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いなかの猫の天邪鬼部屋

第34話

OnAir~シーズン2・第34話~


#アパート、ヨンウンの部屋

(ギョンミンとヨンウン。ベッドの前に立ったヨンウン、ベッドを見て感情がこみ上げて来る。)

ギョンミン : もっと大きいのはこの次買ってやるよ。...引越ししたら。

ヨンウン : (涙を溜める)...いつ買ったの..?

ギョンミン : 時間がなくて...お義母さんに頼んだんだ。...そっち方面は俺より専門家だからな。

ヨンウン : (にっこりと笑う)...(ギョンミンを見る)...ありがとう...

ギョンミン : (微笑む) 約束したじゃないか。...俺がまた買ってやるって...

ヨンウン : 私は忘れてたのに....(涙を溜めたままほほ笑み)


#月火ドラマ If.. 初放映日、ヨンウンの仕事部屋

(TVの前に座ったヨンウン。ミジュ、果物を持って来る。)

ミジュ : 先生..忙しくないですか?シナリオが滞っていると、監督が急き立てたでしょう?

ヨンウン : (TVに視線固定) 大丈夫よ。

ミジュ : (低く独り言) それにしても...明日世界の終末が来てもあんなふうなのかしら...。うっ!羨ましい...


#If.. スタジオ

(TVの前に円になって座ったスタッフ...。ギョンミン、淡々と見守る。)


#翌日、撮影場

(オソク、ギョンミンに近付く。)

オソク : あの...

ギョンミン : 何だ....?

オソク : 初回放送の視聴率です...

ギョンミン : (見る) ??...

オソク : (ギョンミンの様子をうかがい、額を掻く) ...8% ...です...

ギョンミン : (モニターに視線をやって) そうか...分かった。


#局長室

(デスクの前にギョンミン、手を後ろに組んで立っている。)

カン局長 : 8%だと?新年初ドラマだぞ。3社同時に始まって、初放映から視聴者を皆奪われるとは...どうしたらいいんだ?

ギョンミン : ....

カン局長 : 何が問題なんだ?

ギョンミン : このドラマは主題がちょっと重く見えると思うんです。新年初ドラマは明るくなければならないというのが定石じゃないでしょうか?

カン局長 : (ため息)...私のミスだ。...3月頃に編成すべきだった....

ギョンミン : ....

カン局長 : どうにもしようがない...。もう放映は始まったんだから。分かった。行け。

(ギョンミン、目礼して出る。)


#PD室

(ギョンミン、机に座っている。片手に顎を乗せて考え込んでいる。)

(セア、入って来る。)

セア : あの..監督..

ギョンミン : (振り返る) ああ、ユン作家。いついらしたんですか?

セア : たった今です...(もじもじする)

ギョンミン : (椅子を引いてやる) お座りください.....どうされたんですか?

セア : (座る,目を上げる事が出来ない。) 申し訳ありません...視聴率が...

ギョンミン : (セアを見る) ......(ため息) それでいらっしゃったんですか?

セア : (すまない)..はい...

ギョンミン : ユン作家の責任ではありません。むしろ俺の責任ですよ。作家の手を離れたシナリオは監督の持ち分です。それから、8%も悪くはありません。主題がちょっと重く見えるのに 8%なら、それなりに悪くないんです。新年初ドラマだし..

セア : 初めはこんなコンセプトを取るつもりじゃなかったんです...

ギョンミン : それはユン作家が自分を責める事じゃありません。やはりそこまで考えられなかった俺のミスが大きいんですよ。

セア : 初めてのドラマだからと考える事は出来ません。...それで...

ギョンミン : え?

セア : シナリオの修正が必要なら...

ギョンミン : (セアを見る)....

セア : 全部直すという事ではないんです。合間合間の小さなエピソードだけでも ....

ギョンミン : (ため息) いいえ.. そういう事はしないで下さい。そういう物を生半可に放り込むと、かえっておかしく見えます。今のままでいいです。流れもいいし、脇に入れたエピソードいいし。中途半端にいじったら汚なくなると思います。

セア : ....

