2024/10/26(土)20:00
教育について(61)教育の突然変異も必要
《上級学校においても同様で、選抜試験を常に知識に頼ることは好ましくない。各学校が自由に入試方法を工夫し、それぞれの適性に応じた選抜の仕方が考えられるべきである。 たとえば信州大学では1つの科目が優秀な成績であれば.ほかの科目がたとえ零点であっても採用するという、独特な入試方法をとっているが、こうしたやり方も1つの方法であろう。いろいろな工夫が、いま子供たちが持っている単一な勉強の仕方が教育だというような考え方を、次第に是正することになるだろう》(加藤寛「教育荒廃の根源にあるもの」:世界を考える京都座会編『学校教育活性化のための7つの提言』(PHP研究所)、p. 55) 「大学は、入学は広く、卒業は狭く、に改革すべし」が私の持論である。大学独自の教育課程に必要な条件を満たしていれば、広く入学を許可し、必要な単位を取得できなければ、卒業証書を授与しないという厳格さが求められる。詰まり、しっかり勉強し研究に励まない学生は卒業させないという形への変革が必要だということだ。《一方では、そんな教育改革はあまりにも秩序がなさすぎるのではないか、教育というもののシステムがこわれてしまうのではないか、という危惧を抱く人が出てくるかもしれない。 しかし、それは工業化の過程で歪(ひず)みが生じた教育システムを改革するために不可欠なことであって、根強い学歴信仰や、あるいは社会がもっている学歴偏重と相まって、是正していかなければならないものなのである》(同、pp. 55f)The opening up of new markets, foreign or domestic, and the organizational development from the craft shop and factory to such concerns as U.S. Steel illustrate the same process of industrial mutation—if I may use that biological term—that incessantly revolutionizes the economic structure from within, incessantly destroying the old one, incessantly creating a new one. This process of Creative Destruction is the essential fact about capitalism. It is what capitalism consists in and what every capitalist concern has got to live in. – Joseph A. Schumpeter, Capitalism, Socialism & Democracy, Part II: VII. The Process of Creative Destruction(国内外の新市場の開拓や、手芸用品の店や工場からU.S.スチールのような企業へ組織が発展することは、(生物学的用語を使わせてもらえば)産業の突然変異と同じ過程を示している。この創造的破壊の過程こそが、資本主義についての本質的な事実である。それこそが資本主義であり、あらゆる資本主義企業が生きなければならないものなのだ)―ヨーゼフ・A・シュンペーター『資本主義・社会主義・民主主義』:第2部:第7章 創造的破壊の過程 シュンペーターの顰(ひそみ)に倣うなら、今の教育改革にも「突然変異」が必要なのではないかということだ。勿論、進化論的な意味での「突然変異」とは、人工的に起こすようなものではないから、同一に語れないのだけれども、学校選択の自由を認める教育改革があまりにも突飛であるとの心配には及ばない、進化には、時として「突飛」と思われることもまた必要になるということを確認できれば、それでよい。