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『犬の鼻先におなら』

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2008年07月30日
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諸星独壇場。異形の愛。題名はトホホ。

 諸星大二郎といえば一部に熱狂的なファンがいる(若干マニアックな)漫画家です。

 『生物都市』の鮮烈な印象は未だに記憶に新しいです。あんまり異様過ぎる話なので手塚賞受賞の際、SF小説に似た物はないか、筒井康隆氏が尋ねられたというエピソードがあるそうです。
 また、諸星大二郎は画風も独特。独特すぎてアシスタント泣かせという話も伝わっています。

 本作品は、その異様なストーリーが異様な画風によって展開される諸星大二郎の作品の典型例です。
 着想も『生物都市』の流れに連なる物でしょう。

 (それにしても題名、何とかならないのか。安っぽいSF冒険物みたいだ。最後の短編の題名『風が吹くとき』の方が良いんじゃない。)

 家畜、農作物の遺伝子改良、加えてバイオテロ、バイオ戦争の影響で、生物の遺伝子群が混乱してしまっている地球が舞台。
 生物の姿形など変形、合成されて、人面犬などニュースにもならない世界です。辛うじて人間は人の形を留めていますが、難民や下層民衆ではかなり変形が進んだ人も多い。
 諸星大二郎の独特の画風が見事にマッチしています(この人、本当に生物が何かと“引っ付く”の好きだね)。
 グロテスクでいて、ユーモラスでもあり、幻想的美しくさえある、異形の生物群(特に人間)。

 本編6作品に描き下ろし超短編5作品を収めた短編集です。
 遺伝子群の混乱が軸となっているだけに、“愛”がテーマになった作品が多いですね。

 以下、本編6作品をネタばれにならぬ程度に紹介。

 「野菜畑」
 のっけから“来ます”。鶏とキャベツの合成農作物(俺嫌だよ。こんなの食べられないよ)。他、羊とカリフラワー、マグロと南瓜等。
醜悪なんだか、可愛いんだか、笑えるんだか、よく判らない農作物を栽培している農園が舞台。
 そこに“雑草”が生えてくるのですが、これが“美少女”なんですね(訳判らん(笑)。しかも諸星先生、生え方「変」過ぎです。完成した頭が地面から“生えて”いて、成長すると段々せり上がって全身が地上に出てくる(笑)。
 スケベ心を起こした農夫はそれを除草せずにおきます。
 そこへ難民の群れが現れて....。

 鮫に蜂、蜘蛛、宇宙人からゴジラまで、様々な“生物”が人類を襲って来ましたが、“美少女”というのは(しかも裸(*^O^*)。

 なお、一応理屈があって「雑草が美少女の形態をしていると農夫が除草しづらいから」という、環境適応しているらしい(笑)。


 「養鶏場」
 一番グロテスクな作品。同時にブラックユーモアに満ちています。
 ここの鶏、顔が人間なんですよ(>_<)。しかも喋る。
 喋るといってもオウムと同じで無意味な事を喋っているだけらしいのですが。
 そして、無意味である事が反って不気味さを盛り上げています(ちなみにおばさんやギャル風の言葉なので可笑しくもあり)。
 とこらが、主人公が一羽の雌鳥をマシンアームではなく、素手で捕獲した所、養鶏場の鶏たちの様子に変化が起きます。彼が近づくとぴたっとお喋りを止めるのです。しかもモニター室で監視すると鶏達が本当の会話のように意味をなした会話をしているのです。「あの男が殺したのよ」「誘拐されてレイプされて殺されたのよ。その上食われたんですって」
 主人公は襲われた事をきっかけに、内部作業をロボットに全て任せる事にするのですが....。


 「案山子」
 純愛ものです。“鳥”と“案山子”の。
 農園を守る旧式なアンドロイド案山子が主人公。彼は最新型の(ほとんど兵器)案山子に活躍の場を奪われています。そこへ今日も“鳥”の群れが啄ばみに舞い降ります。
 「鳥」と言っても人間そっくり。若い女性の天使のようです(だいたい本当に“鳥”なのか、不明。難民が変化したものかも)。
 “鳥”たちは瞬く間に殲滅されるのですが、一羽だけ生き残ったものがありました。彼はある種の気まぐれから、この“鳥”を助けるのですが....。

