inti-solのブログ

2018/08/13(月)19:00

オリンピックのためにサマータイムという異常性

オリンピック招致問題(47)

今度は本気?サマータイム導入 五輪まで2年しかないが 2020年東京五輪・パラリンピックの暑さ対策として、標準時を1~2時間早める「サマータイム」(夏時間)の導入を政府が検討することになった。しかし、国民生活や経済への影響が大きく、これまでも浮かんでは消えている。 大会組織委員会会長の森喜朗元首相や遠藤利明会長代行が7日午前、首相官邸を訪れ、サマータイム導入を求めた。安倍晋三首相は「内閣としても考えますが、ぜひ(自民)党の方で先行して、まずは議論をしてみてください」と応じた。 自民党五輪実施本部長も務める遠藤氏は記者団に「お盆前に具体的な動きをスタートさせる。自民党が主導的に行い、各党の理解を得る形を作っていきたい」と述べ、党が主導して検討する考えを示した。五輪に先行する形で来年から導入できるよう、臨時国会への関連法案提出をめざすという。 今夏の「災害級」の酷暑が動きを加速させた。欧米メディアは東京開催を不安視する報道を続けており、政府内には「小手先の対策だけでは限界がある」との声が出始めていた。 --- そもそもの前提条件として、年に2回時計の針を動かすことを強いるサマータイム制度は、大半の人にとっては迷惑以外の何物でもなく、百害あって一理もない制度です。 サマータイムを以前から実施しているヨーロッパは、日本よりはるかに高緯度に位置しているため、夏場は夜明けが極度に早く、冬は極度に遅いのです。それに加えて、ヨーロッパは一般的に夏場に降雨が少なく、冬場に降雨、曇天が多い気候のため、日の出・日没時間からの計算以上に冬場の日照時間は少なくなります。人間はある程度以上日光を浴びていないと、様々な健康被害を生じます(たとえばくる病)。だから、生活上の不便はあっても、充分な日照がある夏場に日光を浴びておくことは、必要なことと考えられていました。もっとも、ヨーロッパでサマータイムが始まった最初の経緯は、第一次大戦中に石炭の消費を抑えるためだったようで、健康問題はおそらく後付の理由であろうと思われますが。 そのヨーロッパでも、近年はサマータイム廃止の議論が進んでいるといいます。年に2回、強制的に時間を1時間変更することは、日照不足とは別種の健康被害を招く要因となること、IT化の進展で、標準時の変更がオンライン処理などの大きな障害になるからです。 翻って、日本はどうでしょう。冬場に極度に日照時間が短いのは、本州の日本海沿い(豪雪地帯)の一部だけで、それもヨーロッパよりはるかに低緯度なので、夏場に時計を早めるメリットはあまりありません。ましてや、全国の人口の大半を占める太平洋気候の下では、夏場は梅雨や台風で降水量が多く、冬場に晴天が多いため、夏冬の日照時間の差はほとんどありません。(東京でもっとも日照時間の少ない月は9月)サマータイムは、国民生活にとって百害あって一利なしです。 まして、その導入の理由が、東京オリンピックのため、というのは、賛否以前にそもそも異常ななことだと私は思います。東京近辺だけで行われる、たかが2週間程度(パラリンピックと合わせても1ヶ月あまり)のイベントのために、日本全国の標準時を変更することを要求する、あまりに常軌を逸しています。オリンピックとは、国の標準時すら変えさせることを当然視するほど偉いものですか? しかも、サマータイムの議論には、おそらく朝7時開始のマラソンのことしか念頭にない。確かに、酷暑の下での競技の異常性がもっとも際立つのがマラソンであり、私自身も当ブロクで、マラソンについて槍玉に挙げました。しかし、、それは言うまでもなくマラソンがもっとも象徴的ということであって、マラソンだけが問題ということではありません。 ざっと競技開始時間を見ると、陸上は朝夕に分かれていますが、夕方は午後7時開始、野球も7時開始(野球の会場は都内の東京ドームや神宮ではなく、横浜スタジアムなのですね)、サッカーは日程によって6時か8時開始となっています。サマータイムで時計が1時間早まると、これらの競技がより酷暑の時間帯に始まることになります。つまり、なんの解決にもなっていないのです。 歴史を紐解けば、日本においては戦後すぐの占領時代に、GHQの意向を受けて、4年間だけサマータイムが導入されたことがあります。しかし、まだITなどかけらもなかった当時でさえ、サマータイムで時計を動かすことによる生活リズムの混乱、仕事の始業時間は1時間早まっても、結局終業時間は変わらない場合が多く、ただ労働時間が伸ばされるだけという労働環境の悪化など、悪評が極めて大きく、サンフランシスコ講和条約成立後ただちに廃止されたような代物です。 明らかに、占領時代の失策の最たるもの。それを、戦後レジームからの脱却などと叫んでいる安倍ネトウヨ内閣が持ち出すとしたら、これはもはや喜劇ですらあります。 降ってわいたような、オリンピックにサマータイムという暴論は、あまりに馬鹿馬鹿しい話であるとともに、それを言い出したのが曲がりなりにも日本の首相を務めた人物であることに(まあ、森は日本の歴代首相の中でもあまり頭の良くない部類であったと思いますが)、ほとんど絶望的な感覚を抱いてしまいます。

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