ギョンミン : 一つだけ言っておきます。他のドラマ見ていると、他の作家たちの長所が羨ましくなる事があり得ます。勉強するという意味では悪くないんですが...。他の人がするのと同じようにしてはいけません。自分の色を持って下さい。理論ではよく分かる話ですが、実際には実践しにくい部分です。動揺せずに、ユン作家だけの長所を捜して下さい。

セア : (ギョンミンを見て唇を噛む) ....ありがとうございます。今日も私を教えるんですね..

ギョンミン : (にっこりと笑う) 申し訳ありません。癖みたいです。おかしな話ですが、ユン作家を見ていると、やたらと何かを話してやりたくなるんですよ。多分...局長との関係のせいなのか...

セア : (ギョンミンを見る)?...御存知だったんですか?

ギョンミン : はい...初めからそう言われていました。よく手伝ってやれと。それでユン作家には厳しくしたかもしれません、仕事関係以上に...。許して下さい。妹みたいな気持ちだったんです。

セア : (ジーンとする) そうだったんですね...

ギョンミン : (穏やかに見る).....


#2月中旬、ヨンウンの仕事部屋

(ヨンウン、ノートPCの前に座って熱心に何かを打つ。ミジュ、ジュースを持って来る。)

ミジュ : (ノートPCを見る) 何ですか?シナリオを書かれているんじゃなかったんですか?

ヨンウン : (モニターに集中する) うん...こういう物があって...

ミジュ : (モニターをよく見る) これは何です?視聴者掲示板...(まじまじと見る) 先生、これは私たちのドラマの掲示板ではないですけど?

ヨンウン : 分かってる....

ミジュ : (また見る) これ ...If...掲示板じゃないですか...?

ヨンウン : うん...

ミジュ : 何をされているんですか?

ヨンウン : 見て分からない?視聴所感を書いてるんじゃないの。

ミジュ : (呆れる) まったく...暇ですね。こういうのはノPDにも分かるんじゃないですか?

ヨンウン : あなたさえ黙ってれば誰も分からないわよ。

ミジュ : 実名掲示板なのに...

ヨンウン : 分かってるわよ。だからあなたの名前で加入したの。

ミジュ : え?そんな・・・勝手に私の名前を盗用したんですか?それはないですよ~。

ヨンウン : それじゃ私がソ・ヨンウンだと明かすわけ?誰か知り合いでも見たら...どうするのよ?

ミジュ : だからって私に断りもなく ...これは..その ..とにかく詐欺になりますよ。

ヨンウン : 詐欺とは何...それじゃ告訴でもする?

ミジュ : (ぐずぐず言う) まったく..これは権力者の横暴だわ.....。(自分の机に行って) 後でイ監督に全部言います。先生が私の名前で掲示板に書き物をしたって..

ヨンウン : ちょっと!!!あんた、何する気よ!!!


#If...撮影場昼休み

(スタッフ、円になって座って食事中。)

コーディネーター : このドラマは、視聴率はアレだけど.... 廃人ドラマだと言われているのを御存知ですか?

男 : たまに視聴者掲示板を見るけど、そこの文を見ると気持ちいいですよね。

オソク : そもそも掲示板には大体良い言葉だけを上げるから。だけど終映の頃には....

コーディネーター : 終映の頃に批判が多いでしょう?...なぜだか分からないけど。ずっと良く言ってくれるわけにはいかないのかな...

男 : いい事ばかり言って生きるのは退屈じゃないか。けなすような事も言っていないと...

ギョンミン : .....

オソク : ただそれだけではないと思います。単純な非難ではない文も多いし...

ギョンミン : 初盤や、中盤までに上って来る褒め言葉は...その中に期待が盛られているからだ。もっと綺麗に、もっと感動的に描いて欲しいから、力を与えたいんだろうな...

コーディネーター : それでは後半部の非難は?

ギョンミン : それはもう終わって行くから...終わっていればどんな期待も無意味なのが分かっているからじゃないか?誰にでも願っている結末はあるけれど...その結末は皆同じではないという事じゃないか?そうなると、必ず結末に満足出来ない視聴者が出るわけで...。それに、同じ考えを持った人もいるから、対話を交わすうちに自分の考えが妥当に思われたりする...。そんな自分の合理化が時には...極端な表現をためらわないほどの勇気を与えたりもするし...

