どうしていいのかわからない
どうしていいのかわからないのである。自分のしたいようにしなさいと言われても、どうしていいのかがわからないのである。人生なんて、賢い人たちがどれだけ考えてもわからないのに、自分には解決できるはずもない。そんなときどうするかと言えば、みんながどうしているかを参考にすることだ。結局、自分で価値を見つけるのではなく、外側にルールが転がっていないかを探すことになる。この世界に共通する価値とは何か?ルールとは何か?そう思って社会を見れば、答えはすぐに見つかる―市場原理だ。欲しい物を手に入れ、楽しむこと。消費することだ。あれこれ考えて、負け犬になってしまうよりも、とりあえず勝っておかなければ。日本にいれば、ありとあらゆる方向からそうしたメッセージを浴びせられつづける。テレビを見ていても、雑誌を見ていても、電車や街の中にいても、こうしたメッセージがあなたを誘いつづける。「これを欲しがりなさい。こんなふうになりなさい。今のままではだめだ。欲望を満たしなさい。これを手に入れなさい。」そうした環境の中で、共通して実感できる欲望というのはいちばん原始的な欲求だ。食欲、性欲、権力欲、闘争心、嫉妬心。こうしたものなら実感できるし、誰にでも理解できる。そうした欲求を満たしてくれるものは何か?―それは金だ。お金はほとんどのものと交換できる。ありとあらゆる欲求を満たしてくれる万能のシンボルだ。ゲームは単純だ。欲望を満たすこと。そのためには何をしても、見つからなければよいのだ。善悪の問題というのは倫理的な問題ではなく、ルール上の問題だ。要はいかにうまく立ち回って利益を得るかだ。そんなことは政治家さんをはじめ、世のお偉いさんたちが率先してやっている。そうしたメッセージを受け取ったなら、少女たちが性を売ったり、詐欺商法が横行しても不思議ではない。この世界は金が神で、市場原理がその宗教となってしまっているのだから。