理屈のすり替えがひどすぎる
<主張>選択的夫婦別姓 経団連は提言取り下げを議論の土台が、崩れたといえよう。経団連が昨年6月に公表した選択的夫婦別姓制度導入を求める提言で、理由として挙げたビジネス上の課題の多くが実際には解消済みだと自民党の会合で指摘された。会合に出席した経団連副会長もそれを認めた。根拠に乏しいこの提言は与野党の別姓推進派に利用され、国会審議にも影響を及ぼした。経団連が国民をミスリードしたことになる。猛省が必要で、提言は取り下げてもらいたい。政府や自民党は別姓による不便・不利益の解消に向け旧姓の通称使用拡大を進めてきた。一方、経団連は提言で、通称使用によるトラブルとして複数の事例を挙げ、別姓の早期導入を訴えてきた。だが、3月の自民党のワーキングチームで、各省庁の担当者から改善が進んでいる状況が明らかにされた。経団連の提言が「通称では不動産登記ができない」とした弊害は~旧姓併記が可能になり解消されていた。多くの金融機関で口座が作れないと指摘した点は、4年3月時点でも7割の銀行が旧姓名義の口座開設を認めていた。出席議員から実態に合わない提言を難ずる声が上がったのは当然だろう。~経団連会長は7日の会見で提言の不備が明らかになった点を問われ、「便利か不便かという問題ではなく、アイデンティティーの問題」と語った。提言の主眼は不便の解消にあったはずだ。選択的とはいえ夫婦別姓は、子供がどちらかの親と別姓になる「強制的親子別姓」を意味する。親よりも弱い子供の立場を優先したい。別姓導入は戸籍制度も変質させ、国民を家族の一員よりも砂粒のような個人として扱う契機となる。アイデンティティーという言葉を振りかざせば認められる話では決してない。経団連は、家族や社会の毀損に与してはならない。---いやはや、産経の理屈は破綻しまくっていて、話になりません。「通称では不動産登記ができないとした弊害は旧姓併記が可能になり解消されていた。」↓結局「併記」が前提で旧姓だけで登記はできないですよね。そして、4年3月時点でも7割の銀行が旧姓名義の口座開設を認めていた。「4年3月時点でも7割の銀行が旧姓名義の口座開設を認めていた。」↓つまり、3割の金融機関は旧姓名義の口座開設を認めていないわけです。例えば、金融機関の中でも超大手であるゆうちょ銀行はゆうちょ銀行では、旧姓を使用した口座開設はできません。旧姓を併記して口座開設することもできません。ただし、旧姓を通称として使用している場合でも、口座開設は可能です。旧姓で取引をするには、現姓(法的に認められた氏名)で口座を開設し、通称として旧姓を使用していることを窓口で伝える必要があります。ということだそうです。結局、戸籍上の姓でなければ口座は開設できず、旧姓で取引はできる、というややこしい話です。その他の銀行でも、一部の取引は未対応だったり、特別な手続きが必要だったりします。これを「解決」と言われても、どこが?としか思えません。選択的とはいえ夫婦別姓は、子供がどちらかの親と別姓になる「強制的親子別姓」を意味する。親よりも弱い子供の立場を優先したい。↓この理屈も意味不明です。確かに、夫婦が別姓になれば、子どもは両親のいずれかとは別姓になります。で、それのどこが問題ですか?これについては、以前に記事を書いたので繰り返しは避けますが、親子別姓になるのが問題だと考える人は同姓を選択すればよいのであって、それが問題と思わない人に対してまで、同姓を強いる、どんな権利があるのでしょうか。そりゃ、現に夫婦同姓の親から生まれて生活してきた子どもの中には「明日からお母さんだけ名字が旧姓に戻ります」と言われれば「嫌だなと」思う子もいるかもしれません。でも、最初から別姓を選んだ夫婦から生まれた子ども(現状でも国際結婚の場合は原則的にそうなります)は、生れた時からそうなんだから、特に違和感はないでしょう。その程度の問題です。経団連のやること、主張していることには、私もすべて賛成ではない、というか反対することの方がずっと多いのですが、ことこれに関しては全面的に賛成である、と申し上げておきましょう。世界の主要国の中で、夫婦別姓が認められていない国は日本だけだとされます。夫婦で異なる姓を名乗ることにそんなに問題があるなら、世界中で夫婦別姓が認められているわけはないのです。理屈にもならない理屈をこねくり回して、当然認められるべき選択肢を奪うような愚行はやめるべきです。