2005/11/22(火)10:39
小説 上杉鷹山
上杉鷹山はバブル崩壊の時、「リストラ」の手本としてにわかにクローズアップされたので、名前ぐらいは聞いたことがあるのではなかろうか。
私も上杉鷹山の名前は聞いたことがあったが、どんな人物なのか、何をした人物なのか、深いところまでは知らなかった。
以前アメリカの故ケネディー大統領が上杉鷹山のことを「私の最も尊敬する日本人」と語ったという。内村鑑三は「代表的日本人」の中で取り上げているという。
歴史小説の好きな私は本屋で何度か「小説 上杉鷹山」の前で立ち止まりつつも通り過ぎたが、数年前ついに手に取り、読み始めた。読み始めたら止まらなかった。読み終わってからも、何度となく読み返した。読むたびに心が熱くなるのだ。
リストラを敢行しそれが成功した、そんな簡単な話ではない。
上杉鷹山は九州の小さな高鍋藩から名門・上杉家にわずか17歳で養子入りした。名門といえど上杉家の領有する米沢藩は破綻の危機にさらされていた。
が、この若き新藩主はその現状を投げ出すことはせず、自ら高い理想を掲げ、根気強く打開してゆく。その高い理想は「改革の火種」として側近、そして下層の藩士たちから燃え広がってゆく。
上杉鷹山はまず自分から率先して質素な暮らしを行う。行事など無駄なものは極力廃止する。惰性が身に染み付いている重臣たちからは猛反発を喰らい、嫌がらせも受けるが、それでも負けずに改革を進めていく。
ただの「ケチケチ政策」だけではない。産業振興・学問推進のためにはちゃんと出費するのだ。
人材の活用にも優れている。武士の身分でもやる気がある者には植林や新田開発や灌漑工事をさせる。武士の妻や年寄りにも機織や工芸品作り、鯉の飼育などをさせている。それまでになかった生きがいを見つけた人間も多かったのではなかろうか。
最終的には「棒杭の商い」が成り立つまでに至る。今で言う「無人販売」だ。
この小説の最後は、上杉鷹山が側近とともに遠乗りに出かけ、側近から「棒杭の商い」が行われていることを教えられる場面が出てくる。料金を入れるかごにはちゃんとお金が入っていて、それを盗む者はだれもいない、と。
その日の暮らしが精一杯、疑心暗鬼で氷のように閉ざされていた藩民の心を、上杉鷹山はその熱い心で溶かしたのだ。
上の者だけに都合のいい改革ではなく、自ら苦しみつつも、藩民を思いやる改革を行った上杉鷹山は、すごい人物だ。
こういう人がトップにいるなら、痛みを伴う改革にも率先して協力したくなる。
今の日本に必要なのは、こういう人ではなかろうか。
今の時代だからこそ、「上杉鷹山」をもっとたくさんの人に知ってもらいたいと思う。
大河ドラマででも取り上げられたらいいのになあ。
小説上杉鷹山(上)
小説上杉鷹山(下)
ほかにも上杉鷹山関連の本がたくさんあります。