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堀古英司の「米国株式の魅力」


新自由の女神



2019.04.26
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 ここ数年、日本に行くたびに感じることがあります。それは、米国のリセッション(景気後退)を予想する人が驚くほど多いことです。理由を聞くとそのほとんどが単に「金融危機から10年を超えたので」というものです。確かに米国では歴史的に、おおむね10年に1回の頻度でリセッションが訪れています。しかしこれは私に言わせると、チャートでXX日移動平均線を上回ったとか、RSI(相対力指数)がどうだとか、テクニカルで経済を予想しているのと同じです。本当にテクニカル分析が当たったり、ぴったり10年に1回リセッションが来たりするのであれば、分析という仕事は楽で良いのですが、残念ながらそのような楽な分析に資本主義がご褒美を与えることはないと思います。

 リセッション予想をよく聞くようになったのは、2015年後半くらいだったと思います。金融危機からある程度時間が経っていることに加えて、当時よく理由として挙げられたのが中国経済の減速です。実際、当時は講演させていただく前に来場者からいただいた質問の多くが、米国のリセッションに関するものでした。ダウ平均株価の水準は当時1万8,000ドル近辺でしたが、現在はその1.5倍の2万7,000ドル近辺で取引されています。

 米国はこれまで、海外の経済要因でリセッションに陥ったことはありません。もちろんこれからそのようなケースが出てくる可能性はあるでしょう。しかし、今までなかったことが起こるためのハードルはかなり高いはずで、米国経済に大打撃を与えるようなイベントでもない限り、今後も海外経済が要因で米国がリセッションに陥ることはないでしょう。少なくとも米中貿易問題やBrexit(ブレグジット:英国のEU[欧州連合]離脱)が、海外要因として初めて米国経済をリセッションに陥れるイベントとは思えません。なのになぜ、日本には海外要因を必要以上に気にする人が多いのでしょうか。

 それは日本がずっと貿易黒字国であって、海外の需要に左右される経済体質にあるからでしょう。金融危機がまさにそうであったように、金融危機など米国のイベントなのに、その半年後には日本経済に大打撃をもたらしました。しかし、忘れてはならないことは、米国が貿易赤字国だという事実です。貿易赤字国であることは海外にモノを売るよりも買う方が多く、海外の景気が悪くなったら、むしろモノが安く買えて有利な立場になります。米中貿易問題は、昔起こったような「世界貿易の減少→大恐慌」を想起させ、メディアが読者を怖がらせ、クリック数や視聴者、購読者を増やすのに格好のテーマなのかもしれません。しかし重要なのは、米国が中国にモノを売っている金額は年間たったの1,300億ドルであって、19兆ドルの米国経済が米中貿易問題からどれだけの影響を受けるか、など数字で考えればすぐに分かることです。

 私は米国で、これまで3回のリセッションを経験しています。そのいずれもが、資産価格の下落(一方で負債額は一定)に伴うバランスシート調整でした。最近は経験していませんが、米国経済がリセッションに陥るもう一つの要因はインフレです。1970年代の石油ショックがこの代表的な例です。もちろん将来、米国経済をリセッションに陥らせる他の要因が出てくるかもしれません。しかし、米国経済の7割は個人消費なわけですから、バランスシート調整やインフレと並んで、個人が財布のヒモをグッと締めようと思える要因でなくてはなりません。現在の状況を見てみると、米国の銀行のバランスシートはこれ以上考えられないほど健全で、インフレも海外経済が不調なおかげでFRB(米連邦準備制度理事会)の目標である2%を下回る状況がずっと続いているので、リセッションを起こそうと思っても困難な状態です。もちろんいつかリセッションは訪れるのでしょうが、リセッションをずっと予想し続けるのは、長生きしている老犬を見て「いつか死ぬ」と予想しているのと同じだと思います。

 私はいつも「リセッションを伴わない株価の下落は買い」と申し上げています。この機会が訪れる典型的なパターンは海外要因です。1997~1998年のアジア危機、ロシア危機がそうでしたし、前述のような2015~2016年の中国経済減速もそうでした。2015~2016年はFRBが金利を据え置いていただけなのでまだマシですが、1997~1998年はFRBが金利を下げたために、その後、株式相場は吹き上がる結果となりました。今年に入ってFRBは当面金利を据え置く方針を示しましたが、私はむしろ、FRBがまた海外要因にだまされて、バブルが発生してしまわないかの方が心配です。海外経済が不振なわけですから海外の株式に魅力はないし、相変わらず日本やドイツ、スイスの国債はマイナス金利でも買われるという超バブル状態ですから、世界の多くの投資家にとって、比較的景気が良いのにFRBが金利を据え置く中で、米国の株式は魅力的な投資対象に映るはずです。そのため、今後世界の超債券バブルが米国株式バブルに移行していく可能性は想定しておくべきだと考えています。

 自動車、航空、住宅建設、金融など、米国経済がリセッションに陥れば打撃を受けると見られるセクターが、軒並み5~10倍の低PER(株価収益率)という、あたかもリセッション真っ只中にいるようなバリュエーションで取引されています。市場のリセッション予想は既に「懸念」でなく「期待」になっていると言っても過言ではないでしょう。ここまで来てしまえばむしろ、リセッション期待が裏切られるリスクの方が大きいと考えるべきです。米国経済は変わらなくても、市場がしばらくリセッションはこないと認識し、バリュエーションが正常化するだけで大きな上昇率となるだろうからです。

(2019年4月24日記)







最終更新日  2019.04.26 19:56:01

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