今が生死

2020/05/04(月)23:07

親から子への遺産は心の遺産がよいー「花と龍」より

感動したこと(167)

「花と龍」は作者火野葦平の父玉井金五郎と母マンの生涯を描いた波乱万丈の痛快物語である。作者が「あとがき」や「解説」の中で書いているがかねてから父親の生き様について書いてみたいと思っていたので最後の行を書き終えた時には涙が出たとのことで全魂込めて書かれた小説と思われる。金五郎が命懸けで築いた沖仲仕の会社玉井組は昭和17年の国家総動員法で没収されてしまい金五郎は子供達に何の財産も残さなかった。しかし明治39年2月に玉井組という請負業を開業した記念に精工舎製の柱時計を当時としてはかなり高額の4円70銭で購入したが金五郎が72歳で脳卒中で亡くなった後もずっと正確な時を刻み、大きな音で時間を知らせてくれているとのことでこれが父親の形見であり、その生き方と「正しいものは最後には勝つ」という口癖が息子勝則(作者)にとっては銭金に変えられない大きな遺産と述べている。大金を遺産として残される場合もあるが多くはそれを食いつぶして子供は大成しないことが多い。金五郎は戦時中で子供に財産を残すということが出来なかった面もあったかもしれないが子供は自分で人生を切り開いて行くものとの考えからわざと遺産を残さなかった面もあると思われる。お金の遺産はなかったが大きな心の遺産を頂いて感謝の涙にくれたのだと思う。親から子への遺産は心の遺産の方がいいように思われた。

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