inatoraの投資日記

2005/02/17(木)23:17

割安放置されている日本企業に対する黒船の襲来(中編:狙われ易き企業群)

企業買収は合理的な価値算出に基づいたものであれば(そうでないことも多いのだが)、手っ取り早く高い収益が得られるというメリットがあります。 資金力があり、かつ、買収意欲のある投資主体は割安な企業を独自の価値基準(合理的であるかどうかは別として)に照らし合わせた上で、良い案件を虎視眈々と狙っていることでしょう。 前回は、日本企業が経営の非効率性のために低い価格で放置されている銘柄があり、それを外国企業が買収する可能性が十分にありうるということを指摘しました。 また、実際に買収のターゲットにならないまでも、今年の株式市場において「M&A」というテーマがどこかで大きな話題になる可能性が高いことから、思惑先行で株価が上昇する可能性もありうることも指摘しました。 今回は「どのような企業が狙われやすいか?」について考えてみたいと思います。 1.割安であること まず、割安であることが重要であると思います。収益を上げることが本来の目的ですから、これは当然です。 かつてのアメリカのように、買収ブームの最終局面では人間の支配欲が先行し、採算を無視した「規模の拡大」だけを目的とするような買収を「シナジー効果」などとほざいて実施することもありますが、初期の頃は、やはり割安な企業が買収のターゲットになるかと思います。 (1)資産のバリュー 保有資産で見て割安である企業がまず最初に狙われることになるでしょう。それは将来の収益力に依存せず、不確実性が小さいからです。「時価総額<清算価値」「時価総額<ネットキャッシュ」「PBR<1」などの基準をクリアしている企業から最初の買収候補が探されると思います。 (2)買収のバリュー 資産のバリューで即座に超過収益が得られないとしても、買収後に得られる利益(キャッシュフロー)で投資資金がすぐに回収できれば買収妙味はあります。「キャップレート>20%」である企業は要チェックです。 (3)収益のバリュー 安定した利益(キャッシュフロー)を継続して稼ぎ出す企業がほどほどに割安であれば、配当性向を向上させることを狙った買収もあり得ます。PER<10(PCFR<10)でそれが安定的であれば有望かもしれません。成長の可能性もあればなお理想的です。 2.支配的株主になれる可能性 買収という行為を実施する以上、価値を実現するために「支配的株主になれる可能性」を重視します。ましてや「敵対的買収」場合、これは重要なキーとなります。 (1)その気になれば支配的株主になれる可能性があるか? 株式を50%強押さえることが出来れば、その企業の支配権は買収側に移ったも同然です。まずは、その可能性を考えます。「特定株比率<50%」であるかどうかを見てみましょう。「浮動株比率」も要チェックです。(四季報などに掲載されています。) (2)準支配的株主になれる可能性があるか? 完全な支配権を持たないまでも、33.3%強の株式を押さえれば経営に対してある程度の影響力を行使できます。「役員の選任」「監査役の選任」のほか、「特別決議否認権」を保有しています。「特定株比率<66.7%」であるかをチェックしてみましょう。「浮動株比率」も要チェックです。(四季報などに掲載されています。) (3)せめて筆頭株主になれる可能性があるか? 支配的株主や準支配的株主になれないまでも、せめて筆頭株主になれる可能性があるかを最後に見てみましょう。よほど株主利益を考えていない企業でない限り、筆頭株主の意向は無視できないでしょう。(もちろん、そういう株主軽視の企業も日本にはごまんとあるのもまた事実だということも付け加えておきます。) 「特定株比率+筆頭株主比率<100%」であるかどうかをチェックしてみてください。浮動株比率次第では、筆頭株主になれる可能性を秘めています。 逆に言うと、「特定株比率+筆頭株主比率>100%」である企業を買収するのは不可能だと考えるべきです。「買収妙味」という意味では考察の対象とはなりません。 しかし、当然ですが、買収が出来ないからといって魅力的な投資対象ではないと言っているわけではありませんのでその点はご了承下さい。「支配的株主になれる可能性」よりも「価値に対して割安であること」のほうが遥かに重要ですから。 日本の場合、PBR1倍割れの銘柄が多数ありますから、「財務の健全性」「資産の健全性」であることをまず精査した上で、「買収の対象になり得るか?」ということを考えればいいのではないかと思います。「収益でも割安」であればなお完璧だと思います。 上記の条件を満たす企業であれば、買収のターゲットになる可能性は高いですし、ターゲットにならないまでも思惑先行で株価が上昇する可能性はあります。 また、そのような安全性マージンの高い企業であれば、たとえ「買収的思惑」が来なくても価値に収束するまで待つこともできるかと思います。なんと言っても「資産バリューは忍耐」ですから。 次回は、「敵対的買収に対する経営者の対抗策」についてです。 今日の言葉: 「『M&A』というテーマは、実際に買収されるされないに関わらず、割安な企業の価値が見直されるよい機会になり得る。」 参考:株主の権利(詳細は商法関連のHPをご覧ください) ・株主提案権:1% ・帳簿閲覧権:3% ・特別決議否決権:33.3%強 ・普通決議支配権:50%強 ・特別決議支配権:66.7%強 ・帳簿閲覧拒否権:97%強 ・株主提案拒否権:99%強

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