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手術は終わった。
手術を受けた左手は大変なことになっている。 小さな骨が集まる手首には、固定するための金属などを入れることはできない。 だから固定具は体外に出ている。つまり、骨を固定した金具が体の中から飛び出している。 まず、手首を真横に針金が4本、小さな骨を貫いて刺さっている。L字型に曲がった針金の根元が手首から飛び出している。 さらに手首を動かないようにするため、人差し指の甲の骨に2本のドリル状の針金が刺さっている。それと同じ物が二の腕の骨にも刺さっていて、甲と二の腕に橋を渡すようにカーボン製の棒で固定されている。 担当の先生は、僕の手のレントゲン写真を見てうっとりしている。 会心の出来だそうである。 「ここの角度が最高なんですよ。アルバムに入れたいくらいですねぇ。」 先生はひたすら自画自賛。 それほどうまくいったのだからよかったのだけれど、先生の喜びようというのは、プラモデル好きの子供のような無邪気さと無神経さをあわせもっていた。僕の手首は僕の手首ではなく、彼の作品というわけだ。 手はぱんぱん腫れて膨らんでいる。痛み止めが切れるとかなり痛い。 夜に痛み止めを頼むと、とても美人な看護婦さんに問答無用で座薬を挿される。 この薬の効き目は絶大で何やら意識が混濁するというか、どっぷりと眠れるのだ。 あとで聞けば、それは麻薬系のいいお薬なのだそうである。 この手術を機に僕はタバコをやめたのだけれど、痛み止めのせいで禁断症状など感じるヒマもなく簡単にやめられた。タバコをやめられたのはとてもよかった。それまで十年以上毎日一箱は吸っていたのだから。生活が変わった。 手の腫れがひくと、手の皮がすべてひび割れてはがれてきた。 手首はびくりとも動かない。でもかゆいのである。ときどき右手で皮をむいてやった。 2週間の入院生活を終え、退院する。 街を歩くのが恐いのである。こちらが手をぶら下げていても誰も気づかない。ぶつかっても知らんふりなのだ。ぶつかるだけならまだしも、金具に服など引っかけられようものなら、たまったものではない。直接骨に響くのだ。ここは東京大都会。まったく人を人とも思わない。会釈すらしない。声も掛けない。まったくの無視だ。おかげですっかり出不精になって、デブ症になってしまった。 8週間後、固定を外すのは、思ったよりも荒っぽかった。 麻酔もなしに引っぱって取るのだ。手首に入った4本の針金をL字になった部分を持って引っぱるだけだ。ドリルはペンチで捻りながら抜く。骨には神経がないから、あまり痛くないのだけれど、黒っぽい血がどろりと流れる。それだけだ。簡単な包帯をして、すぐにリハビリを始めるように言われる。 固まったのは骨だけではなく、筋も関節もカチカチに固まってしまっている。 曲がらない。ほとんど曲がらない。 この曲がらない手首を曲げるのが、本当にたいへんなのだ。 (次回が本当のリハビリ編です) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004/07/23 05:18:09 PM
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