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カテゴリ:外国人の権利
「長野五輪で5千人の中国人が暴動」は誤り。元航空自衛隊トップが「忘れてはならない」と拡散も、10年前からネットに
外国籍の人たちの住民投票への参加に関する議論をめぐり、「長野五輪で5千人の中国人が集合し暴動になった」という情報がSNS上で拡散された。しかし、これは誤りだ。長野五輪で暴動が起きた事実はない。2008年夏の北京五輪の際、長野市内で開かれた聖火リレーで起きた混乱が、1998年冬の長野五輪と混同されたものとみられる。~ Twitterで拡散したのは12月13日。元航空幕僚長の田母神俊雄氏の以下のような投稿に、1万5000以上の「いいね」が集まった。 「武蔵野市の住民投票条例は~中国が多くの中国人を武蔵野市に集中させれば武蔵野市は乗っ取られる。長野五輪で5千人の中国人が集合し暴動になったことを忘れてはならない」~ 「長野五輪で5千人の中国人が集合し暴動になった」という言説はたびたび拡散されてきた。 1998年冬に開かれた長野五輪で、実際、そのようなことがあったのか? 長野県警警備2課は「承知していない」と回答。また、長野市スポーツ課の担当者も「極めて平和的で、そのようなことは一切なかった」と否定している。~ 長野市内では冬季五輪から10年後の2008年夏、北京五輪の聖火リレーが開かれていた。この際、中国人留学生が全国から動員され3000~5000人が集まった。 一方で、中国を批判する人たちの姿も多かった。~同化政策などが問題視されていたチベット・ラサで騒乱が起きたばかりだったからだ。~チベット問題を訴え北京五輪に反対する人たち、国際人権団体、日本の右翼団体なども集まっていた。 県警は警備に3000人を投入。盾を持った数人がランナーを守り、さらに100人で人垣を作るなど、厳戒態勢となり、現場は混沌としていたようだ。 一連の「小競り合い」で中国人男性4人がけがをしたが、いずれも軽傷だったという。「フリーチベット」と叫んでリレーに乱入した亡命チベット人2世の台湾人や、車道に飛び出した男性、右翼団体の構成員など、6人の逮捕者が出ている。 当時の高村正彦外相は聖火リレーについて以下のようにコメントしている。 「もっと平穏に行われたら良かったというのはもちろんだが、逮捕者の中に中国人やチベット人は1人もおらず、双方とも暴力はいけないということは徹底していた。警察がきわめて良く警備をしてくれて、たいへん良かった」 ーーー また、例によってデマです。 中国のチベットをはじめとする少数民族への圧迫や香港への圧迫に大きな問題があることは疑いありません。しかし、そのことの外国人の住民投票条例の是非やオリンピックの是非、あるいは聖火リレーへの是非は別問題だし、聖火リレーに反対ということと暴力行為の是非もまた別な問題です。そもそも2008年に起きたことを1998年の長野オリンピックの際の出来事と誤認している時点で、「事実ではなく信じたいことに飛びついているだけ」であることは明らかです。「混乱」と「暴動」の境界はいささか曖昧とは思いますが、逮捕されたのが「亡命チベット人2世の台湾人や、車道に飛び出した男性、右翼団体の構成員など、6人」で「逮捕者の中に中国人はいない」という時点で、仮にこれを暴動と呼ぶとしても、その犯人は中国人留学生ではなく批判者の側、ということにならざるを得ないでしょう。 繰り返しますが、だから中国がやっていることが正しい、ということではまったくありませんよ。ただ、中国がやっていることが悪いから批判者の所行が正しい、ということにはならないし、まして武蔵野市の条例の是非とは関係ないことです。外国人登録者の中で中国人がもっとも多いとはいえ、全体の3割にも満たないですから。中国人が危険だから(という思い込みで)残りの7割超を含む全外国人に権利を与えないのが合理的とは言いかねます。 そもそも、「中国が多くの中国人を武蔵野市に集中させれば武蔵野市は乗っ取られる。」これって言いがかりですよ。 第一に、そのような行為の現実性です。何も中国人に限らず、特定の主義主張の持つ主を一つの自治体に集めて多数派を形成するって、すぐに考えつきそうなやり口です。選挙の度に支持母体の信者が住民票を動かしていると噂される、某与党もあります。 でも、実際それで一つの選挙区に何千人も何万人も転入させるなんて、できるわけがないのです。居住の実態と住民票の所在地が不一致なんて人は世の中に大勢いますが、そのほとんどは転居後も元の住所に住民票を置きっぱなし、というもの(学生の下宿など)で、何らかの事情で親兄弟子どもの家に便宜上住民票を置く、というのがそれに次ぎます(親が自宅を引き払って介護施設に入所したが、住民票は介護施設に移さず子の住所におく、など)。 赤の他人が住民票を置いている住所に住民票を置くことは基本的には出来ないし、「居候を認めた」などと口裏を合わせてそれをやったとしてもできるのは1人または1世帯だけで、何世帯もそこに転入することなどできません。結局、その地域に融通の利く親族も知人もいない人が実態のない住所移転などできないのです。その自治体に何の縁もない外国人が大量に転入なんて、絵空事もいいところです。 第二に、問題になっているのは地方参政権です。住民投票で条例の制定はできますが、その条例は国の法令に反しないものに限られます。国の法令に反する条例を作って独立国状態になる、なんてことはできません。その程度の条例制定に影響力を求めて外国人の大量転入なんて、得られる利益にたいしてリスクと不利益が多過ぎで、妄想の極みとしか言いようがありません。 そりゃ、ネトウヨどもが気に入らない内容の住民投票が、僅差の勝負のところ外国人有権者票が鍵となってギリギリ賛成多数という結果になることが絶対ない、とは言いません。しかし、ネトウヨどもが気に入らない、ということと法令に反するか否かは別の問題です。ネトウヨどもがどんなに気に入らない内容だったとしても、法令に従った条例が賛成多数で成立することに、何の問題もない、としか言いようがありません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.12.29 08:48:14
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