1063682 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

『犬の鼻先におなら』

『犬の鼻先におなら』

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

プロフィール

千鳥道行

千鳥道行

カレンダー

カテゴリ

お気に入りブログ

ますび日記 須藤真澄さん
おせんの江戸日誌 鯉口のおせんさん
スポクラ依存症の映… gymjankieさん
アンティークな琥珀堂 マダム・ゴージャスさん

コメント新着

 植園版@ なにいってんだおめぇ オッッッッッッッスァン、粗末なえのきし…
 JamesDup@ BLADENET Free Download game hacked MAGIX Best Service Engine UNLOCKED v2.1…
 ひろこ@ Re:池田晶子・陸田真志『死と生きる 獄中哲学対話』を読む。その一(08/20) 殺人犯と言う犯罪は、特別な人間が犯す犯…
 山川豊@ Re:パウロ・コエーリョ『ベロニカは死ぬことにした』を読んだ(08/29) 筆者さんは他人の目や社会通念を一切考え…
 http://buycialisonla.com/@ Re:谷岡ヤスジ『谷岡ヤスジ傑作選 天才の証明』を読む(05/04) cialis cheap pricescialis and grapfruit…

フリーページ

ニューストピックス

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2013年06月20日
XML
傑作。カタルシスゼロの大人の味わい。たとえハーモニーは崩れるとも、人生は続く。

 文句なく傑作だと思います。お勧めです。
 ただし、若い方は感情移入が難しいかもしれませんね。

 粗筋。
 世界的に著名な弦楽四重奏団「フーガ」。記念すべき25周年に演奏するのは難曲ベートーベンの「弦楽四重奏第14番」。
 ところが、リーダー的立場の老チェリストがパーキンソン病に蝕まれてしまう。引退を決意するチェリスト。友情以上の固い、しかし繊細な絆で結ばれていた弦楽四重奏団メンバーに動揺が生じる。
 やがてその動揺は、メンバー達が当人達も気付かずに蓄積していった様々な葛藤を表面化させて行く。競争心、嫉妬、怒り、そして浮気。
 果たして、25周年記念演奏会の幕が上がり、「弦楽四重奏第14番」は演奏されるのだろうか。


 粗筋のみですと、他にも同工異曲の作品があるのではと、お思いになるかと思います。
 私もロックバンドの話で観た事があるような気がします。仲のよかった仲間が、途中から仲間割れ。しかし、ある切欠から再び友情を取り戻し、ロックコンテストやらレコーディングやらに漕ぎ着け、目出度し、目出度し。こういった話。

 ただ、思い出して欲しいのですが、貴方がご存知のこういった話、それは、「青春物」ではありませんでしたか。そして「青春物」に相応しく最後はハッピーエンドで、スカッと爽やか、カタルシスが感じられる映画だったのではないでしょうか。

 この映画は違います。何しろ「25年目」ですから。全員、中高年(笑)。
 簡単にやり直せるようにはなりません(というより、無理でしょう)。
 
 “文芸映画(ここではこの語を褒めて使っています(笑)”なので、この辺り、娯楽色の強い、所謂“ハリウッド”映画とは違う展開です(所謂“ハリウッド”映画なら、絶対「年齢なんか関係ない。いつでもやり直せる。いつでも心は若者さ。若さバンザイ」という話になるのでしょう)。
 
 その為、最後に、スカッと爽やかなカタルシスが観客に与えられる事はありません。ある意味、苦い映画なのです。

 だが、最後の最後に、希望ならざる“希望”とでも言うべきものが立ち上がり、話は「解決が付かない」という“解決”をみる事になります。
 逆説的な話です。
 若者ではないから修復は不可能。しかしそれ故に、「人生にはそういう解決が付かない問題もあるのだ」という知恵を身につける事が可能になるのです。

 ただ、最後の最後にメンバーに大きな変化があった後の演奏の音色、それはそれ以前に比べ、力強く、明るく、希望に満ちたような響が感じられます。
 やっぱり、ハッピーエンドなんでしょうね。

 
 ベートーベンの「弦楽四重奏第14番」を人生のメタファーに持ってきた本作品、着想の点で素晴らしいです。
 ベートーベンの最高傑作の一つとも言われ、愛好家の多いこの楽曲は、全7楽章をアタッカ(楽章の境目を切れ目なく)で演奏する事が要求されます。約40分間弾きっぱなし。人生の様に止まることなく進むよりしょうがない。
 たとえ演奏するに従って、楽器の音程が狂ってきたとしても、途中で調律は不可能。人生と同じように、元に戻って最初からという訳には行きません。
 “ハーモニー”が徐々に失われていく中、どう“曲”を弾き続けるのか

  
 老チェリスト役にクリストファー・ウォーケン。私が最初に印象に残ったのは『デッドゾーン』でした。もうスッカリお爺ちゃんですね。最近だとテレビ東京『孤高のグルメ』シリーズでの飄々とした演技が印象的です(それ違う違う、松重豊さん)。
 他、「冷静沈着の筈がやっぱりそりゃマズイよ」の第一ヴァイオリン奏者役にマーク・イヴァニール。「秘めた矜持」と「馬鹿やっちゃって」と「鉄拳」であがくの第二ヴァイオリン奏者役にフィリップ・シーモア・ホフマン。「妻、母、演奏家の全部は無理が露呈」のヴィオラ奏者役にキャサリン・キーナー。「意外とこの子が一番大人の判断を示したんじゃない」のヴィオラ奏者の娘役にイモージェン・プーツ。見ごたえばっちりの一流の役者さん達、演技の火花が散ります。


 本作品、“欧米文化”というものも感じます(テーマは充分に普遍的なんですが)。
 「あそこで、あんな直球で事を言わないだろう。やらないだろう。空気読むだろう」という気がするシーンもあって、でも当然の事ですが、そもそも“空気”に当たる概念が欧米にはないのでした。よって、即座に亀裂は表面化。
 日本人だともっと隠微な展開になっていたかも知れません。文化の“チューニング”能力(これはこれで大変なんだけどね)。


 ベートーベンの「弦楽四重奏第14番」は、バッと上がって、ポンッて感じで終わる印象。これはこれで幸福な人生かな。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2013年07月02日 21時30分20秒
コメント(2) | コメントを書く
[φ(..;)来た見た書いた] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
別の画像を表示
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、こちらをご確認ください。


 Re:ヤーロン・ジルバーマン監督『25年目の弦楽四重奏』を観た(06/20)   マダム・ゴージャス さん
老チェリスト役にクリストファー・ウォーケン。私が最初に印象に残ったのは『デッドゾーン』でした。

同じです。
目がよかった。

この映画、いつか見られますように。 (2013年07月11日 16時27分42秒)

 Re[1]:ヤーロン・ジルバーマン監督『25年目の弦楽四重奏』を観た(06/20)   千鳥道行 さん
クリストファー・ウォーケンは名優ですね(名前もスゴイように感じられます(笑)。 (2013年07月31日 22時42分25秒)


© Rakuten Group, Inc.