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inatoraの投資日記

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財務諸表の基本

業績見通しの修正に対する過小反応を利用した投資法(前編:行動ファイナンス的知見)

最近、カネの臭いがしない話ばかりだったので、久しぶりにそういう話も。

「業績見通しの修正に対して、市場参加者がどのように反応する傾向があるか?」について行動ファイナンス的知見から考察し、それを実際に利用した投資法で超過収益を上げる方法を考えます。

その行動ファイナンスですが、「市場参加者の意思決定は、新古典派経済学が想定する経済学的合理性からシステマティックに逸脱している」という点を一貫して主張しています。すなわち、「効率的市場仮説の否定」です。

今回は、そうした行動ファイナンス的知見の中でも「保守的バイアス」について取り上げたいと思います。それが「業績見通しの修正を利用した投資法」に繋がります。

業績見通しの修正に関する効率的市場仮説に基づいた主張は、「業績見通しの修正があった場合、市場参加者はその修正に基づいたファンダメンタル価値を即座にかつ正確に弾き出して取引をするので、ファンダメンタル価値への収束は瞬間的に行われ、超過収益を得る機会は存在しない」というものです。

これに対して行動ファイナンスでは、「業績見通しの修正があった場合、市場参加者は初期の段階ではその修正を十分に反応しない。このため、業績見通しの修正があった後でその株式を取引しても間に合うことが往々にしてある」というものです。

この「保守的バイアス」によって、業績修正に対して市場参加者は以下のように反応する可能性があることを示唆しています。

[図]

さらに、会社側が業績見通しの修正を行う際にもこの保守的バイアスがかかっている部分があり、最初の業績見通しがその企業のファンダメンタルを十分に反映しているとは限らず、むしろ、それに続く業績修正が同じ方向(上方修正ならば上方修正が、下方修正ならば下方修正が)に働く傾向があることも確認されています。



分かりやすく時間の流れを追う形で典型的な反応を考えたいと思います。

(1)第一四半期
最近は、日本でも四半期決算を採用する企業が増えました。最初のチャンスがここにあります。この第一四半期の業績が良く(悪く)、中間期および通期の見通しを上方修正(下方修正)したとき、市場参加者は会社側の予測に対して懐疑的であるのか、それに対して十分に反応しません。あるいは、第一四半期の業績が良かった(悪かった)にも関わらず、中間期や通期の見通しを変えない企業も存在し、そのような場合、なおのこと、市場参加者の反応は不十分である可能性が濃厚であるといえます。

(2)中間期
中間決算で業績を発表する際に、それまでの実績から業績見通しを修正することもあります。このときも、業績の見通しに関して市場参加者は十分にそれを反応しない場合があります。会社側も中間決算が良かった(悪かった)にも関わらず、通期の見通しを上方修正(下方修正)しない場合があり、そうしたケースでは市場参加者はさらに保守的バイアスを持つことになります。




このように、「保守的バイアス」を利用することで、業績の上方修正に対して十分に反応しなかった株式を買い付けることで、2度目・3度目の上方修正とそれに対する市場参加者の反応から利益を得ることが出来るということが可能であることを行動ファイナンスは示唆していますが、気をつけなければならない点もあります。

このような投資は基本的には、「イス取りゲーム」の性質を有しているという点です。業績の上方修正がファンダメンタルの改善を示唆している可能性が高いことは同意できるものの、だからといって本来のファンダメンタルに対して十分に高い安全性マージンを確保しているかというと全く別の話になります。

したがって、「割高な銘柄に対してこうした上方修正だけを頼りに投資することは、相変わらず危険である」ということです。行動ファイナンスの「保守的バイアス」を利用して効果的に利益を上げることが出来るためには、「保守的バイアスがうまく利用できる銘柄であること」が重要です。

「割高な銘柄」「市場で騒がれている人気銘柄」「イス取りゲームの中心となっている機関投資家が扱う銘柄」などでこうした「保守的バイアス」を利用した投資を行ったところで効果は薄いということです。十分な銘柄数でこれを行えばそれでも超過リターンを取れる可能性はあるものの、あまりやりたくない賭けだといえます。

そうではなく、「不人気銘柄」「直近において業績不振な銘柄」といった「最初から期待されていない銘柄」でこれをやることが大事かもしれません。

行動ファイナンスの保守的バイアスを扱っている本の中で最も実践的なものは、

「株式投資の新しい考え方」:ロバート・A・ハウゲン

だと思います。アメリカの事例ですが、「保守的バイアス」についての記述がかかれています。


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