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堀古英司の「米国株式の魅力」

全135件 (135件中 1-10件目)

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2018.06.25
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あと3カ月弱でいわゆる「リーマンショック」から10周年になります。米国では歴史的におおむね、景気が良くなると金融規制が緩くなり、景気が悪くなった後に金融規制が強化されるというサイクルが繰り返されてきました。本来逆であることが望ましいのですが、やはり問題が起こっていない時にはなかなか金融規制には手を付けられないものです。リセッションに入って不良債権が表面化し、初めてその融資が不適切であったり違法であったりというのが判明し、関係者が逮捕され、その後その失敗を二度と繰り返さないように規制を強化する、というのが過去のパターンです。

 しかし、この10年間は過去のパターンとやや異なります。逮捕者が出なかったこともそうですが、不良債権の規模が過去と比べて格段に大きかったこと、そしてそれによって格段に厳しい金融規制が導入され、その状態がずっと続いてきたことです。皆さんご存知のいわゆる「ボルカ―ルール」もそうですが、それ以上に金融規制下で監督役を命じられたFRB(米連邦準備制度理事会)による質的な規制は非常に厳しいものでした。トランプ政権が成立したことで、それまでFRBで非常に厳しい監督をリードしてきたタルーロ理事は2017年4月をもって辞任となりましたが、その後も目に見えて金融規制が緩和されるということはありませんでした。

 しかしその状況が、今週6月28日をもって変わろうとしています。これはトランプ政権下で金融規制のトップに就任したFRBのクォールズ理事のもとで、初めてストレステスト結果が発表される日だからです。

 すでに第一弾のストレステスト結果は6月21日に発表されました。それによると、経済成長率がマイナス8.9%、失業率が10%に上昇、ダウ平均が60%以上下落するという、10年前の金融危機を超える大リセッション入りするというシナリオの下でも、大手35行は全て健全性を維持できる、という結果となりました。これは逆に言えば、10年の金融規制が如何に厳しいものだったかを示すもので、端的に言うと、金融機関に無駄に余剰自己資本を積ませている状態がずっと続いてきたことを意味しています。

 6月28日に発表されるストレステスト結果では、各金融機関がFRBに提出した資本計画が承認されるかどうかが判明します。金融機関は軒並み過剰自己資本の状態ですので、承認されれば、少なくとも1年分の利益によって積み上がった自己資本は全て株主に還元されることが予想されます。現在、米国の大手行の株価収益倍率は10~12倍ですが、大手行の株主である限り、この逆数である8.3%から10%が今後毎年得られることになるというわけです。ちなみにこの8.3%から10%のうち、配当で得られるのが2.5%前後、残りが自社株買いによって還元されていくことになると見ています。

 6月22日時点でS&P500指数は年初来3%の上昇となっているのに対して、米国の金融セクターからなるETF(XLF)は逆に3%の下落となっています。前述の通り、米国の大手行の株価収益倍率は10~12倍と割安ですが、割安に据え置かれている理由の一つは、生まれた利益が本当に株主の手に渡るかどうかが投資家にとって不透明だからでしょう。

 しかし6月28日にストレステストの結果が発表された後にははっきりします。10年物国債の利回りが3%を割っている時に、8.3%から10%の利回りというのは、リスクを勘案しても魅力的に見えます。魅力的すぎるので恐らく、株価が上昇することによって適正な利回りに収束すると見るのが自然でしょう。

 金融機関をサポートするもう一つの材料は昨年末に成立した法人税減税の影響です。金融機関は法人税減税のメリットをより多く受ける可能性が高く、その分税引き後利益が増えて自己資本が増加、株主還元を実施しやすい状況になります。また法人税減税によって米国全体の企業の税引き後利益が増加しますので、金融機関の貸出先の自己資本増強にもつながり、与信リスクが低下するという側面もあります。

 一部には金融危機から10年、そろそろまた訪れるのではないか、という声も聞かれます。しかし、金融危機時の大手金融機関のレバレッジは30~40倍、現在は上記の通り、せいぜい10倍。今は金融危機を起こそうと思っても起こせない状態なのです。

(2018年6月22日記)







最終更新日  2018.06.25 22:52:16
2018.05.02
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皆さんの中にも、次世代の成長をリードすると見られる米国の大手ハイテクの代表的銘柄群、いわゆる「FAANG銘柄」(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、グーグル)に投資していらっしゃる方は多いと思います。当コラムや私の講演等でも、この中でネットフリックス以外についてはしばしばご紹介しています。

 ニューヨーク証券取引所にはFAANG銘柄によって構成されている「NY FANG指数」というものがありますが、この指数は2017年、56%もの上昇率となり、米国株をより広くカバーするS&P500指数の上昇率18%を大きく上回りました。しかし、NY FANG指数は2018年初から3月半ばにかけてさらに24%上昇。さすがに調整なしにそのまま上昇できないペースとなったところで今回の調整を迎えることになりました。