 “案山子”の使命は“守る”事。しかし、農園は既に彼を必要としていないのでした。
 p94「でも俺は何かを守るために作られたんだ。言ってみりゃ俺のアイデンティティってやつさ」
 守るべき対象を持たずして立ち続ける“案山子”と、追われる身の“鳥”。
 これは“ハードボイルド”の世界ですね。案山子だけど。

 ラストも渋いぞ。

 ちなみに案山子の名前は「カカレンジャー」。渋くない(^o^)。


 「百鬼夜行」
 少年と少女の淡い恋の話。
 子供達の間で、「百鬼夜行」の噂が広がっています。主人公の少年は噂を確かめるべく廃墟に潜むのですが、そこで彼は一人の少女と出会います。少女は言います、あの人達はお化けじゃなくて人間なんだ、と。
 何故、少女は「百鬼夜行」を追いかけているのか。少年が毎日飲まされる薬は何の為なのか。

 人間の中に既に非人間的要素が入っている(本書ではズバリ遺伝子という実体なんですが)。「人間」という概念そのものが問題になっている訳ですね。
 また、人間は本当に“人間的”か、寧ろ異形の非人間の方が“人間的”ではないのか(妙な言い方ですが)という、一種の価値観の転換も興味深い点です。
 また、抑圧されている異形の者達が、楽園を夢見て飛び出す姿は、何となく「出エジプト記」を連想させます。


 「シンジュク埠頭」
 関東地方は水没しているようです。港に現れた男は新聞記者だと名乗り、素潜りの少年に人魚をみた事はないかと尋ねます。否定する少年ですが、実は人魚を知っているのでした。一方、男の正体は....。
 この作品も前作「百鬼夜行」を引き継いで、抑圧されている異形の者の彷徨が背景にあります。

 魚の背中に人間の耳が生えていたりして、ギョッ。


 「風が吹くとき」
 最終話。構成が綺麗にまとまっています。本作品集の中で最も良く出来た作品ではないでしょうか。
 荒地を彷徨う一人の男。やがて彼は異形の者が集う集落に到達する。彼は妻を捜し歩いていたのだった。異形の姿に変じているであろう妻を。
 最終話は地球の生物相全体の変容を背景にした、物悲しい恋の話です。
 男はぱっとしない人間で、その事を自覚しており、一方女の方は美しいモデル。
 遺伝子の変容が確認された後、女は言います「根拠はないが私はきっと美しい動物になる」と。また、こうも言うのです「あなたの方が心配だわ。あなたはきっと野生の世界でも要領が悪いわよ」。

 最後に二人は再会するのですが...。
 何となく男は再会するとどうなるか知っていたような気がしますね。それでも一目会いたかったのでしょう。
 
 遺伝子の変容と、それに伴う新たなる自然界の掟に、従容と従う人々。
 ある種の諦観が作品の根底に流れていて、それが作品に深みを与えています。

 
 良く出来た作品集だと思います(編集者が付けたであろう題名以外は)。
 オススメ(^-^)dです。





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最終更新日  2008年07月31日 00時41分38秒
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 Re:諸星大二郎『バイオの黙示録』を読む(07/30)   鯉口のおせん さん
千鳥の旦那、ご足労かけちゃいましたネ。
諸星大二郎と星野之宣はあたしのお気に入りでございます。
ちょうどいま、異界録を読み返しているところでございます。
諸星サンの絵がアシスタント泣かせだったとは、なるほど。
あのお方は作画力が少々不安定(下手うま)だと思ってました。
千鳥さま、ご紹介のこの御本も読みたいものでございます。
では。

(2008年07月31日 18時50分55秒)

 Re[1]:諸星大二郎『バイオの黙示録』を読む(07/30)   千鳥道行 さん
鯉口のおせんさん
>千鳥の旦那、ご足労かけちゃいましたネ。
何をおっしゃいますやら。本探しにバタバタするのも良いもんです。
>諸星大二郎と星野之宣はあたしのお気に入りでございます。
なんと!ファンでしたか。\(^O^)/
さすが、おせんさん!
そう言えば、日本の古典文学への影響浅からぬ中国伝奇小説に材をとった作品が多いですね。
この辺り、「江戸」在住のおせんさんとしては、見逃せない作品が多いのも頷けます。 (2008年08月03日 14時12分06秒)


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