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テーマ:結婚(618)
カテゴリ:読書
パンジーの寄せ植え
小説「花と龍」は明治末期から大正、昭和にかけて北九州の若松市を舞台に展開される沖仲仕の縄張り争いに絡む暴力沙汰や恋愛がからむ任侠物語である。作者の火野葦平はこの物語の主人公として実名で登場している沖仲仕の親分玉井金五郎の息子で小説中にやはり実名で玉井勝則として登場している実録小説でその元になっているのは克明に記録されていた玉井金五郎の日記である。 勝則は早稲田大学を卒業後若松に帰り親の後を継ぐべく沖仲仕として働いていたが芸妓の光丸を好きになり光丸のお腹の中には赤ちゃんがいる関係になっていた。時に勝則25歳、光丸20歳であった。所が勝則には金五郎がずっと前からお世話になってきた大場親分の口利きで藤本組の親分藤本喜八郎の娘絹子との縁談が調って結婚式の日にちを決めるだけになっていた。光丸の方も慶応大学生の辻本要之助の許嫁になっていて仲人も決まり式を挙げるばかりになっていた。勝則は藤本組との結婚を断れば大場親分の顔をつぶすことになり、光丸には結婚が決まっている相手がいるとのことで凄い苦渋の末に諦めることにして東京に逃れて早稲田時代の仲間と交流を深めていたが若松の祭りの時に帰ってきて光丸と出会い学生時代の仲間の協力で座敷牢に入れられていたみたいの光丸を博多に脱出させそこに勝則も合流して隠れて博多で暮らすことになった。大場親分の顔をつぶし藤本親分に不義理をし、光丸の親代わりの辻本夫婦をカンカンに怒らせた。金五郎も絶対許されることではないと息子にびんたを食らわし刀を抜いたりしたが結局許すことになった。そこで金五郎が藤本喜八郎の所に息子の不始末についてお詫びに行った。散々罵られ蹴飛ばされることを覚悟していたが以外にも藤本は「若い者にはかないませんね。実はうちの絹子にも好きな男がいたみたいですからお相子ですよ」と許してくれた。金五郎にはそれが嘘であることは分かっていた。娘さんも勝則との結婚を心待ちにしていたのでさぞかし無念で娘をどれほど不憫に思っていたか知れないが勝則が光丸の方に行ってしまったことは仕方のないこととして金五郎、および勝則を許してくれたのである。そしてその許し方が「残念ですが仕方ないです」ではなく「うちの娘にも男がいたのです」と金五郎に配慮してくれた藤本喜八郎の度量の大きさに驚嘆した。こんな人間がいたのかと感動しわが身がいかに小さいかを思った。素質は生まれつきでどうすることも出来ないことが多いが、そんな人物もいたのかと思い少しでも近づきたいと思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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