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カテゴリ:食の安全
さて、これだけ世界的に農作物の価格が高騰しているのに、日本ではどうかというと、農産物の値段はまったく値上がりしていないのです。代表例としてコメを見てみると、生産者米価は、地域やコメの種類によって違いますが、コメ価格センターの統計によると、1990年代にはほとんどの銘柄で1表(60kg)あたり2万円を越えていましたが、2007年にはほとんどのお米が1俵1万4千円台です。
たとえば、1ヘクタールの水田をもつ農家があったとします。2005年の調査では、日本の全農家数約200万戸、うち耕地面積1ヘクタール以下が110万戸以上を占めるので、1ヘクタールという面積は真ん中より少し上ということになります。 そして、1ヘクタールから収穫できるコメの平均的な収量は約5トンです。1表1万4千円で、5トン売って売上はいくらになるでしょう。116万円ほどになります。 仮にその売上が全て収入になったとしても、とても農業だけで生活が成り立つような金額ではありません。しかも、当然のことながら、売上=収入ではありません。米を作るには農機具代、肥料代、その他諸々の費用がかかる。そのコストは1俵あたり16,000円以上というのが平均値です。 と、いうことは、1俵16,000円かけて作った米を1俵14,000円で売るわけで、売れば売るほど赤字ということになります。もちろん、コストは農家ごとに差がありますし、耕地面積によっても違う(大規模農家ほどコストが安い)ので、全ての農家が赤字というわけではありませんが、たとえ赤字でなくても、売上から経費を差し引いた利益がとても生活できるような額できはないことは間違いありません。 これでは農業で生活できないどころか、農業をやればやるほど損になってしまうわけで、農家がどんどん減っていく、耕作放棄がどんどん増えていくのも当然です。2005年の調査では、全国の農業人口の58%以上が65歳以上です。65歳以上の人が、あと何年農業を続けられるでしょうか。 今は、まだコメに限ってはほとんど自給できていまが、あと5年もしたら、コメすら自給できなくなっているかも知れません。 そのとき、外国産のコメが安価に好きなだけ輸入できるかと言えば、おそらくできません。かつて「安い」とされた輸入米ですが、ここ1~2年の価格暴騰で、国産米との価格差はあまりなくなっています。品質の差や日本までの運送費を考えれば、国産米の方が安いくらいです。 さて、ではどうしたらいいのでしょうか。 まず、非常に単純な話があります。現在日本では、食べ物のうち、実に4割近くが廃棄されていると言われています。残飯、賞味期限切れなどです。廃棄される食糧をゼロにする、というのは、現実的には不可能ですけれど、半分に減らせれば、それだけでも食糧自給率は大幅に上がるでしょう。 そして、もう一つは、農業を競争原理主義に任せることはやめる、ということでしょう。外国の農産物の方が安いからと、日本の農業を切り捨てていって、いざ輸入できる食糧がなくなったとき、金さえ積めば日本の農業が一夜にして蘇る、などということはありません。その時、飢餓に直面してから慌てたところで、遅すぎます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.09.13 00:53:38
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