コーディネーター : このドラマもそうですね、そうすると。

ギョンミン : インターネット時代のドラマは、どのドラマでもそうじゃないかな?

オソク : 事実...昨日上って来た視聴所感の中に、推薦が多いから見たのがあるけど...本当によく書かれていて...

コーディネーター : 助監督も見ましたか?私もですよ。...あれは..チャン・ミヒャンだったかチャン・ミジュだったか..そんな名前の人が書いてたけど...

ギョンミン : ...???...

オソク : ああ....そんな名前だった...。チャン・ミジュ....チャン・ミジュ?どこかで聞いた名前なんだけど....

ギョンミン :!!!..... (口元を覆う)...


#PD室、夕方

(ギョンミン、机でモニターを見る。)

ギョンミン : (しばらく見て、苦笑する) まったくもう...


#ヨンウンの仕事部屋、夜

(キーを鳴らす音。ギョンミンが入って来る。)

ギョンミン : ただいま。

ヨンウン : (振り返る) お帰りなさい。

ミジュ : お帰りなさい、監督。

ギョンミン : (ミジュを見て) お疲れでしょう?

ミジュ : いいえ。

ヨンウン : 私、まだもうちょっと作業しなくちゃ...。待っててくれる?

ギョンミン : ああ....

ミジュ : 私はもう帰ってもいいでしょう?先生...

ヨンウン : ええ。お疲れ様。

ミジュ : また明日。お疲れ様です。(ミジュ、出る)

ギョンミン : (玄関を見てからヨンウンに近付く) あとどれだけだ?

ヨンウン : (ずっと作業中) うん.....1時間?

ギョンミン : (後からヨンウンの肩を抱いて) 疲れてないか?食事は抜かずにちゃんと食べたか?

ヨンウン : (ずっと作業中。にっこりと笑う) 食事のチェックを薬のチェックみたいにするんだから...。食べたわ。あなたはお腹がすいているでしょう?先に何かちょっと食べる?

ギョンミン : いや...我慢出来る...。(モニターを見てから)..ところで...君は水底支援までしてくれるのか?

ヨンウン : うん....?何の水?

ギョンミン : 痛々しく見えるか?(ため息) まだ俺は、君には頼りなさが残っているように見えるんだな...

ヨンウン : (振り返る) どういう事?誰が頼りないって...?

ギョンミン : (ヨンウンを見て苦々しげに笑う) どうして俺は、いつまでもこういう事に執着するんだろう?....君にとって本当に頼もしい人になりたいのに....

ヨンウン : (考える).... どういう事なのか分からないわ。どうしてそんな事を言うの?

ギョンミン : 視聴者掲示板。

ヨンウン : (ドキッ!目が丸くなる) どうして分かったの?...(思い浮かべる) ミジュが話したな?あいつめ... 言わないって言ったのに~。

ギョンミン : (にっこりと笑う) そこにミジュさんの名前がある事は聞いたけど。...そりゃ分かるよ。

ヨンウン : どうして分かるの?

ギョンミン : 見たら分からないか?それが君の文なのかミジュさんの文なのか...俺は馬鹿か?

ヨンウン : (うつむいて舌を出す) それで.... また.. プライドが傷付いた....?

ギョンミン : (ため息) ちょっとは傷付いたけど....。こんな事で傷付くには俺のプライドはあまりにも高品格だからな。

ヨンウン : (安心して笑う) だけど、思ってもいない事を書いたんじゃないのよ。ドラマを見て感じた事を書いたんだから...。私も視聴者なんだから、書いてもいいんじゃない?

ギョンミン : 誰がダメだと言った?シナリオを書くのが忙しいのに気を使ってくれて、感・謝・してる。

ヨンウン : (笑ってギョンミンにキス) 早く終わらせて、帰りましょう。

ギョンミン : (笑ってヨンウンにキス) ああ。帰ろう。





(原作出処:sonkhj1116さんのブログ



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