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テーマ:名画とツーショット!(49)
カテゴリ:芸術(映画・美術・音楽)
「蔵出し!傑作選」の7作目の作品は、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 《聖マタイの召命》1599-1600年、ローマ、サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会館蔵です。
ここに描かれているのは、闇を切り裂く劇的な光の表現です。”宗教画に革命を起こした”とも言われる作品です。“光と闇の絵画革命”です。 カラヴァッジョが育ったのはイタリア北部、ミラノにほど近いカラヴァッジョ村です。彼が6歳の時、当時猛威を振るっていたペストから逃れるためにこの村にやってきました。しかしその翌年に父親が亡くなり、その7年後には母親もこの世を去ります。 1592年、21歳になったカラヴァッジョはローマへと向かいます。その時彼はなんと無一文だったといいます。お金はありませんでしたが、彼には絵の才能があったのです。 そんな中カラヴァッジョにチャンスが訪れます。サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会から聖堂を飾る作品の制作を依頼されたのです。カラヴァッジョはそれまでの常識を打ち破る絵を描き上げます。それが『聖マタイ三部作』です。マタイがキリストの弟子となり、殉教するまでの姿が描かれています。 ■正面に描かれている《聖マタイの霊感》。(聖マタイと天使とも訳される)(1602年)。 ■向かって右側にあるのが《聖マタイの殉教》。(1599-1600年)。 ■向かって左側にあるのが《聖マタイの召命》。 三枚の中でも特に傑作の呼び声が高いこの作品。 《聖マタイの召命》のストーリーは、税の取り立ての仕事をしていたマタイがキリストに声を掛けられて彼の弟子になるという話です。カラヴァッジョはこの作品を下書きもせず、一気に描いたと伝えられています。 ではこの作品の何が新しかったのでしょうか? 《聖マタイの召命》が描かれるおよそ100年前の宗教画を見てみましょう。 ルネサンス三大巨匠の一人、ラファエロ・サンティ作《ベルヴェデーレの聖母》1506年、ウィーン美術史美術館蔵です。それまでの宗教画では、明るい光を画面全体に行き渡らせることで、神聖な世界を表現していました。しかしカラヴァッジョは違ったのです。 画面右側、指さすキリストには光が当たっておらず闇の中です。 一方でマタイを含むテーブルを囲う人たちは強烈な光が降り注いでいるのが分かります。 奇跡の瞬間をより劇的に表現するためのカラヴァッジョの演出でした。 番組では撮影監督のヴィットリオ・ストラーロ氏にインタビューを行いました。 「地獄の黙示録」や「ラストエンペラー」等を手掛けた世界的な撮影監督で、光と闇の効果を知り尽くすプロフェッショナルです。ストラーロ氏は20代の頃、《聖マタイの召命》と出会い、以来この作品の魅力に取りつかれたと言います。そんな彼の自宅には作品のレプリカが飾られています。 カラヴァッジョの新しさ、それは全体ではなくある部分にだけ光を当てることでした。 例えばある場面で全体を照らす光を使うとします。その時に表せる光の意味は「調和」だといいます。 しかし「対立」や「対比」というものを表したい時は、カラヴァッジョのようにどこか一か所を選び、そこにだけ光を当てるのです。 彼はそんな光と闇の効果を400年前に発見していたのです。 ストラーロ氏のいる映画の世界では、このような方法が取られたのはわずか100年前の事と言います。 400年も前にカラヴァッジョはまるで映画監督のような画面を作っていたのです。 この絵には更に革新的だった点があります。それは庶民たちを主人公に据えている事です。 マタイは徴税の仕事をしていましたが、徴税人は卑しい身分とされてきました。 そこに神の光が当たる事で、彼らのような人たちも救済されるべきだと表現したのです。 <聖マタイはこの中の誰⁈> ではこの《聖マタイの召命》の中で聖マタイは誰の事を指しているのでしょう。実はこれには2つの説が唱えられています。 こちらの髭の男性が聖マタイだという説と、こちらの下を向いている男性だという説で、カギになってくるのが髭の男性の左手の仕草の解釈です。 「髭の男性=聖マタイ」の説と考える人は、この左手を自分に向けていると考えます。つまり指をさしながら「え、俺?!」と言っているのです。 また同じ聖堂に描かれた《聖マタイの霊感》と《聖マタイの殉教》にも髭を生やした男性が描かれている事からも、「髭の男性=聖マタイ」と考える人が多いのです。 一方「下を向いている男性=聖マタイ」と考える人は、この手が男性に向けられていると考えるのです。つまり、男性を指さしながら「え、彼?!」と言っているのです。キリストの言葉を聞いて顔を上げる、まさにその直前の若きマタイを描いているというのです。 どちらだと? 【今日のLifeHack:どんな人も自分の記憶が失われていることに不満を抱くが、判断の欠如について不満を抱くものはない、ラ・ロシュフーコー】 <カラヴァッジョ 《聖マタイの召命》> <ローマの「サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会」> <『聖マタイ三部作』> <《左側にあるのが聖マタイの召命》> <聖マタイは誰の事を指しているのでしょう> <髭の男性が聖マタイだという説> <下を向いている男性だという説> <男性を指さしながら「え、彼?!」と、キリストの言葉を聞いて顔を上げるその直前のマタイ説> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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