 今回の調整について、「上昇ペースが速い」以外に市場で言われている理由はさまざまです。フェイスブックは大きく報じられたケンブリッジ・アナリティカを通じた個人情報漏洩問題、グーグルはこれをきっかけとしたインターネットに対する大規模な規制導入懸念、アマゾンは連日に渡るトランプ大統領からのツイッター攻撃、そしてアップルはiPhoneの売上成長鈍化懸念です。

 確かにこのような理由はあるのですが、そもそも2カ月半で24%と言うと、1年間で115%の上昇ペース。いくらFAANGでも、これは維持は不可能でしょう。そこにちょうど良い調整理由が出てきたというのが、自然な受け止め方ではないかと思います。

 上昇ペースが速かった分、調整も大き目になるのは当たり前ですが、このようなときに大きなサポート材料となるのが、「バリュエーション」です。要するに株価が下落しても、バリュエーションが割安であれば下値は限られたものと見ることができますし、一方で調整後でもバリュエーションが高ければ持ち続けることはできなくなるでしょう。

 このような観点から、FAANG銘柄が現在どのような位置にいるのかを見てみたいと思います。なお、FAANG銘柄のうちネットフリックスは当社として分析の対象外なので省かせていただきました。

●フェイスブック(FB

 確かに今回のケンブリッジ・アナリティカを通じた個人情報漏洩は深刻な問題であり、フェイスブックは責任を逃れられないと思います。ただ今回の失敗をきっかけに、フェイスブックは今後二度と同様の過ちを犯さないような措置を取るでしょうし、中長期的にそれはかえって非常に強固で、安心感が持てるものとなるでしょう。

 1日当たりアクティブユーザー数が15億人に迫るプラットフォームは全メディアにとって脅威であり、今回のスキャンダルを各メディアがより大きく取り上げるのは当然です。メディア報道によってより不安心理が高まり、2019年予想PER16倍台と、S&P500指数平均とほぼ変わらない水準にまで下がっている現状では、悪材料はかなり織り込まれたと思います。

●アマゾン(AMZN

 FAANG銘柄の中で、ビジネスにしている市場規模が最も大きく、そしてそこから予想される成長率が最も高いのがアマゾンでしょう。従って当然のことながらPERも高く、調整局面が訪れたときになかなか下値を読みにくい銘柄かと思います。

 ただ私は今回、トランプ大統領が下値を教えてくれた感じがしています。一企業にとって、世界最強の国の大統領が連日ツイッター攻撃する以上の悪材料はあるでしょうか? アマゾンは3月末にかけて連日トランプ大統領のツイッター攻撃を受けて株価は1,300ドル台。今後よっぽどのことがないと、この水準を下回る状況は考え難いのではないでしょうか。

●アップル(AAPL

 iPhoneの需要が多くて生産が追い付かないと「供給不安」、店頭にiPhoneが並んでいると「需要減少」――これはメディアがアップルについて報道するときの常套手段となりました。私もアップルやiPhoneの売上動向についてはもう10年近く分析していますが、繰り返される一定のパターンがあり、メディアはその波を捉えて報じているだけというのがよくわかります。

 保有する現金から税金を差し引いた時価総額で2019年予想PERを計算すると11倍を割り込みます。ビジネスの上下動をよく理解し、これに耐えられる中長期的な投資家は、引き続き十分報われる状況だと思います。

●アルファベット/グーグル(GOOGL

 検索以外の事業を拡大しつつあり、それによって中身がわかりにくくなってきているのが一因で、比較的高い成長率の割に2019年予想PER20倍と、市場平均を少し上回っている程度です。

 検索エンジンと並んで傘下のYouTubeは「金の成る木」に近い良いビジネスであるほか、現在進行中のさまざまな投資・開発案件が将来芽を結んでくることによって得られる収益はほとんど評価されていない状況です。もちろん割安な株価がさらに割安になる可能性はありますが、こちらも長期の投資は報われる可能性は高いと考えています。

 このように2000年のネットバブル期と異なり、昨年の非常に高い上昇率にもかかわらず、利益成長率も高かったおかげで、今回株価調整後の大手ハイテク銘柄はバリューの観点から見ても、調整前とほとんど遜色のない水準だと思います。もちろん、市場が再び評価してくれるようになるまでには時間が必要でしょうが、その時間を待つ(=リスクを取る)価値はあると考えています。

2018430日記)







