カテゴリ:真空管
ある方から
「ELROG製300Bは一般的な300Bとは異なるIpカーブらしい」 との情報がありました。 今まで「300Bという名前なのだから300Bなのでしょう」と思って普通に使ってきましたが、 はたしてどうなのでしょうか.... 手持ちの300Bは、JJ製とELROG製の2種類ですので、これを比較してゆきましょう。 ![]() JJ製の特長は、 ・分厚いガラス ・個性的な白のソケット ・5V1.3Aの少し増えたフィラメント電力 ・上部に大きな放熱板 ELROG製の特長は、 ・トリタンフィラメントの煌々とした灯り ・上部はグラファイトのようなものを内壁に吹いてある ・全体的に電極は下のほうに配置 ![]() ![]() ![]() とても魅力的な真空管で、私は好きです。 etracerを用いて、愛用しているサウンドパーツ製300Bプッシュプルアンプの動作に近いところで計測してみました。 JJ製300Bは、 ![]() Ep=340V、Eg=-70Vのとき、 ・Ip=50mA ・rp=860Ω ・gm=4500μS ・μ=3.9V/V Ipカーブは.... ![]() こんな感じです。 では、ELROG製の300Bはどうでしょうか。 ![]() Ep=340V、Eg=-70Vのとき、 ・Ip=46mA ・rp=1310Ω ・gm=2670μS ・μ=3.5V/V JJと同じ50mAになるよう、Egを少し浅くしてみましょう。 Ep=340V、Eg=-69Vのとき、 ・Ip=49mA ・rp=1280Ω ・gm=2800μS ・μ=3.6V/V おやおや?? これ....全然違うではないですか!! これは300Bであって300Bではない! rpが860Ωと1280Ωじゃ全然違うよね。 たぶん、ELROGは5kΩのトランスのほうが相性がいいかもしれません。 でもまぁスピーカーは純抵抗負荷ではなく複雑な音を出せばコーン紙の振り返しでインピーダンスは相当動くので、どこまで気にするかは個人の好みかな。(私は「大体でOK派」です) そしてIpカーブは.... ![]() 明らかにrpが高い傾向の線を描いていますね。 そして、グラフを見る限りでは、大電流域でフィラメントの電子放出が追いついていない感があります。 それは何というか、 カソード温度を下げてくとIp特性の大電流領域がフニャっと倒れてくるアレ ですよ。 以前ブログに書いた「6AU6は半分のヒーター電圧でも動くのか」の記事もあわせて見てください。 効率の良い酸化膜フィラメントで5V1.2A(JJは1.3A)でまかなっている動作を、やや効率の悪いトリタンでやろうとしたら....それを考えると大電流域でフニャっとなる現象の説明がつきます。 トリタンフィラメントの5V1.2Aで出せる目一杯のエミッションであるということです。 もちろん通常の動作領域では倒れ込んではいませんので、全く問題はありません。 素人の私が何となく想像するに、 「ELROGはトリタンフィラメントとしはギリギリのエミッションで300Bの5V1.2Aの規格に収めているのではないか。」 ということです。 そしてこのエミッション的にチョット厳しい状態で300Bの特性に似せるのは無理だったのかもしれません。 規格を無視してもっとフィラメント電力を上げた設計にすれば、そっくりに出来たかもしれません。(たとえば5V2.5Aとかなら余裕だと思います) しかし、よくこの条件で340V70mA付近で使う300Bアンプに問題なく挿せる真空管を開発したなぁと関心しました。 今回の測定結果を見た私の結論としては、 「ELROG製300Bの他との音質差は、フィラメント素材の要因よりも、電気的特性の違いであるといえる」 のかもしれませんね。 なんか「〇造の館」っぽい結論となってしまいましたが。(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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