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カテゴリ:素朴な疑問
昨年から中国株が軟調です。
消費者物価の上昇が進んでいるため、利上げ懸念があるためとされています。 中国に限らず一般的に、インフレ懸念=利上げ と条件反射的に言われます。 しかし私は、インフレ(特に消費者物価の上昇)対策として、本当に利上げが有効なのか、疑問を感じます。 物価は需給で決まります。 日銀もCPIを重視すると言っていますので、話を単純にするために消費者物価に限定して考えると、 需要=消費者の購買力 供給=製造者の供給能力 となります。 「需要>供給」だとインフレが進み、「需要<供給」だとデフレになります。 利上げすると、需給関係にどのような影響を与えるのか、考えてみましょう。 まずは需要側ですが、一頃のアメリカのように借金して過剰消費しているならいざ知らず、日本や中国などの国では貯蓄が多く、利上げは消費者の利息収入を増やす効果があります。なお、貯蓄率よりも貯蓄残高の方が重要です。 住宅ローン等のケースを除けば、利上げにより購買力は高まります。 すなわち需要が増える可能性があります。 一方供給側にとっては、資金調達がやりにくくなり、設備投資を抑制するため、供給能力は増えません。 古い設備が廃棄されることも考えると、供給能力は減る場合もありえます。 この結果、「需要>供給」となりますので、利上げすることにより、インフレを促進する効果があることになります。 利下げをすると、この逆のことが起きます。 需要側である消費者の金利収入が減少し、購買力が低下します。 供給側にとっては設備投資がしやすくなり、供給能力が高まります。 この結果、「需要<供給」となり、利下げはデフレをもたらず効果があります。 インフレ対策として利上げをするとインフレを促進し、デフレ対策として利下げするとデフレをもたらすというのは、常識とされていることと反対ですね。 なんでだろう? 何か重要な点を見落としているのでしょうか? 消費者は借金しまくって消費しているわけではないので、利上げで消費が抑制されることは無いと思うけど。 資源インフレ対策としては、中国が利上げによって建設投資を抑制して資源の消費量を減らしたり、アメリカが利上げして商品市場に過剰マネーが流入することを防ぐことにより商品価格を抑えることは、効果がありそうですけどね。 追記(7月13日) 今日の日経新聞夕刊の中前忠さんのコラムに、私の感じた疑問と関連することが書かれていましたので、抜粋します。 「バーナンキ議長は、日本のデフレは日銀が緩和政策を小出しにしたのが原因と指摘。FRBは果断に対応することで、デフレは起こさせない、と主張してきたが、米国で雇用問題は深刻さを増している。理由は簡単だ。 供給力過多の構造不況に対して金融緩和政策は逆効果なのである。 需要の刺激ではなく、供給力の削減が正しい政策なのである。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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>物価は需給で決まります。
ここの前提を勘違いしているので、 全ての思考の道筋、結論が誤っているようです。 物価はマネーサプライで決まります。 あとはご自分でお考えになることをオススメします。 (2011.01.31 03:35:42)
kenさん、コメントありがとうございます。
私もマネーサプライが非常に重要な要素だとは思っていますが、あくまでもそれが需要に結びついた時にのみ、効果がでるのではないでしょうか。 かつて日銀が量的緩和をいくらやっても、デフレ解消効果がなかったことが、その一例です。(金融安定化には効果があったとされます。) たしかに、物価が需給で決まるという前提が誤っていれば、私が書いたことは全てあてはまらなくなります。 しかしマネーサプライは需給に影響を与える重要な要素であり、需給が物価を決めることには違いないと思うのですが。。。 (2011.01.31 07:46:37)
>しかしマネーサプライは需給に影響を与える重要な要素であり、需給が物価を決めることには違いないと思うのですが。。。
マネーサプライが需給に多少影響を与えたとしても、 それで需給が物価を決めているとは言えないですね。 もちろん厳密にはマネーサプライが物価を決めてるとは誰も証明はできないのですが。 水掛け論になるので枝葉の議論はやめますが、 私が伝えたいのは金融先進国のアメリカ、イギリスではその考え方が常識であるということです。 あとは一例を掘り起こすと見えてくるものもあります。 日銀が量的緩和を行った。でもデフレが解消しない。だからマネーサプライは物価に関係しない。 といった議論をしたいのだと思いますが、 実はあの時は量的緩和してもマネーサプライは大きく増えていなかったのです。 もちろんその理由もあります。 先ほどの一例に限らずそういった経済事象に対し、事象のプロセス、メカニズムを理解することが必要です。 この作業を丹念に行っていけば物価は何で決まるか、といった原理原則は自然に導き出されるのだと思います。 なぜ、物価はマネーサプライで決まると信じられるのか?と考えると 数々の経済事象のプロセス、メカニズムを検証した時におおよそ論理矛盾無く説明がつくからなのです。 あとはご自身の精進次第だと思います。 偉そうな書き方ですいません。 ブログのファンなので何かしらのヒントになればと思いコメント差し上げました。 (2011.02.01 01:46:29)
kenさん
>日銀が量的緩和を行った。でもデフレが解消しない。だからマネーサプライは物価に関係しない。 >といった議論をしたいのだと思いますが、 いえいえ。私は決してマネーサプライは物価に関係しないと思っているわけではありませんし、何かを主張したいわけでも、議論したいわけでもありません。 世間で信じられている迷信とは違い、経済金融の専門家達がインフレ抑制に利上げは有効であると共通認識がありますので、正しいことなのだと思っています。 ただしその理由について、本文で書いたように考えると、素朴な疑問を感じてしまったというだけです。 >実はあの時は量的緩和してもマネーサプライは大きく増えていなかったのです。 日銀はベースマネーは増やせますけど、銀行貸し出しを増やすことは難しいですもんね。窓口指導が有効だった時代ならできたのかもしれませんが。 株をやっている人間としては、買いたい人が増えると価格があがるという考えに、どっぷりとつかっています。 需要と供給の間の需給だけではなく、モノとマネーの需給なのかな? いろいろと考えてみます。 (2011.02.01 07:30:09)
こんにちわ
調べ物の最中にこちらの記事にたどり着きました 利上げすると需要が高まる可能性があるという事ですが インフレを抑制するために金利を上げる際、同時に増税や緊縮財政といった政策により需要を抑える事ができそうです。 反対にデフレ時には消費を促進させるために減税や公共投資の政策をしなければなりませんね。 後追記の部分ですが、供給力を削減した場合失業者が増えることが考えられるので対策が必要かもしれません。 今の日本は何らかの方法で需給ギャップの解消を考えなければなりませんね。 (2011.10.01 16:13:49)
hihiさん
休眠状態のブログへようこそ。 「インフレ=利上げ」という条件反射的(短絡的)な意見が多かったので、本当にそうなのか、思考実験をしたものです。 実際の政策においては、金融政策と財政政策を織り交ぜ、各政策が間接的に与える影響も考慮しなければいけないので、複雑ですよね。 特に最近は、実体経済への影響だけではなく、金融市場での反応も気にしなければいけないので、政策担当者は大変だと思います。 いくら大変でも、しっかりやってもらわなくては困りますけど。 >今の日本は何らかの方法で需給ギャップの解消を考えなければなりませんね。 本当ですね。もう20年近く言われていることなのに解消できないので、思い切った手を打つ必要があると思います。 東日本大震災は、契機になると期待したのですけどね。 (2011.10.01 18:16:29) |