!」
と言って、その髪を握りしめてガッツポーズを作る彼女の眼は潤んでおりました。
「おそらく、その設定は使われないと思います。でも、不知火美鶴というキャラクターはそういう過去を引きずっています。それを前提で演じてください」
僕はキャラクターを設定するとき、本来シナリオでは描かれない設定を色々と肉付けしていきます。
人間には、必ず秘密がある。
その秘密を持っているからそこ、光り輝いているという持論を持っています。
それを最大限活かしたのが今回の新キャラクター不知火美鶴なのです。
そして、この裏設定のほんの障りの部分が今回のオープニングに登場しますので、ファンの方はぜひ聞き逃さないようにお願いいたします。
というわけで、様々な事情により二転三転していったドラマCDのシナリオですが、結局歌を歌えなくなったものの合唱部のエースという設定は活かし、不知火美鶴のシナリオ「フクさん」が完成します。
控えめながらも元気に明るく振舞う合唱部のエースは、演劇部の部長である岩下明美と静かなバトルを繰り広げます。
クールで物静かな岩下明美に対し内面と外見のギャップに大きな隔たりを持つ不知火美鶴だからこそのシナリオ展開。
「フクさん」のシナリオを聴けばわかりますが、岩下明美と不知火美鶴が対比されるからこそのシナリオです。
そして「フクさん」は、この『アパシー 学校であった怖い話 ドラマCD』において、一二を争うほど薄気味悪いシナリオだと自負しています。
とにかく、このドラマCDにおいて七話目は笑えない話の目白押し。
怖い話という大きな設定の中で、実に様々なタイプの怖い話が語られます。
その中でもひときわ気味悪い「フクさん」。
堀越せなさんは十分以上に渡り一人語りを頑張ってくれました。
今までの芸能生活において、ダントツに長いセリフ回しのはずです。
十分以上、まさに切れ目なく語り続けてくれたのですから。
しかも、ものすごいセリフの連続。
今まで見たことのない堀越せなさんの一面を聴けると思います。
ぜひお楽しみに!!
とにかくそのキャラクター性が難しいため収録日はほぼ丸一日、予定していた時間をオーバーするほど使ってしまいましたが、それでも最後まで力いっぱい頑張ってくれました。
不知火美鶴というキャラクターをとっても気に行ってくれた堀越せなさん。
11月に行われた『第二回鳴神学園生徒総会』でも、元気いっぱいで登場してくださいました。
今回のドラマCDでは歌を歌うことは叶いませんでしたが、それでもセット特典のシチュエーションシナリオでは、合唱部の一員としてあなたに発声練習の手ほどきをしてくれるという大サービスぶり。
聞き逃したら一生の後悔ものです。
「不知火美鶴を育てていきたいです」と嬉しそうに語ってくれた堀越せなさん。
今回のドラマCDが売れて、そして評判が良ければ次はいよいよ呪い歌シナリオを実現できるかもしれません。
最近はアイドルとしてだけでなく舞台でも大活躍中の堀越せなさん。
呪い歌のはシナリオは生で歌ってこその面白さもあると思うので、舞台もいいですよねっ!
でも、ゲームの中で輝く不知火美鶴をぜひ書きたいというのが僕の本音でしょうか。
『アパシー』シリーズの新しい仲間として登場する堀越せなさん、不知火美鶴を一緒に育てていきましょう。
今後とも、ぜひよろしくお願いいたします!!