お酒は嗜む程度には飲みますが、こういう酒器でいただいたことはありません。
『可杯(べくはい)』というものがある。それは、盃の一種で「べくさかずき」ともいう。
この杯は、注がれたお酒を飲み干してしまうまで下に置くことができないという厄介なものです。
なぜそれを『可杯(べくはい)』というのかということですが、 <<漢文で「可」の字は「可二○○○○一」(一、二は返り点)のように、常に句の上に来て、決して下に置かない。このことから、飲み乾さなければ決して下に置くことができない盃を『可杯(べくはい)』という>> と、そのような名前の謂れがありました。
いろいろ調べていると、可杯というものは、かつて全国各地にあったようです。
しかしいつしかほとんど見られなくなり廃れて行きました。これを残念に思った『司牡丹』酒造の先代社長が、ある時このお面の可杯の型を見つけ、商品化を思い立って1976年に復活させたという。
この商品が好評を博し、またたく間に高知県全域に知れわたることになったのだという。
それが面白いというので、高知(土佐)のお座敷遊びに使われる酒器になったということです。
イメージ的には ”お酒のみのお国” という土地柄ですから、大いに納得してはいるのですが、それにしても罪なお座敷遊び、こんな席に同席するようなことになるととても困ったことになりそうです。
一方でそれを大いに喜んでいる御仁も数多いらっしゃることでしょう。
可杯の形状は、円錐状に杯の底が尖っていたり、穴があいていたり、そのままではお酒がこぼれてしまう形をしています。一般的な杯に穴を開けたシンプルなものから、人や動物の姿をモチーフにしたものなどデザインは様々です。
今後もお酒は嗜む程度で楽しみたいとは思っておりますが、この『可杯(べくはい)』のような酒器で飲むような飲み席に参加することは無さそうですし、この杯でお酒を戴くことはきっとないと思っています。