今が生死

2023/01/18(水)21:39

「死とは全てのことの中断である」森鴎外の最期の言葉

テレビ番組(192)

この寒さで殆どすべての植物が枯れてなくなっても厳然と緑を保って生き続けている彼岸花の葉の時期-秋の彼岸の頃には真っ赤な彼岸花を咲かせる。(1/16撮影) 英雄たちの選択「森鷗外」をみた。鴎外は島根県津和野町に1862年2月に生まれ、お家のために教育ママ、教育祖母に幼少時から徹底的に仕込まれ、幸いそれについていける才能と忍耐力があり、成績優秀で飛び級してさらに2歳年齢を偽り12歳で東大医学部に合格して落第者が半数近くいる中で優秀な成績で卒業して陸軍省に入り衛生学を学ぶために5年間ドイツ留学し、最後は軍医総監医務局長という最高の地位についた。 ドイツ留学時代のことを書いた「舞姫」を皮切りに「イタ・セクスアリス」「山椒大夫」「高瀬舟」など数多くの小説を書き、小説家としても大成功した人だ。 60歳で結核から腎臓を悪くして亡くなっているが、その時の辞世の言葉が上記「死とはすべてのことの中断である」だったとのことで、墓には出生地と実名 森 林太郎だけで今までの経歴など書くなと言われた。その真意については専門家は薩長支配階級に対する反発心とか、お家のために一生生かされてきて自由がなかったことに対する反省など色々言われている。 もともと学業優秀だっただけに自尊心が強くドイツ留学時代も同じドイツ留学生との間で軋轢があり、小倉に左遷された時も上層部を恨んでいた。評論を読むと死の直前まで、家族を含め彼の周りの人達は皆お馬鹿さんだと心の中では軽蔑していたのではないかと言われている。 それらの情報を踏まえて「死は全てのことの中断である」の意味を改めて考えると、私は自尊心の塊で、思いあがっていた鴎外の一時的な休戦宣言ではないのかと思った。 番組の中で「沈黙の塔」という作品の紹介があった。私は無料図書館「青空文庫」で読ませていただいた。友人から教えてもらったのだが凄い図書館があったものだと驚嘆している。方法は簡単で、まず検索で「青空文庫」と入れて、その画面を出し、人名索引、書名索引のどちらかを選んでその書名「沈黙の塔」を探してクリックすればすぐ読める。プリントアウトもできるのである。 本屋に行ったり図書館に行かなくて居ながらにして無料で自分の読みたい本が読めるのである。ボランティアが運営しているとのことだが凄いことを始めたものだと思った。 「沈黙の塔」の内容は自然主義文学や社会主義文学を読む人は捕らえられて沈黙の塔の中で殺されるがそれは不法であり、馬鹿げたことであるという内容である。 この作品を書く前に明治天皇暗殺計画があったとして幸徳秋水ら24名が死刑判決され、判決から6日後12名、7日後1名が死刑執行された。 無政府主義者や社会主義者や博愛主義者を根絶するために当時の政府が捏造した事件と言われているが、その事件を批判した小説が「沈黙の塔」だった。鴎外は当時陸軍省の軍医としてトップの立場にあり、政府の内情も知っていたはずだが、何も出来ずにむざむざと13名を処刑させてしまった。 政府に対し発言することもできたかもしれないのにその流れをせき止めることができず、忸怩たる思いだったと思う。それを小説に書き、わずかながらの罪滅ぼしをしたのかもしれない。 外から見ると軍医としても小説家としても最高位に上った人だが、死という最後の瞬間を迎え、成就できたこともあるが、何も出来なかったこともあり、無念ではあるが、一度ご破算にしようという気持ちだったのではないかと思う。ご冥福を祈るばかりだ。

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