カテゴリ:真空管
SIEMENSのCaという真空管を紹介します。
![]() 前回紹介しましたDaという真空管同様に、ドイチェポスト(ドイツの郵便会社)の型番です。 ドイチェポストは電話の業務もやっていたので、電話の中継増幅器で使用されたものなのでしょうね。(現在は郵便のドイチェポストと電話のドイチェテレコムの別会社になっています) 帯は...なんか貼り直していますね。 良い状態ではないですが、Ca旧型自体が市場に出ている時点で「とりあえず買っておく」なので、円安の向かい風の真っ只中を強引にいきました。 構造は.... 2枚のプレートの間にグリッド、そして中心にフィラメントがハッキリ見えます。 ![]() 三極管らしい、とてもわかりやすい構造ですね。 各部材も丁寧に加工され溶接されています。 電極もガラス細工で支えられています。 ![]() 「芸術的」ともいえますが、当時はこのような手法が最も機械的・電気的に精度を出しやすい手法だったのでしょう。 この後の世代からプレートを箱のように加工して電極一式を組み上げる近代真空管の手法が現れるのでしょうね..。とても興味深いです。 規格は、Frankさんの資料室の「Ca」規格が参考になります。 また、EU Valveの「German Post tubes (Part 2)」に詳しく書かれています。 フィラメントは3.65Vが指定されています。(電流1.1A) 妙に半端な電圧指定ですが、当時の電源事情から機器実働状態としては3.65V上下数パーセントが想定され製造されたのかもしれませんね。 プレートは大型ですが最大プレート損失は5Wそこそこです。 標準規格では、Ep=210V、Eg=-12V、Ip=20mA、gm=1.65mA/V、Ri=4.1kΩと書かれています。 etracerで特性を測定してみましょう。(おそるおそる...) 200Vで12mA流れるところで測ってみます。 【1本目】Nr.10806 ![]() Ef=3.65V, If=1.09A Ep=200V Eg=-14.8V Ep=11.84mA rp=4703Ω gm=1347μS μ=6.3V/V 【1本目】Nr.10806 ![]() Ef=3.65V, If=1.09A Ep=200V Eg=-15.8V Ip=12.04mA rp=4712Ω gm=1137μS μ=5.4V/V エミッションは十分ある(Ipカーブは綺麗に伸びている)ようですが、何せ古い真空管(しかもゲッターが無い時代のもの)なので、高圧は200Vを超えたあたりから電流値がガタガタして怪しいです。 多分ですが、私が入手したものはコレクターの選別から落ちたものかもしれません。 もしくは、この時代のCaは現存する大半はこのような特性になっているのか...。 一般的な真空管試験機ですと実働を想定した高圧側の電圧電流までは測定せず、動作中心付近(Caでしたら200~220V付近)しか見ませんので、高圧側の乱れまでは見えませんし予測もできません。 しかし、これが100年前の真空管ですから、むしろこれだけの電気特性が出ているだけでも奇跡です。(因みに1930年代後半の真空管でも高圧側が一寸不安なものも多く存在しますので、古い真空管は「そういうもの」だと思います) 増幅動作に関しては、Ep200V、Ip12mA、負荷7kΩ(4.7kΩのrpに対してロードラインを結構立ててます)で0.175Wが想定されます。(歪率が増えますが、プレート損失内でかつグリッドがプラス領域に入らない程度の出力が出る妥協点です) 狭い部屋(自分に近い距離)に置いた93dB以上の高能率スピーカでリュート音楽を静かに楽しむのがせいぜいかと。 グラフを見ての通り、高圧側は微妙ですので、いつ駄目になってもおかしくないです。 しかし、この「いつか使えなくなる」儚さに魅力を感じるのも確かです。 手持ちの旧Caはゲッターの無いタイプの真空管なので、測定していて心臓が止まりそうになりました。 買ったはいいですが、怖くて使えません。(^^; しかし遠い将来、真空度が落ちて「ただのガラス球」になってしまいます。(100年も真空度を保っているというだけで奇跡です...) 増幅するためこの世に生まれた真空管ですから、使ってあげないと...。 今回、Caの構造から真空管の歴史を見ることができ、とても有意義です。 買って後悔はして...いません!たぶん...(汗) もし、このブログをご覧の方で旧型Caをお持ちでしたら、今回の実測データを参考にされてください。
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