inti-solのブログ

2020/01/14(火)21:18

MOX燃料に未来なんてない

環境問題(240)

伊方原発 「使用済みMOX燃料」取り出し開始 商用原発、本格運転開始後で初 四国電力は13日夜、定期検査中の伊方原発3号機で使い終わった核燃料を原子炉内から取り出す作業を始めた。「MOX燃料」と呼ばれる、放射性物質のプルトニウムとウランを混ぜた酸化物による燃料も含まれる。商用原発で本格的な運転開始後の使用済みMOXの取り出しは初めて。当面は原子炉建屋内のプールで保管される。使用済MOXは再利用が検討されているが実用化の技術は確立していない。 原子炉内にある燃料157体すべてを取り出す。そのうち、使用済みMOX燃料16体を含む計37体を交換。MOX燃料は新たに5体を炉心に装塡する。使用済みMOXを含め、取り出した燃料を原子炉建屋内のプールに十数年間保管する。 政府は「資源を有効利用する」などとして、使用済みMOXをさらにMOX燃料に加工して再利用することをもくろんでいる。使用済み核燃料や使用済みMOXを核のごみとして直接処分することになれば、核燃料の再利用を前提とするこれまでの原子力政策が揺らぐためだ。しかし、再利用の技術的なめどは立っておらず、プールで保管後の行き場は具体的に決まっていない。 福島第1原発事故後、MOX燃料を使うプルサーマル発電をする原発が再稼働したのは、伊方のほか、関西電力高浜3、4号機と九州電力玄海3号機の計4基。各社が保有するMOX燃料は計221体に上る。今後も使用済みMOXは増えていく。(要旨・以下略) --- MOX燃料とは、引用記事にあるように「放射性物質のプルトニウムとウランを混ぜた酸化物による燃料」ですが、補足すると、MOX燃料自体が、使用済み核燃料の再処理によってプルトニウムを抽出して作ったものです。 本来は、高速増殖炉で使うことを念頭に作られたものですが、言うまでもなく日本の高速増殖炉「もんじゅ」は重大な事故を起こしてほとんど稼働することなく廃炉となり、今後実用化のめどは全くありません。そのため出てきた苦肉の策が、MOX燃料を通常の原発(軽水炉)で使うプルサーマルという方式です。 しかし、通常の軽水炉ではMOX燃料を全体の1/3程度しか混ぜることができません。という時点で、本質的にMOX燃料は軽水炉で通常使う核燃料より更に危険なものであることがわかります。 しかも、プルサーマル発電で消費できるプルトニウムの量など、実はたかが知れています。通常の軽水炉の場合、その量は年間で300kg~400kg程度だそうですが、日本が持つプルトニウムの「在庫」は約30トンです。しかも、原発を稼働していれば、続々と新たな使用済み核燃料が生まれ、それを「再処理する」といしう方針を掲げる限りは、またまたプルトニウムが増えるわけです。4か所や5か所の原発でプルサーマル運転を行うだけでは、とうてい使いきれません。 では、20基30基の原発でMOX燃料を使えばいいのか。 先ほど指摘したように、MOX燃料は通常の核燃料より更に危険なものですから、とうていそんなことができるはずはないのです。 しかも、どう考えても使用済核燃料を再処理してMOX燃料にするのは、莫大な費用がかかります。使用済核燃料を再処理して再利用するより、核燃料を使い切り(ワンス・スルー)にする方が、実際には安上がりなのです。 つまり、使用済核燃料の再処理、MOX燃料製造、プルサーマルなどということはやめた方が原発のコストは安上がりなのです。にもかかわらず「核燃料サイクル」にこだわるのは何故でしょうか。 核武装への野心を疑われても仕方のないことではないか、と私は思います。そしておそらく、将来の核武装の可能性への担保、という側面もなくはないのではないかと、私も思います。 ただ、より直接的な要因は、引用記事にあるように 「使用済み核燃料や使用済みMOXを核のごみとして直接処分することになれば、核燃料の再利用を前提とするこれまでの原子力政策が揺らぐ」 ことなのだろうと思います。ただし、「これまでの原子力政策」なんてものは、さして高度な話ではありません。 よく知られているように、使用済核燃料の最終処分場は受け入れる自治体がなく、建設の見とおしは立っていません。現在使用済み核燃料が保管されている「中間貯蔵施設」は、まさしくその名のとおり「中間」貯蔵施設であって、地元自治体は最終処分場となることを強く拒絶しています。 使用済核燃料は、「再処理してMOX燃料にします」と言っている限りは、ゴミではなく資源であると言い訳ができます。ところが、「再処理はしません」と言い出した途端に、それはただのゴミになります(極めて危険なゴミですが)。そうなると、中間貯蔵施設や原発(使用済み核燃料の保管プール)の地元自治体は、「うちは最終処分場じゃないのだから、ゴミは早く運び出せ」と言われて、使用済核燃料の持って行き場がなくなってしまいます。 それを避けるための問題先送りツールが「再処理」というわけです。 でももそんなことをやっても、永久に問題を先送りにしておくことなどできません。もうそれ以上先送りできない、というときがいつかは必ず来るのです。まあ、30年も先送りしておけば、今原子力政策に決定権のある立場の人たちなど、みんな「逃げ切り」ができるから、それまで先送りできれば、それより先のことはどうでもよいのかもしれませんが。 結局、原発は一から十まですべて虚構の上に成り立っている砂上の楼閣に過ぎない、ということでしょう。

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