世界の片隅で小さな声で申し訳なさそうに「スティール!」と叫ぶ!

2023/08/06(日)18:02

DA60という真空管

真空管(245)

知人からDA60という真空管を譲っていただきましたので紹介します。 プレートは小さく感じますが、両サイドの支持フレームも使って放熱するのでしょう。 2本とも造りは同じですが、製造ロットは異なります。 規格は、真空管(Electron tube) 規格表データベース「DA30,DA60」とThe Valve museum「MZ05-60」が参考になります。 因みにMZ05-60はフィラメントがオキサイドコートなので6V1.7Aと低電力です。 DA60のその他の情報に関しては、ひま人の館「英国の電力増幅管」(3極管や、E U Valve「DA60系」や、Valves world「DA60トランス結合シングルアンプ」が参考になります。 フィラメントは2点吊り。 フィラメントを点灯してみるとわかるのですが、Λ型のパラレルで点火しているようです。 片方が切れても多少の性能が出るように作ってあるのかもしれません。 etracerで特性を測定しましょう。 Ep380Vでタップリと100mAあたりを測ってみましょうか。 【2本目】製造番号(?)521 Ef=6.0V, If=4.02A Ep=380V Eg=-80.4V Ip=100.00mA rp=999Ω gm=2847μS μ=2.8V/V 【2本目】製造番号(?)9774 Ef=6.0V, If=3.76A Ep=380V Eg=-89.2V Ip=100.06mA rp=1043Ω gm=2462μS μ=2.6V/V Ipカーブが-160Vレンジまでしか表示されないのは、etracerがEg=-160~170Vまでしか対応していないからです。 DA60はバイアスが大変深い真空管であることがわかりました。 gmも低く、どことなく設計が古い球という印象です。(決して球が疲れているわけではない) 300B並のrpなので、3.5~5kΩのトランスが合います。 私たちは漠然と「トリタンの球=rpが高い」イメージを持っているので、このバイアスの深さとrpの低さにはビックリです。 280Vで-30Vだと120mAくらい流れますので、グリッド電圧が-30VまでのTU-8200R(魔改造品)では対応できないですし、搭載しているのが6V4Aのスイッチング電源なので点灯さえできません。 Ipの立ち上がりかたを見たときに、最適なアイドリング電流はEp380Vであれば80~100mAが良さそうです。 一寸流しすぎかもしれませんが、あまり低いとカーブの寝ている悪いところを使ってしまい、直線性も悪くなります。 かといって120mAも流すと出力トランスのほうが厳しくなり低域も落ちてしまいます。 丁度良いのは380Vで80~100mAかなと。 当然ながら出力トランスも大きなものが必要です。よくあるヒータートランスみたいに小さい出力トランスとかは絶対ダメです。 高透磁率で繊細なトランスよりも、タップリ電流を流しても低音が痩せない造りのトランスが有利に思えます。 ところで、Eg-90Vで100mA流そうとするとB電圧は380+90で470Vです。 そしてバイアス用の抵抗は900Ω。I^2Rで計算して9Wを消費しますので、かなり電力容量のある抵抗器にする必要があります。 DA60、なかなか手強いという印象です。 しかし、たとえばEp=300VでIp=80~100mAとするするなら、Egは-60V前後(B電圧としては360Vくらい)で2Wは余裕で出ます。 バイアスが60Vくらいでしたら、ドライブも楽ですよね。 2Wといえば全く不自由ない実用的な出力です。(小音量で静かに聴く私は0.3Wもあれば十分です) 使い方としては勿体ないかもしれませんが、今回の測定から「そういう付き合い方のほうが良さそう」という印象を持ちました。

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