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2008.06.06
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カテゴリ:カテゴリ未分類
噂があった。
ここから遥か南には、ひとたび食せば天に昇り、売れば一生遊んで暮らせる宝があると言う。
そんな眉唾、と大人たちは鼻で哂う。
なにしろ、証明したものは誰も居ないのだ。
信じろというのが無理だった。

だから、気づかなかったのだ。
たった一人だけ、それを本気にしたことに。


かつて少年だった彼は、反対を押し切り村を飛び出す。

目指すは、遥か南の方。
かつて聞いた話を頼りに、ひたすら南へ。
砂漠を越え、山を登り、海を渡った。


そして、三年かけて彼は遂に見つけたのだ。

白いそれは、冷えた水より冷たかった。
彼は、こんなものは今まで見たことがなかった。
口にする。決して美味いとは思わないが、これが天にも昇る味なのだろう、と彼は思った。

――きっとこれが『宝』に違いないと彼は思い、喜んだ。
そして、冷たいそれを、この日の為にと村から持ってきた、ラクダの皮袋いっぱいに詰め込んだ。

行きは辛いが、帰りはとても楽だった。
この皮袋を見て、驚くであろう村人達を想像すると、楽しみで仕方ないからだ。

行きよりも、帰りは驚くほど早く、二年も経たずに帰ってきた。

村人達は彼の帰りを何よりも喜んだが、それ以上に、あのくだらない噂が本当だったことに驚きを隠せなかった。


彼らは興味津々といった風に、彼の自慢話に聴きふける。
それは白くて、どんなものよりも冷たいと聞き、それが彼らの経験には知る由もないことであったことも働いて、彼らの好奇心は更に火が強まる。

もう辛抱ならん、見せてはくれんのか。
村人の一人は言う。

彼は喜んでそれを聞き入れ、固く固く口を閉ざした、皮袋の紐を解いた。

――袋の口から、何の変哲もない、ただの水が溢れ出した。


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『宝物』とは氷のこと。
ちなみに彼の出身は赤道付近の小さな集落。
子供の頃の噂をいつまでも信じ、大人になった彼は南を目指しその宝を手に入れる。
彼は喜び、その宝を持ってきた皮袋に詰めて村に帰るが……という流れ。
本当は違うものを書きたかった気がするんだけど、いまいち思い出せない。
……ムシャクシャして書いた(、と思う)。後悔はしていない。





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最終更新日  2008.06.06 23:20:36
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