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inatoraの投資日記

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inatora2

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2005年09月14日
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ポピュラーな投資指標としてPER(株価収益率)とPBR(株価簿価倍率)がありますが、私はPERよりもPBRのほうが好きです。

そのせいもあって、どうも私の得意な投資手法が「資産バリュー投資(企業が現在保有している純資産に注目した投資)」ということになっているようですので、その点について(皆様がなされている誤解や私自身の反省も含めて)改めて考えてみたいと思います。

そのためには、バリュエーション(企業評価)において資産と収益(もしくは、成長)がどのような形で加味されるべきなのかを復習しておかなければならないと思います。

以前から散々述べていますが、ある投資案件の価値とは、その投資案件の全存続期間から得られる収益を現在の価値に引き直したものです。すなわち、価値をV、収益をE(i)、割引率をR、存続期間をN、事業の清算時に得られる純資産をB(N)としたとき、

V=E(1)÷(1+R)+E(2)÷(1+R)^2+・・・+[E(N)+B(N)]÷(1+R)^N

となります。

そして、厄介なことに、上記におけるパラメータを正確に推定することは困難であるということです。ただ、正確に推定することが困難であっても、自分なりにいくつかの仮定を置くことで価値を算定し、その仮定の妥当性を検証することが重要であるのは言うまでもありません。

まず、議論の出発点となる、極端であるがバリュエーションの本質に迫ることができる2つのケースを考えてみたいと思います。

(1)今すぐに事業を清算する場合(N=0の場合)
将来の収益性を全く加味しない場合の価値ですから、V=B(0)となります。

(2)企業の存続期間が永久で利益成長率を一定と仮定した場合
以前に述べた定率成長モデルですから、V=E(1)÷(R-G)となります。ただし、Gは利益成長率です。

上記の2つのバリュエーションをPBRで基準化する(両辺を現在の株主資本簿価B(0)で割る)と以下のようになります。

(1)今すぐに事業を清算する場合
PBR=1

(2)企業の存続期間が永久で利益成長率を一定と仮定した場合
PBR=ROE÷(R-G)

(1)が示唆すること
今すぐに事業を清算すると仮定した場合、PBR1倍割れはお買い得である。問題となるのは貸借対照表内に記載されている資産の質である。

(2)が示唆すること
企業が永久に事業を継続する場合、PBRで見たバリュエーションの妥当性はROE(経営陣の質や資本政策の質)と割引率(事業リスクの高さや不確実性)と利益成長率(潜在的な市場の伸び率や企業の拡大余地)で決まる。したがって、これらを把握するためにはビジネスモデルを良く見ることで割安か否かを判断する必要がある。

現実には、今すぐに事業を清算する(N=0)こともなければ、企業の存続期間が永久である(N=∞)こともありませんので、この点についてはよろしく修正した上でバリュエーションを考えなければなりません。

私がPBRをベースにバリュエーションの一元管理する場合、まず(1)を出発点として価値を算定し、次に事業の継続性を勘案して(2)にどれだけ近づけるかを考えます。

バリュー投資では安全域を考えなければならないので、分析対象としている企業の将来性に疑問があったり、あるいは、自分自身がその企業の将来性を見抜く素質がなければ、バリュエーションは限りなく(1)に近いものにすべきだと思いますし、逆の場合は(2)に近づけても良いということになります。

しかし、殆どの株式投資本において「PBRは事業を清算することを前提とした指標である」という類の記述しか見かけません。初心者向けということで分かりやすさを優先している背景があるかもしれませんが、PERよりもPBRのほうが好きな私にとっては、これを非常に不満に思っております。

また、誰がいつそう決めたのかは分かりませんが、バリュー投資において「資産バリュー派」と「収益バリュー派(成長株派含む)」を分ける風潮が出てきたようです。

かくいう私も便宜上、そうした使い方をしていたことがあり、この点に関しては素直に反省しているのですが、上記におけるバリュエーションの論理を考えると、資産と収益(そして、成長)は価値算定において切っても切り離せないものであることがよく分かります。

