今が生死

2019/03/20(水)22:15

芥川賞受賞作「1R1分34秒」を読んだ

読書(263)

「ニムロッド」と同時に芥川賞を受賞した「1R1分34秒」(1ラウド1分34秒)を読んだ。才能のない負けてばかりいる21歳のプロボクサーの物語である。対戦相手のこと、アルバイトのこと、ガールフレンドのこと、トレーニングや練習の厳しさが書かれており、途中からトレーナーがウメキチに代わり、二人で次の対戦に向けて準備していくが7kg位減量しなければならず大変な難行をして試合に臨む様子がよく分かった。絶食中で飢餓感の中で試合をあと3日後に控えた夜「今度こそ1ラウンド1分34秒でTKOで勝つ」ことを夢みて終わっている。 ニムロッドもそうだったがぐいぐいひきつけられて読み終わって感銘を受けるような作品ではなかった。芥川賞といえば小説家の登竜門で優れた作品に与えられる賞である。作者は血のにじむような気持で必死に書いたものだと思うが読者には伝わってこない。小説家を目指す方々は選考委員の宮本輝さんが言っているように、もっと人間とか人生というものに目を向けて自分はどう生きたいのか他者に対して何ができるのかを追及してもらいたいと思う。「ニムロッド」も「1R1分34秒」も人生の深みが感じられなかった。次作ではもっと人生の深みを見つめた作品を書いて下さることを期待する。

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