2586363 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

いなかの猫の天邪鬼部屋

第30話

OnAir~シーズン3・第30話~


#セアのアパート居間

(ソファ-に座った二人、沈黙の中、眺める。)

セア : ...結論は?

サンウ : ...........

セア : .....まだ考えないとならない?

サンウ : .....頭の中に結論は出たけど....

セア : ...そう。

サンウ : ................

セア : 胸が受け入れない....そういう事?

サンウ : (苦笑)...........

セア : ...........(苦笑)

サンウ : (小さくため息をつく) ....少し会わないでいようか。

セア : 今までだって、そんなものだったわ。

サンウ : 何日かではダメだ。何ヶ月、あるいは何年......

セア : それじゃ、その間は何をするの?忘れるために何をすると...何が出来ると思うの?

サンウ : 食べて行かないとならないから、働いて、そうすれば....

セア : そしてまた屍みたいに生きるの?感情も意欲もないゾンビみたいに、自分を苦しめて、他人も苦しめながら?

サンウ : (目を閉じる).....どれだけ分かっているんだ...? 俺の事を....

セア : ...... 全部は分からないわ。だけど...見なくても分かる。感じられる.....

サンウ : .... 一度した事を、二度出来ない事はないだろう....?

セア : じゃあ.....私は?

サンウ : (見る)........

セア : 私はそれじゃ......どうすればいいの?私も死ぬ?

サンウ : (目を剥く) お前!...

セア : (苦笑) ...本当には死なないわ。私、そんなに純粋じゃないわ。.......死ななくても、多分あなたみたいに、死んだように生きるでしょうね....。生きるべき理由を忘れてしまったから.....。私を生かしているあなたを失ったのだから...

サンウ : (目を閉じてため息をつく)ただ......このままずっと行きたかった。....そして...君に少しの間、喜びだけを与えられたら....いつかは終わる幸せなら、今終わらせる方がいいと思う...

セア : この世に終わらない事はないのよ。どんな事でも終りがあると決まっている...

サンウ : ......

セア : どうせ終わる事なのに、どうしてわざわざ今終わらせるの?辛い思いをしながら。私はそれは馬鹿らしいと思うわ。

サンウ : それは.. もっと辛くなるから...。そうなったらもっと大変じゃないか。傷がもっと深くなるのだから...

セア : 前に言ったでしょう?こんなふうに辛いものも、あんなふうに辛いのも、全く同じだから、それなら一生懸命愛して辛くなる方がいい...

サンウ : (見る。耐えられなくなる).........

セア : (淡々とした目で見る)...うん?...

サンウ : (ため息をつく) 君を....どうすればいいんだ?

セア : ....(見て、目元に笑い滲む)..

サンウ : (苦笑) ...俺は、俺の寿命の分だけ生きるんだ。ゲノムプロジェクトなど期待しない。与えられた寿命の分だけ生きていればいい。

セア : (苦笑) 少し大胆になれないの?細くて長くよりも、太くて短く。花火のように愛して華々しく散る。

サンウ : (笑う) お前も年をとってみろ。命が恋しくなるから。

セア : (笑う) .........(見る) もう他に言う事はないの?別れて誇りを持って生きる自信があるのなら、その時また考えるわ。あなたも私も、二人とも自信が生じる時...

サンウ : (見る) ...........何かが起こる前に、その日が早く来ればいい...

セア : ......弱虫。

サンウ : そうだな.....。お前は....女戦士なのか?...どうしてそんなに逞しいんだ?

セア : (穏かな目) 他の事は怖くないわ。.....あなたが私を嫌いにならないか心配で、二度と会いたくなくならないか、それだけが怖かった...

サンウ : (じいんと熱くなる).....弱虫ではないけど馬鹿だな...

セア : ......ええ。そもそも馬鹿は臆病な気持ちがないんですって。頭が空っぽだから....

(サンウ、詰ったような目で見る。セア、手を出す。サンウ、見て、その手を取り、引き寄せて抱く。じいんと熱くなった目で眺めて口付ける..)


#寝室

(サンウの横に寝ていたセア、急に起きる。)

サンウ : (見る) どうした?

セア : ....ちょっと待ってて。

(セア、起きて電話を手に取る。)

セア : セアです.... まだ何も言わない方がいいでしょう.......ドラマがちゃんと放送されるようにしていただかないと.... 私、とことんやります.....その次の事はその時になってから考えます....申し訳ありません。

(セア、電話を切る。サンウ、起きてセアを眺め、静かにしている....)

セア : (目をきらめかせながら見る)起きて。手伝ってちょうだい。

サンウ : ...何を?

(セア、たんすを開く。大きい鞄を取り出す。服を取り出して鞄に詰める。小物を出す。)

サンウ : ....何をしているんだ?

セア : (忙しく手を動かして) 当分は大丈夫だけど、いつどうなるか分からないから。(見る) あなたの所に引っ越さなくちゃ。

サンウ : 何??

セア : (手を休めてしばらく見る)......(微笑を湛えて) 寿命の分だけ生きたいんでしょ?その前にスリラー物を一編撮りましょう、私たち。

サンウ : (憂わしい目) 本当に.....それでいいのか..........

セア : (一方の口角を上げて笑う) 人生は本当に面白いわね。ユン・セアの人生にこんなスリルがあると誰が考えたかしら?