最終更新日  2018.05.02 01:56:21
2018.03.14
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森友の書類改ざん問題を巡っては各方面から「前代未聞」「信じられない」との声が上がっています。もちろん性善説が前提であればそうなるのかもしれません。ただ私のように、金融の世界に居る人間は、何事においても「絶対」という考え方はせず、確率で考えるようにしています。たとえば確かに、財務省が書類を改ざんという行為を行っているような可能性は、限りなくゼロに近かったでしょう。しかし、もともとゼロではありません。しかも客観的に考えて、終身雇用制が前提である日本では、そうでない米国よりも、不正が行われる可能性は高めに見積もっておかなければなりません。

 もちろん米国でも企業の不正は多く起こっています。しかし米国では雇用・被雇用は基本的に自由ですから、不正が起こるのは多くの場合、動機は金銭です。不正を働く人も普通はリスクとリターンのバランスを考えるはずですから、リターンを大きく上回る刑事罰や罰金を設定しておくことによって、多くの不正を防ごうとするシステムになっています。たとえば2008~9年に投資詐欺が発覚したメイドフ受刑囚やサンフォード受刑囚は、いずれも100年以上の禁固刑と共に、巨額の罰金が科せられています。2002年に粉飾決算が発覚したエンロンのCEOは今も服役中です。

 これに対して、終身雇用制が前提である日本で起こる不正は、問題が厄介です。というのは、実際に株主等が被る被害は非常に大きくても、多くの場合その動機は金銭目的ではなく、昇進や評価だからです。しかも日本では裁判等でも「株主のようなお金持ちが被る損失」は優先順位が高くない一方、昇進や評価目的の不正は情状酌量の余地が大きいと判断され、罪が軽くなる傾向があります。与えた損失は巨額でも、日本のホワイトカラー犯罪で、禁固10年以上の刑となるようなケースは極めて少ないのではないでしょうか。

 この結果、日本では不正を働くことによるリスクがリターンに対して非常に甘くなっていると感じます。終身雇用制において、被雇用者が昇進や評価に置く価値は非常に大きなものです。給与や賞与、退職金、年金など金銭的なものにとどまらず、やり甲斐、地位、世間体、名誉などお金で買えない(測れない)大きな価値が入っているからです。

 また上司に不正を指示されたとして、それを拒否したときに想定される不遇な状況も計算に入るでしょう。日本は「就職」でなく「就社」の色彩が強く労働市場が流動的ではないので、もし会社を辞めざるを得なくなったら、などを勘案すると、相対的な価値はさらに大きくなります。このような価値が法的に適正に反映されないことによって、不正を働くことに伴うリスクに比べ、得られるリターンが大きくなってしまっているのです。

 終身雇用制は経営者の判断も歪めます。業績が悪くなっても従業員をクビにできないので、仕方なく粉飾決算に手を染めることになります。幸いゼロ金利がずっと続いているので、粉飾決算は長い間表面化することもなく、ゾンビ企業として生き続けることができます。問題が発覚しても「雇用を守るためにやりました」と言えば、裁判所が情状酌量してくれるだろう、という期待も計算式に入っているでしょう。本来であれば、優秀な人材はさっさとそのような会社を去って新天地でその能力を発揮すべきところが、それを難しくしているのが終身雇用制なのです。

 このような終身雇用制がもたらす問題を考えれば、それを防ぐシステムは非常に強固なものでなければなりません。しかし残念ながら、米国に比べ、多くの日本企業のコーポレートガバナンスは弱いままです。取締役会のメンバーのほとんどが従業員出身者であったり、過剰な買収防衛策を採用していたり、株主優待制度によって相対的に外人投資家を不利にしていたり、多くの子会社を抱えていたり…もちろん、多くの組織は倫理観に優れ、不正とは関係ないのでしょうが、このような要素を一つ一つ積み上げていくと、終身雇用制に伴うリスクは、客観的に判断して、一般的に高く見積もっておかなければなりません。これは実際、オリンパスや東芝など、多くの企業不正が発覚していることによってすでに証明されています。

 何よりも、このような状況は日本経済全体にとって大きなマイナスです。財務省にいるような優秀な人材が、修正液やコピー機を駆使した工作作業のために深夜まで残業を強いられるというのは、資源の大きな無駄遣いです。企業でも不正を指示されるようなことがあれば、サラリーマンである前に、人間であることを思い出していただきたいと思います。終身雇用制と日本のガバナンス体制を考えれば、今のところ、このような不安を払拭できるのは一人一人の倫理観しかないのだと思います。今回、3月2日付け朝日新聞の記事をきっかけに財務省による文書改ざんが明らかになりましたが、リーク元は、倫理観と勇気ある財務省内部であったことを願うばかりです。

(2018年3月14日記)






