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テーマ:詩&物語の或る風景(1048)
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去っていく君の後姿さえも 見つめることができなかった…
そうだ、いつだって人は勝手な生き物だ。 誰かのため何かのため、そうやって理由をつけて いかにも自分が正しいかのように主張するけれど 結局は、いや最初から、本当は自分が一番可愛くて仕方がない。 僕もその一人にすぎないんだ。 君は無邪気でまっすぐに僕を見つめていた。 行くとこ行くとこを、ずっとその眼差しで追い続けているのがはっきりわかるぐらい。 そんなところがたまらなくいとおしかった。 いかなる理由があったにせよ、僕は繋いだ鎖をすぐに外さなければならなかった。 そうしなければならないことは、はじめからわかっていたのに それでも僕は、君に会わずにいられなかったんだ。 この先にあることも全く知らずに 君はまた手を振り、すぐに僕の元に駆け寄ってくる。 君の居場所はここじゃないんだ。 きっとすぐに新しい人が現れて、僕以上に君を愛してくれるよ。 心の中で何度も唇を噛み、何度もその言葉を繰り返しながら 君の温もりをこの手で感じた。 「じゃあまたね。」 そう言って、僕はその場を離れた。 本当は僕がここに残って、君の去って行く姿を見送りたかったのに。 「また来てくれるんでしょう?」 君の瞳はそう信じて疑わないままで だから君の声を背中に受けたまま、二度と振り返ることはできなかった。 僕の中には君の温もりも笑顔も残っているけど 君の中には僕の姿はどう映っているんだろうか。 君の記憶を消し去って、僕のすべてを忘れて欲しいと願う一方で ずっと君の中に残っていたいと思うことは、きっと傲慢なんだろう。 こんなことなら、出会わなければよかったんだろうか。 END お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.10.29 17:36:24
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