弾劾成立と内乱罪、そしてその裏側にあった真相
韓国大統領の弾劾訴追案を可決 職務停止に 戒厳令巡り韓国の国会は14日午後、尹錫悦大統領に対する弾劾訴追案を可決した。野党や無所属議員の賛成に加え、保守系の与党「国民の力」の一部議員が賛成した。尹氏の大統領としての職務は停止され、当面の間、韓悳洙首相が権限を代行する。投票の結果、賛成204、反対85、棄権3、無効8だった。与党議員のうち少なくとも12人が賛成票を投じた。180日以内に憲法裁判所が弾劾訴追の是非を判断する。憲法裁が弾劾を認めれば、尹氏は罷免され、60日以内に大統領選が実施される。尹氏が3日夜に宣布した「非常戒厳」を巡り、最大野党「共に民主党」など野党6党は「違憲」だと批判。尹氏の弾劾を求める議案は7日、国会での投票に与党議員のほとんどが参加せず廃案となったが、野党側は12日に2回目の弾劾訴追案を提出していた。捜査当局は、内乱などの容疑で尹氏の立件を目指している。現職大統領には不訴追特権があるが、内乱罪は例外。尹氏は12日、「弾劾しようが捜査しようが、私はこれに堂々と立ち向かう」と述べている。(以下略)---当然そういう結果になるだろう、と言うとおりの結果になりました。一度目の弾劾では、その前に尹大統領が謝罪して、与党に人気を一任と早期辞任にも含みを持たせたことから、与党側が欠席という確実な弾劾回避策を取り、弾劾が回避されました。ところが、一度目の弾劾が回避されると、大統領は引用記事にあるように居直って戒厳令の正当化をはじめ、いったんは示唆した早期退陣も反故にしたことから、与党陣営が態度を硬化させ、それでも党としては弾劾「反対」としたものの、議員の強い拘束をかけられず、少なくとも12人の造反者が出たと報じられています。韓国憲法77条で認められている戒厳令を出してよい状況(戦時などの国家非常事態)にあてはまらない上に、憲法で定められている国会への戒厳令の報告及びその解除の表決を、国会封鎖と議員の拘束によって妨害しようとした時点で、明らかに違法、違憲の行動であり、クーデターの企てであったことは明白です。ところで、日本ではあまり報道されていませんが、今回のクーデター未遂事件は、12月3日に突然大統領が戒厳令を発令して始まった、というものではなく、もっと長い伏線があったようです。普段はこの人の投稿はあまり、というかまったく好意的には見ていないのですが・・・・・12月の韓国戒厳令事件は尹大統領による憲法違反の自己クーデター。10月の平壌無人機侵入事件も関連疑惑12月3日23時に韓国の尹大統領は突如として戒厳令の「非常戒厳」を宣布しました。しかし北朝鮮は一切何も特異な行動を起こしていませんでした。この戒厳令は韓国の少数与党による議会運営の停滞を打破するために、国会を武力を用いて制圧して野党の活動を禁止しようとした、信じ難い動機による行動です。~2024年10月11日に北朝鮮が「韓国軍の無人機が平壌に侵入して伝単ビラ(政治宣伝ビラ)を撒いた」と激怒して10月18日に回収した証拠の無人機の残骸の写真を提示した事件は、今から思えば、韓国側がわざと北朝鮮を挑発して攻撃を誘発して戒厳令を出す正当な根拠を得たかったのでは? そう疑われています。(以下略)---ミリオタの神聖3文字氏にしては、珍しく正論を言っています。そして、ほかならぬ韓国で報じられており、動かぬ証拠の写真もあることから、これについては事実と判定するしかありません。10月に北朝鮮が「韓国軍の無人機が侵入してビラをまき散らした」と発表した当時は、韓国側が否定していたこともあり、「また例によって北朝鮮のデマか」と思われていました。ところが、最初は関与を否定していた韓国軍は、この件について次第に肯定も否定もしなくなっていき、さらに、北朝鮮側から、侵入した韓国軍ドローンの残骸という「動かぬ証拠」を突き付けられてしまったわけです。