～ 　i n n o c e n t　 t r i p　 ～

「あいつはサイアクやった…」

『何があったん？？』

「通帳から勝手に金おろされた」


身近にいる人でこんな話を聞いたのは初めてだったので、一瞬絶句したが、すぐに笑い話で済ませようとした。

ありそうで、けっこうあるのかもしれない、こういう話。


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ここからどういう方向で話を持っていこうか、２つで迷っていたんだけど、

うん、

純粋に「騙される」っていう話じゃなくて、こういった話をする状況について語ってみよう。


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もっと話を遡ってみると…なんの話をしていたんだっけ。

とにかく騙されるとか騙されないとかの話をしていたんだと思う。

で、誰かがその女の子に向かって「お前は騙されたこととかあるん？」とでも聞いたのだろう。

「あるよ」と彼女はあっさり答えた。あるんかい！！

さて、でも、決して僕らは、盛り上がって話をしていたわけではない。

ハイテンションならそのまま「吐け！吐いちまえ！！」でいいんだけど、さして酒も回っていないような状況（少なくとも僕は）、果たしてこの微妙なプライベートの話に踏み込んでしまっていいのだろうか！？


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ここでひとつのポイントとして…

人の習性として、みんなけっこう自分のことを話すのが好きなのである。

そしてそれが行き過ぎると、かなりプライベートな問題で、話してしまうことで他人の自分への見方が変わってしまう問題ですら、話してみたい、という欲求を持ってしまったりすることがある。

話したい（話してもよい）プライベートと、話したくないプライベートがある。


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その見分け方として…

謀らずもそのプライベートの中身に近い話題になって、その話を偶然にもふられたときに、正直にＹＥＳかＮＯか答えたとして、とりあえずみんながその先を煙に巻いてごまかそうとしている中、

１人でそのことについてブツブツ感想を漏らしていたら、きっとふったほうがよい。話したい欲求がたまっているのだろう。

とまどっている様子だったら何も言わないでおきましょう。もしもさらに話をふっかけてしまうと、きっとその人に嫌われてしまうことでしょう。

いや、見分け方というか、まぁ当然といえば当然ともいえるんだけど。


でもまぁ、ふるにもけっこう勇気がいる。それならまだ黙っていたほうがいいのかもしれない。


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「あいつはサイアクやった…」というようなことを、彼女は２,３言口にした。

そこで僕は、勇気を持って聞いてみることにした。『何があったん？？』

そして彼女は、なかなかヘビーな話を口にした。


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「でも私から好きになったわけじゃないし」

という彼女の発言を聞いて、本当はもっと言わせてあげたほうがよかったのかもしれないけれど、

僕の言葉のボキャブラリーの少なさから、その先を広げることができなかった。

『そんならそこに初めから恋はないやん！！』


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僕にも、話したら自分の立場が追い込まれるとわかっていながら、話したい欲求にかられるようなことが、何度もある。

そのたびに、息を大きく吸い込んで、それ以上の言葉を出さないように頑張る。

欲求との葛藤。こんな形での自己抑制も、ある。


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話したい欲求。

それっていったい、どこから来るのだろう。

注目を浴びたいという願望なのだろうか。

それともこれも１つの自己の開放？やぶれかぶれになることで、スッキリすることもある。


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前に友人と話していて、その、話したい内容に近い方向に話が進んでも、その中にどうしても聞いてほしいという「核心」の質問というのが存在する、ということを言った。

そう、聞いてほしい聞かれ方があるのだ。

その質問に対する答えはあらかじめ自分の頭の中で何度も何度も構築されており、はやくそれを開放したい。

でも、それは自分から突然言い出すような話ではない。だから早く、その質問をしてほしい。

聞いてほしい質問。

でも、それを見つけるのが、とても難しい。わかっていれば、喜んでふってあげるんだけど。


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コミュニケーションて、本当に難しい。

他人と自分、お互いに満足を得られる会話ってなかなか簡単には構築されない。

そもそもそれは無理に構築するものではないけれど。

どうでもいいような話ばかりをして適度に楽しんで過ごしていても、時にはシリアスな話をしたり、聞いたりしたくもなる。

そのとき、いかにお互いの波長を合わせることができるか（合っているか）。

人って、本当に複雑です。


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最後に一言。



恋人に暗証番号なんて教えんなよ。