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テーマ:憲法議論(169)
カテゴリ:憲法
憲法の無効復活論は、憲法第99条の憲法尊重擁護義務に反するから、国会議員、裁判官等の公務員は論議すべき限りでないというのである。かつて鳩山(一郎)首相が、政党からこの攻撃を受けて沈黙したことがあったが、これは立法論と解釈論とを区別しないことに座するものである。(菅原裕『日本国憲法失効論』(国書刊行会)、pp. 106-107) 第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。 文化統合の象徴たる天皇に憲法尊重擁護の具体的義務を課すのは「倒錯」の極みと思われるけれども、そのことは一旦措(お)こう。 第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。 言う迄もなく、第99条は、憲法に変更を加えることを禁ずるものではない。が、問題は、憲法の無効を宣言し、帝国憲法に復帰することまでもが認められるのかどうかということである。 が、現行憲法は無効であると宣言されることなど想定されているはずもないので、憲法の無効宣言は「法の網の目」をすり抜ける話と考えざるを得ない。詰まり、憲法が無効であることを宣言することは憲法で禁じられているわけではないということである。だから、憲法が無効か否かを検討することも第99条に反するわけではないということになる。 勿論、憲法に書かれていないことは何をやっても良いと言いたいわけではない。が、現憲法の特殊な黒歴史を払拭し、憲法を日本人の手に戻すためには、仕方のないことなのだろうと私には思われる。間違った憲法を間違った憲法の枠内で考えて、無効化することは出来ない相談だということである。 憲法が第9章第96条に改正規定を設けているのは、憲法自体改正論議を予想している証左である。憲法を真に尊重、擁護せんがためには、この憲法の欠陥、矛盾を是正さるべきで、そのための研究論議こそ必要であって、同様に、無効復活論もあえて禁ずべきではない。 ただ、現行憲法の無効が確認されるまでは、いかなる欠点があっても、事実上有効なものとして取扱うべきであるから、公務員がこれを尊重擁護すべきことは当然である。しかし解釈だけにとらわれて其の日本憲法がいかにあるべきかについて、根本的に大所高所から思いを致さないものは、公務員としても完全にその義務を果たしているものとはいえない。いわんや占領管理法が憲法を僭称している憲法受難時代においておやだ。(同、p. 107) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.08.08 21:00:08
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