「資産バリュー派」と自負している人の中には、「PBR0.5倍割れを目安としている」とか「ネット・ネット株(グレアム流の清算価値を満たす銘柄)を探すことに血眼になっている」という人もいますが、私の場合、「全ての企業に対して一律のPBRやネット・ネット株の基準を適用する」というような「杓子定規的な投資判断」はしていません。

そうした清算価値を算出するのは分析上の出発点であり、そこがゴールではないということをここでは述べておきたいと思います。

それでは、「現実に私のポートフォリオが資産寄りになっているのは何故か?」についてですが、その理由は次回に述べたいと思います。ただ、決して「資産価値をベースにスクリーニングをした結果そうなった」という理由でないとだけは述べておきます。

今日の言葉:
「価値を算出する場合、将来の不確実性をよく判断できないならば、現在だけを見るべきである。それこそが保守的な投資である。」





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最終更新日  2005年09月17日 11時54分20秒
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清算価値について   tz0806 さん
はじめまして。いつも勉強させて頂いてます。
通常、清算価値にはそれまでの企業活動で得られた利益が含まれていると思います。
ということは、B(N)にはE(0)~E(N)までの影響が含まれると考えるのが妥当かと思うのですが、上式ではその効果は別に扱われています。
とすると、B(0)とB(N)は同じと考えていいのでしょうか?どこかに差がある気もするのですが良く分かりませんでした。

今回の記事には非常に考えさせられました。ありがとうございました。 (2005年09月19日 15時30分16秒)

Re:PBRでのバリュエーション一元管理法(前編:基礎的な話)(09/14)   tagayu さん
以前のメールのお礼遅れましてすみません。このシリーズ非常に興味があります。楽しみにしております。 (2005年09月19日 15時58分22秒)

コメントありがとうございます   inatora2 さん
tz0806さん
>通常、清算価値にはそれまでの企業活動で得られた利益が含まれていると思います。ということは、B(N)にはE(0)~E(N)までの影響が含まれると考えるのが妥当かと思うのですが、上式ではその効果は別に扱われています。とすると、B(0)とB(N)は同じと考えていいのでしょうか?どこかに差がある気もするのですが良く分かりませんでした。

このバリュエーションの式には、実は暗黙の了解がありまして、B(N)は事業の清算時の残余資産ということになっていることと、各期の収益E(i)が株主にいったんは還元されることを前提としております。

したがって、債券の価格式に近いものを想定して考えていて、株式のように内部留保してそれが株主資本簿価に取り込まれる効果を考慮していません。

あと、現在の株主資本簿価と将来予想収益に関する話ですので、過去の蓄積はここではB(0)に含まれています。

また、事業を継続している限りはこのB(0)がすぐには還元されないことを前提としており、それは事業の清算時であるN期後の株主資本簿価B(N)に現れています。

株式の現実の経済的効果を加味したバリュエーションモデルは他にもいくつかありますが、基本的な部分を押えるということであれば、上記のような債券タイプのバリュエーションモデルで十分であると思います。
(2005年09月19日 17時29分15秒)

コメントありがとうございます(その2)   inatora2 さん
tagayuさん
>以前のメールのお礼遅れましてすみません。このシリーズ非常に興味があります。楽しみにしております。

今後ともよろしくお願いします。

続編を既に書いていますが、「その企業の収益性によって、『事業の継続』に近い立場でPBRを利用すべきか、『事業の永続』に近い立場でPBRを利用すべきか?」という話に行き着くかと思います。

また、企業の将来性とは別に「目標とする投資リターン」と「投資家としての熟練度」によってもどちらの立場をとるべきかが異なるかと思います。

ただ、初心者の場合、「低PBR銘柄のほうが無難だ」という結論に行くつくことには変わりありません。
(2005年09月19日 17時34分54秒)

Re:コメントありがとうございます(09/14)   tz0806 さん
inatora2さん
ご丁寧な説明ありがとうございます。
最近、自分なりに企業価値を考えるようになってきて、PERやPBRのある種「極端」な仮定に違和感を感じていたものですから、この記事の考え方にはすんなり納得できました。 (2005年09月19日 22時15分27秒)

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