|
カテゴリ:人類学
先の投稿で、日本に限らず、アフリカを除く世界中で出生率が低下してきていることに触れました。とりわけ、アジア諸国の出生率の低下が著しい。
その中で、中国の合計特殊出生率について、1.8という数字を引用しました。しかし、実は中国の本当の合計特殊出生率は、そんな数字ではなかったようです。 中国労働人口、年内に減少へ によると、昨年夏に詳細が公表された2010人口センサスによる中国の合計特殊出生率は、1.18だそうです。いわゆる闇っ子など、統計に出てこない出生も多少はあるにしても、少子化の状況はすでに日本を越えてしまっているようです。内訳を見ると、やはり少数民族の自治区では数字が高い(少数民族には一人っ子政策が適用されていないといわれます)のですが、それでも2を超える地域はなく、逆に北京や上海の合計特殊出生率は0.7という数値になっています。 その結果、中国の労働人口は今年をピークに減り始め、2020年頃には総人口も現象に転じる、というのが上記リンク先記事の見立てです。 -- ところで、話は変わりますが、人はもともと生涯にどの程度の子どもを産むものなのでしょうか。まったくの自然状態で、というのはヒトという生物の特性としてなかなか推測困難なのですが、おおむね3人から10人程度と言われます。それは、逆に言うと近代社会以前は、そのくらいの出生があっても、成人して子を残せるまで生き残るのは2人を若干超える程度だった、ということでもあります。 さて、ではヒトにもっとも近縁な動物であるチンパンジーは、生涯にどの程度の子どもを産むのでしょうか。 実は、おおむね2から4頭と言われます。ヒトより明らかに子どもの数が少ないのです。団塊の世代の時代の合計特殊出生率より低いくらいです。 この出生数で、個体数が大変動することなく「人口」がおおむね維持できていたとすると、おとなになる前に死んでしまう子どもの割合は、近代以前のヒトよりチンパンジーのほうが低いのかもしれません。なお、チンパンジーが出生から大人になるまでに要する期間は15年程度のようです。 逆に言うと、人が近代以降猛烈な勢いで人口を増やすことができたのは、類人猿類の中でも人がもっとも多産な種族だったから、ということも言えるかもしれません。 ただ、多死を前提として多産が、文明の発達で多産少死になれば、人口は急増しますが、その状態は、どう考えても持続可能ではないのです。 ヒトは、現在バイオマス(ここで言うバイオマスは個体数×体重のこと)としては世界最大の動物です。ヒトより体重のでかい動物は、ヒトよりはるかに個体数が少なく、ヒトより個体数の多い動物は、微生物なので体重が極めて小さい。自然状態で維持可能な人数ではとっくになくなっており、農耕や様々な科学技術の存在を前提に考えても、今後も人口が増え続ければ、地球環境に対する付加は限界に達しかねません。 そういう意味では、世界的な少子化の進行というのは、案外ヒトという生物は集団的にも利口にできていて、集団自滅を避けるための最善の行動をとっている、のかも知れないな、なんて思ってしまいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[人類学] カテゴリの最新記事
|