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今回は初めて証券投資とは違う話題をしてみようと思います。「ゲーム理論批判」についてです。
サラリーマン向けの「自己啓発著書」(「自己満足著書の間違いじゃないの?」と思うことしばしば)が多数出版されているのは今に始まったことではありませんが、その中で「ゲーム理論」についての本が目に付いたのでそれについて書いてみようと思います(「なんでこんな本がイナゴの大群のように出てくるんだろう?」と思うことしばしば)。 ちなみに、「ゲーム理論」とは以下のようなものです。(東京大学経済学部神取ゼミのゲーム理論の解説から。学生には申し訳ないですが、「なんかくだらないことやってるねえ!」という感じはします。) ------------------------------ ゲーム理論はフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンによって、 社会科学の基礎となる数学理論を目指して1940年代に始められた比較的若い学問分野です。社会の中で利害が必ずしも一致しない人々がぶつかりあうと、相手の出方を読む必要がでてきますが、相手もまたこちらの出方をうががっているわけで、話しは単純な数学の最適化理論や確率論の応用を越えたもっと深いものになります。こうした状況を分析するのがゲーム理論なのです。 ゲーム理論の歴史は紆余曲折を経ていますが、1980年代になってかなりの一般性を持った統一理論が形成され、これが最近の経済理論の進展の大きな原動力になっています。 経済理論が相手の出方を読む必要の無い完全競争市場の分析に終始してきた時代は終わりをつげて、現在ではミクロ・マクロ理論のみならず、金融・財政・国際経済・比較制度分析・産業組織・労働・経営・経済史などの広い分野でゲーム理論を使った活発な分析がおこなわれ、経済分析の間口を大きく広げています。 ------------------------------ ゲーム理論の研究者に言わせれば、「互いに利害が一致しないエージェントが相手の出方を伺った上で最適な意思決定をしなければいけないという局面において有用な理論である」と「主張」しています(「妄想の間違いじゃないの?」と思うことしばしば)。 さらに、そのゲーム理論の研究者によると、経済政策・経営政策・証券投資・政治政策・財政政策などのほか、ビジネスの世界でよく行われる交渉に関することも含めて、ゲーム理論での応用として考えることが出来るとしています(「嘘つけ!そんなこと考えたこともないくせに!」と思うことしばしば。) そして、サラリーマン向けへの著書として「ゲーム理論」の本が出てきたのは、専ら「営業における交渉力」というテーマに沿っているからであり、交渉力向上のためにはゲーム理論をある程度は知っておく必要があり、それを身につけることによってスキルアップにも繋がるという流れから来ているようです。(ゲーム理論が示唆する結果どおりに行動すると、確実に交渉は破談すると思うけどなあ。) それに対する私のメッセージは以下のようなものです。 「そんな三流経済学者のたわ言に騙されちゃあいけない。現実の世界の理解に関して言えば、そんな三流経済学者よりもあなた達サラリーマンのほうがよく分かっているはずだ。」 批判の矛先は、ゲーム理論が想定する「仮定」に関する部分なのですが、古典的なゲーム理論は全て「経済学的合理性」をベースとしています。これは、「期待効用最大化」とか「合理的期待形成仮説」と呼ばれるものです。さらに、専門的には「フォン・ノイマン=モルゲンシュテイン型の効用関数を持つエージェント」ということになります。 既存のゲーム理論では「相手の出方を伺った上で意思決定する」といっても、その相手の行動規範(そして自分自身の行動規範)は予め「仮定」されているのです。 すなわち、「経済学的合理性を兼ね備えたエージェントだけを想定して、それらの人たちが最適な意思決定を行えばどうなるのか?」という演繹的な理論体系に過ぎず、それが現実の世界を語っているという話には決してならないのですが、数理ファイナンス学者と同様に、ゲーム理論の研究者もそのあたりを掃き違えています。 「単なる仮定に過ぎないものが、あたかも、実証的裏づけを持った法則となる。」 経済学の世界では極めてありがちな世界です。彼ら自身がこのあたりを分かっていないのです。(いや。正確にはわかっているんでしょうけど、「理論的な美しさの追求」のために認めたくないのかもしれません。) 次回は、ゲーム理論のそうした「仮定」を現実の世界に持ち込むとどうなるかを、「最後通牒ゲーム」という有名なケーススタディと共に紹介します。 今日の言葉: 「ゲーム理論が示唆する交渉術を実際に適用すると、貴方の営業成績は確実に落ちる。それは貴方があまりにも利己的な人間になり、相手に嫌われるからである。」 P.S. 数理ファイナンス批判のところでも言いましたが、ゲーム理論も含めて「既存の経済学なんてそんなもの」というのがご理解いただければいいのではないかと思います。 明日のケーススタディーは、既存のゲーム理論には限界があるというのを知る上で非常に面白いと思います。 あっ。でも私自身が極度に「経済学者嫌い」というバイアスに陥っているのも事実ですので、そのあたりをよろしく割り引いていただければと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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