外国人の生活保護を巡るデマ
萩原圭一 和光市議会議員・投資家「法律では生活保護は日本人限定なのに、なぜ外国人にも支給しているのか」と市役所担当者に問いただした。担当者「1954年の厚生省通知があるから仕方ないんです・・・」やはりそれか。70年前の通知が法律より上って おかしいだろ。いいかげんに、厚労省は通知を取り下げろよ!それですべて解決する。---たまたま目に付いたので引用しましたが、この手の論調は掃いて捨てるほどあります。「1954年の厚生省通知」というのは、昭和29年5月8日社発第382号「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」という通知です。そこには、生活保護法(以下単に「法」という。)第1条により、外国人は法の適用対象とならないのであるが、当分の間、生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱に準じて左の手続きにより必要と認める保護を行うこと。と規定されています。確かに70年前(正確には72年前)に作られた通知ですが、70年前に出されたっきりではありません。この通知はその後改定を重ねており、直近では平成30年6月8日社援発0608第8号によって改正されています。そして「70年前の通知が法律より上っておかしいだろ。」通知は、法律より上ではありません。法律が通知より上です。通知は法律を補足するものであって、当然に法律と矛盾するものではありません。もちろん、この通知も法律には矛盾しないのです。思い込みの激しいネトウヨは、「外国人の生活保護は憲法違反だ」などと独自理論を叫ぶわけですが、もちろんそんなことはありません。それは、はっきりと最高裁の判決が認定しています。2014年7月18日に最高裁第2小法廷は、「国民」とは日本国民に限られ、外国人は含まれないとの判断を初めて示し、外国人には同法に基づいた生活保護の受給権がないとしていますが、同時に「外国人は、行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るとどまり~」としています。おそらく、この判決の半分しか目に入らない人は、「外国人には生活保護の受給権がない=外国人に生活保護を受けさせることは違法だ」と見えてしまうのでしょう。しかし、後段も合わせてみれば、「外国人には生活保護の受給権がない=権利として保証はされない」ということであり、権利として保証はされないが「行政措置により事実上の保護の対象となり得る」ことは認めているわけです。なお、該当の裁判は、原告が手持ち金が多いということで保護申請が却下されたことによるものですが、この場合、外国人だから特別に却下されたわけではなく、日本人でも同様に却下されます。生活保護は、申請時に保護基準の1か月分未満の手持金しかない場合に対象になります。数日前、人工透析を受けるガーナ人男性が保護申請を却下されたことを不服として訴えた裁判の最高裁判決がありました。この男性は敗訴したのですが、外国人の生活保護自体は「外国人を生活保護の対象に含めるかは立法府の裁量範囲なのは明らか」として、外国人に生活保護を受けさせることは憲法違反、などというトンデモ解釈ではありません。これらはまったく当然の話であって、例えば、憲法第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。~とありますが、では外国人に基本的人権を与えることは禁止ですか?すべての外国人は来日した途端に身柄を拘束して、すべての基本的人権を剥奪しなければならない?そんなわけはないのです。第13条 すべて国民は、個人として尊重される。~外国人を個人として尊重することは禁止ですか?そんなわけがありません。第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。外国人が日本で教育を受けること(少なくとも公立学校で就学すること)は禁止ですか?勿論違います。公立小中学校、高校、国公立大学にも、多くの外国籍の児童生徒学生が在学しています。ただ、日本人だと、子どもを学校に生かせない親がいれば刑事罰の対象となりますが、外国人の場合は教育を受ける権利も子女に教育を受けさせる義務もないから、外国人の親が子どもを学校に通わせなくても、刑事罰の対象にはならない(それ以外の部分で虐待があれば別ですが)という違いはありますが。第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。外国人が日本で働くことは禁止ですか?まあ、排外主義者の願望はそうしたいのでしょうが、そうではないことは明らかです。というわけで、憲法が規定する「国民の権利」とは、「国民以外に与えてはならないもの」ではないことは明らかです。それなのに、第25条の生存権だけが、「国民以外に認めるのは憲法違反」になるわけがありません。なお、日本人でも外国でも、保護基準は同一です。当然ながら外国人の方が保護が受けやすい、などということはありません。また、外国人がみんな生活保護の対象になり得るわけでもありません。外国人で生活保護の対象となり得るのは、特別永住、永住、定住、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等に限定されます。かつ、日本人の配偶者等は、日本人が世帯主であり、その世帯員としての生活保護ということになります(生活保護は世帯単位での受給となる)2025年末の日本在留外国人約412.5万人中、上記の在留資格は合計約165万人なので、生活保護の対象となり得る外国人は、全在留外国人のうち4割程度ということになります。また、2024年の被保護者年次調査によれば、外国人世帯46,062世帯のうち6割、27,638世帯の国籍は韓国・朝鮮です。 その大半は在日2世3世4世であり、外国人と言っても来日外国人ではなく、日本生まれ日本育ちです。外国籍の被保護者のうち。日本生まれではない来日外国人の割合は、おそらく半分かそれ以下でしょう。と言ったことを説明しても、それよりもデマの方が流布しやすいのは恐ろしいことです。悪貨は良貨を駆逐する、それはこの問題だけに限った話ではないでしょうが。