北朝鮮が公開した写真に写っているドローンは、韓国軍が装備して、軍事パレードでも公開している「遠距離偵察用小型ドローン」と、細部に至るまで形状が完全に一致しており、かつ製造メーカーが韓国軍以外に納入した実績もない、ということです。つまり、韓国軍のドローンが侵入してビラをまき散らした、というのが北朝鮮のデマではなく、事実であったことが、ほぼ確認されてしまいました。作戦実務を担ったと思われるドローン作戦司令官は、「誰から指示されてどこから無人機を飛ばしたのか」という野党議員の質問に「確認することはできない」という答え方をして、やったこと自体を否定をしなかったことから(日本でいうところの「記憶にございません」でしょう)、実質的にやったことを認めたに等しいと受け取られています。そして、どうやらこのドローン攻撃が、尹大統領の意向によって北朝鮮との間に騒乱を引き起こし、それを戒厳令の根拠にしよう、というストーリーだったことが疑われています。ところが、北朝鮮はこの挑発に乗ってこなかった。考えてみれば当たり前の話で、北朝鮮は1万2千人と言われる兵力をウクライナに送り、多くもない弾薬の備蓄をロシアに売っています。それ自体はウクライナ侵略への加担であり、とんでもないことです。しかし同時に、大きな戦力をはるか遠方に出しているし、ウクライナで手いっぱいのロシアから支援が受けられる可能性もないこのタイミングで、韓国側の挑発行為に乗るのは明らかに自殺行為です。その程度の計算は北朝鮮もしたのでしょう。例の汚物風船程度の反撃はあったものの、それ以上の攻撃はなく、戒厳令の根拠にできるような戦争、事変その他の国家非常事態は起きませんでした。それで、尹大統領は焦って、根拠を欠いたままの戒厳令発令という愚策に追い込まれていった、というわけです。ドローン事件が本当に韓国軍のドローンの仕業だったとバレた時点でその責任追及が大統領まで及ぶのは時間の問題ですから、「座して死を待つよりは成算が低くてもやってしまえ」ということだったのかもしれません。もちろん、現時点ではまだ確認された事実ではありません。しかし、蓋然性はかなり高いと判断せざるを得ません。北朝鮮の奥深くにドローンを侵入させるという作戦を、大統領の意向もなく軍が勝手にやるとは、到底考えられないわけです。ということは、少なくともこの作戦が尹大統領の命令または承認のもとに行われたことは、ほぼ確実です。あとは、その時点で尹大統領に、北朝鮮と戦端を開いて戒厳令を敷く、というところまでの計画があったのかどうかです。この点についての動かぬ証拠が出てくるかどうかは分かりません。ただ、現時点でも尹大統領の行動(自己クーデター)が内乱罪に当たる可能性は高く、その捜査が進められていますが、一連の疑惑は「自らの政治的窮地を脱却するために北朝鮮との間に戦争を起こしてそれを根拠に戒厳令を布告して野党、反対勢力を取り締まろう」というさらに大規模なものであった可能性が出てきているわけです。もちろん、すでに明らかになっている部分だけでも十分にひどいのですが。そして、北朝鮮がこの挑発に乗らなかった(状況的に乗ることが不可能だった)からよかったものの、これが契機で小規模ではあれ※武力衝突に発展していた場合、日本も含む周辺諸国の受ける影響も甚大なものになったはずです。※この程度の挑発で、全面戦争にまで発展する可能性は、さすがに考えにくいですが、尹大統領が戒厳令を無理矢理こじつけられる程度の衝突まで拡大した可能性は否定できません。尹大統領は親日だからと擁護している人も日本の特にネット上では多いですが、そうなっていた場合の日本への悪影響は念頭に置くべきではないのか、と思います。