2007/09/11(火)18:50
人の財産
大学2年の時だった。
土曜日にたまたまパチンコをせずに下宿に帰ったときにドアーに張り紙が張ってあった。
電報である。
「ハハタオレル。スグ カエレ。」
田舎に帰ると病院の手中治療室でマスクをして酸素呼吸をした母がいた。
それ以来ずっといつも近々死ぬかもしれないと思っていた。
その母も頭・腰・腎臓・交通事故と大きな病気を繰り返してもう83歳になった。
そして先週の金曜日にまた倒れた。
日曜日には緊急病院に連れて行った。
今は少ししか動けないが、命に別状はない。
はっきりいって長生きだ。
クラス会であったM君は母の病状を気にして東京から帰ったようだ。
「認知症に脳梗塞を患った。
病室に行ったらお宅は誰ですか?と言われたよ。」
もちろん暗い顔をして私に話しをしていた。
「お前は東京に行ってずっと親の顔も見ていないからどってことないだろう。
たいした心配もせずにそれくらい言われてもしょうがないよ。」
「そうだな。俺は幸せだ。」
「そうだよ。親に何もせずに死ぬ前にいい顔を期待するのが間違いだ。
ところで財産はあるの?」
「そこだよ。親父の船員年金が一月に36万円もある。
1ヶ月に20万貯金しているからもう4000万円あるんだ。」
「親父は元気なのか?」
「ぴんぴんしていやがる。」
彼の顔はまた暗くなった。
「それゃ、弟が貰うべきだよ。
弟は地元でずっと親と暮らしているんだ。」
そんな大金を彼が手に入れるのは私としても甚だ面白くない。
「俺、貰えないかなー。
母親の葬儀代は出そうと思っているんだ。」
「そりゃ長男だから当たり前だよ。
葬儀代を払って財産は弟にやれよ。」
「お前は弟の味方か?」
「いやいや親を看るのは大変だ。
お前は自由にやってきたじゃないか。
そんな大金を貰う筋じゃない。」
「そうかなあー。」
「絶対にそうだ。」
なんであれ人が儲かりそうになると絶対に阻止するのだ。