サンウ : (小さくため息をつく) お前は...この状況が面白いか?

セア : いいえ....。ただ面白いと思おうとしているのかもしれない....。(涙を浮かべる) 30年、閉じ込められて生きて来たわ。自由には償いが付いて来るから。それも愛を探す自由だったら。...覚悟はあるの。(見る) あなたには申し訳ないと思ってる。(苦笑) 甚だしく運がないのはユン・セアではなくチン・サンウだったのね、実は.....

サンウ : (じいんと熱くなる) そうだったのか....そんなに大変だったのか....?

セア : (シニカルに) 今まで楽して生きて来た代価よ。誰よりも多くを享受して暮したわ。他の人が一生掛かって享受するものと比較も出来ないくらい.... (頭を下げる。涙が落ちる)

(サンウ、そんなセアを見て心が痛い....)


# 数日後、ギョンミンとヨンウンのアパート、寝室

ヨンウン : (鏡台の椅子に座っている。振り返る)え?韓英グループ?(驚いて口を開ける)

ギョンミン : (見る) そうだってさ。

ヨンウン : それ ....作り話でしょう?間違いなんじゃ...?

ギョンミン : (ため息) どうも作り話じゃないようなんだ。チン代表は大変だな...

ヨンウン : 韓英と言えば、そのホテルの財閥でしょう?

ギョンミン : ああ....7年前にニューヨークに本社を移して余勢を駆って勝つ....。ユン作家はどうして一人でここにいるのか...

ヨンウン : それじゃ、家族はみんなニューヨークにいるの?

ギョンミン : 家族というのが、両親と彼女だけだとか。一人っ子だって聞いたけど。

ヨンウン : (顔をしかめる) しかも一人っ子...? 何て事かしら....

ギョンミン : チン代表が.....

ヨンウン : え?

ギョンミン : こんな事を言っていた。

ヨンウン : 何の話?

ギョンミン : 自分に許された幸せは瞬間のものだけだと......。その話をした時、彼の前の壁が全て崩れ落ちていた....。 胸の中に入れておいた話は一度もした事のない人だったのに...

ヨンウン : (涙を浮かべる) そうだったの.....。チン代表......どうするのかしら.....


#一週間後、ギョンミンとヨンウンアパート、居間

(ヨンウン、電話を受ける。)

ヨンウン : もしもし、セアさん?どこ?どれほど心配していたと思うの?

セア : どうしてですか?何かあったとでも思われていたんですか?

ヨンウン : (一息つく) 仕事はもう始まってるじゃないの.... どこにいるの?

セア : サンウさんの部屋です。当分の間、ここに一緒にいないとならないと思うんです。車も処分しました。

ヨンウン : (ため息) どうしてこんな事に....。 私に手伝える事はない?

セア : お願いしたい事があるんです...

ヨンウン : 何?言って。

セア : ここもいつ知られるか分からないんです。ソ先生が休まれている間、仕事部屋をちょっとお借り出来ないかと思って...

ヨンウン : え?仕事部屋?うん...そうね、私、しばらく仕事部屋に行く事はないわ。使って。気軽に使って。

セア : ありがとうございます、本当に....(感情が込み上げて来る)

ヨンウン : ....セアさん、私も苦しいわ.... 。二人、ただ平凡に愛すればいいのに...。(べそをかく) 苦しいわ、本当に...

セア : (声が震える) ありがとうございます...本当に.....


#大型書店

(セアとサンウ、手を取り合って入って来る。)

セア : あなたに見せたい絵があるの。

サンウ : 絵?俺は、絵はよく分からないんだけど。

セア : (見て笑う) 構わないわ。

(セア、画帳が陳列した書棚に行く。 " 19世紀名画集" を取り出す。何枚かめくりながら探す。しばらく絵を見て息を吐き出す。)

セア : これよ。

サンウ : これ?これが何か?

セア : よく見て。どんな感じ?何か独特じゃない?

サンウ : (首を斜めに傾ける) そうだな...見るほどに微かになって行くように見えるけど....?

セア : (微笑む) ....そうでしょう?それじゃ...(本を少し離れた所に置く) こうしたら、どう?

サンウ : 遠くから見る方がいいな。...それはスーラの絵だろ?その位は俺も分かるよ。グランド・ジャット島の日曜日の午後....

セア : 分かるわよね。それでいて分からないのは...

サンウ : あまりにも有名な絵だから...。だけど、この絵がどうして?

セア : (穏かな微笑みで見る)....この絵の中に瞬間と永遠の秘訣が隠されているの...

サンウ : (考える目) ....え?

セア : 近くで見ると、小さないくつかの点が乱れているように散らばっているように見えるのだけど、このいくつかの点が集まって世紀の名画を作っている。少しだけ離れて見ると分かるの。その美しさを....

サンウ : ..........

セア : あなたは私に与えられるのは瞬間の幸せだと言ったでしょう?だけど、その "瞬間"が集まれば "常に"になるのよ。この絵のいくつかの点のように。諦めないで、その "瞬間"を集めれば "永遠"になるという事よ....

サンウ : (解けない) ......

セア : シカゴにある美術館に行けば見られるのだけど...そのうち一緒に行きましょう...

サンウ : (涙を溜めたまま微笑む) ...そうだな...一緒に行こう.....






(原作出処:sonkhj1116さんのブログ





© Rakuten Group, Inc.