諸星大二郎『バイオの黙示録』を読む
諸星独壇場。異形の愛。題名はトホホ。 諸星大二郎といえば一部に熱狂的なファンがいる(若干マニアックな)漫画家です。 『生物都市』の鮮烈な印象は未だに記憶に新しいです。あんまり異様過ぎる話なので手塚賞受賞の際、SF小説に似た物はないか、筒井康隆氏が尋ねられたというエピソードがあるそうです。 また、諸星大二郎は画風も独特。独特すぎてアシスタント泣かせという話も伝わっています。 本作品は、その異様なストーリーが異様な画風によって展開される諸星大二郎の作品の典型例です。 着想も『生物都市』の流れに連なる物でしょう。 (それにしても題名、何とかならないのか。安っぽいSF冒険物みたいだ。最後の短編の題名『風が吹くとき』の方が良いんじゃない。) 家畜、農作物の遺伝子改良、加えてバイオテロ、バイオ戦争の影響で、生物の遺伝子群が混乱してしまっている地球が舞台。 生物の姿形など変形、合成されて、人面犬などニュースにもならない世界です。辛うじて人間は人の形を留めていますが、難民や下層民衆ではかなり変形が進んだ人も多い。 諸星大二郎の独特の画風が見事にマッチしています(この人、本当に生物が何かと“引っ付く”の好きだね)。 グロテスクでいて、ユーモラスでもあり、幻想的で美しくさえある、異形の生物群(特に人間)。 本編6作品に描き下ろし超短編5作品を収めた短編集です。 遺伝子群の混乱が軸となっているだけに、“愛”がテーマになった作品が多いですね。 以下、本編6作品をネタばれにならぬ程度に紹介。 「野菜畑」 のっけから“来ます”。鶏とキャベツの合成農作物(俺嫌だよ。こんなの食べられないよ)。他、羊とカリフラワー、マグロと南瓜等。醜悪なんだか、可愛いんだか、笑えるんだか、よく判らない農作物を栽培している農園が舞台。 そこに“雑草”が生えてくるのですが、これが“美少女”なんですね(訳判らん(笑)。しかも諸星先生、生え方「変」過ぎです。完成した頭が地面から“生えて”いて、成長すると段々せり上がって全身が地上に出てくる(笑)。 スケベ心を起こした農夫はそれを除草せずにおきます。 そこへ難民の群れが現れて....。 鮫に蜂、蜘蛛、宇宙人からゴジラまで、様々な“生物”が人類を襲って来ましたが、“美少女”というのは(しかも裸(*^O^*)。 なお、一応理屈があって「雑草が美少女の形態をしていると農夫が除草しづらいから」という、環境適応しているらしい(笑)。 「養鶏場」 一番グロテスクな作品。同時にブラックユーモアに満ちています。 ここの鶏、顔が人間なんですよ(>_