最終更新日  2018.03.17 00:18:57
2018.02.09
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 2月に入って米国株式市場は久しぶりの調整局面を迎えました。メディアなどでは1月の雇用統計が好調で、特に平均時間当たり賃金が前年同期比2.9%の上昇と8年半ぶりの高い伸びとなり、長期金利が上昇したことが要因とされています。ただ長期金利が上昇したと言っても当日の市場で10年物国債は0.08%上昇しただけであり、このくらいの上昇はいつでもあり得ることです。また賃金上昇率=インフレ率ではなく、実際、現在インフレ連動債から計算した5年物期待インフレ率は1.8%台と、金融危機後のレンジ1.2%から2.4%のほぼ真ん中にとどまっており、直ちにインフレを警戒しなければならない状況でもありません。

 もちろん雇用統計及びそれを受けた長期金利の上昇が調整のきっかけとなったのは事実でしょうが、主因はここ数年積み上げられていた株式オプションを売ってオプション料を稼ぐ動き(一部で変動率指数「VIX <恐怖指数>」のショートと呼ばれる)にあります。多かれ少なかれ、株式相場の下落要因は大きく景気変動要因によるものと、今回のVIXショートにみられるような、リスクの担い手がそのリスクを担い切れなくなることによるものに分かれます。今回の場合は一部、VIXショートに特化したETF(上場投資信託)が閉鎖に追い込まれたことにも象徴されているように、景気変動要因によるものではなく、明らかに後者のほうです。

 米国では株式のオプション(買う権利や売る権利)が盛んに取引されています。オプションはいわば、株価の上下に対する保険のような役割を果たしていて、オプションの売り手はある程度以上の値下がりや値上がりに対して保険金を払う代わりに、保険料をもらえる仕組みになっています。保険においては引き受け手となれるのは保険会社だけですが、オプション市場では基本的に誰でも引き受け手(売り手)となることができます。また保険金が支払われるようなイベントを意図的に起こすのは困難な(または犯罪となる)のに対して、オプション市場では意図的に起こすことは不可能ではありません。たとえば何らかの悪材料が出たのをきっかけに金曜日の出来高の少ない所を狙い、株価を下げて保険金を支払わせようとすることもできてしまいます。とりわけ、米国の景気が好調で、ここ2年近く株式市場でこれといった調整もなく「株価の大きな下落はないだろう」と、多くの投資家が油断してオプションの売り手に回っている状況では、それはマグマのように溜まり、いずれ噴火してしまう確率が高まる・・・今回の調整も正にそのような状況で起こりました。

 オプションを売ること自体は、株式に投資すること同様、市場における1つの有効な投資手段です。多くの人がリスクを回避したいという需要がある中、オプションを売ることによってその需要に応えることは市場を安定させ、ひいては経済の成長に寄与する効果さえあると思います。問題は、保険料に当たるオプション料が適正であるかということです。最近で言うと、オプション料の算定に使用されるS&P500指数の変動率は10%台前半と、歴史的に見て極めて低い水準で推移していました。要するに、保険の引き受け手が、実際のリスクに見合った保険料をもらっていない状態なのです。多くの場合、保険金を払わなければならないようなイベントはすぐには訪れないので、保険料欲しさに引き受け手が油断して、そのような状況が長引くと要注意ということなのです。
 
 これは1987年ブラックマンデーの引き金となったいわゆる「ポートフォリオ保険」や2007年に始まった金融危機におけるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)をはじめ、最近では2015年8月や2016年2月の調整局面でも起こっています。リスクの担い手がそのリスクを担い切れなくなることによって起こるという点で、そのメカニズムはすべて同じです。

 もっとも、変動率が低いからといって直ちにそれがおかしいとか、バブルとかいう話ではありません。ただあまりに変動率が極めて低い水準が長く続くと、前述のようにマグマが徐々に溜まっていきます。残念ながら、そのマグマがいつ噴火につながるかというタイミングを当てることは出来ません。ただ私が行っている分析で、その確率を計算することはできます。簡単に申し上げれば、変動率が低いこと、そしてその期間が長いことが次の噴火の確率を上昇させる要因になります。そしていったん噴火が起こると、一気に次の噴火の確率が下がり、起こったとしても大した噴火とならない確率が高まります。今回も、数週間も経てば市場は落ち着きを取り戻し、次の噴火まではしばらく時間的余裕ができるということになるでしょう。

 基本的には今回の調整もこのような理解で良いと考えていますが、一点、勘案しておかなければならない要因があります。それはFRB(連邦準備制度理事会)議長が交代したことです。バーナンキ氏は2006年に、イエレン氏は2014年にそれぞれFRB議長に就任し、市場では「バーナンキ・プット」や「イエレン・プット」など、要するに株式相場が下がっても、FRBが金融政策で適切な対応を取ってくれるとの期待がありました。2月5日にパウエル氏が新FRB議長に就任しましたが、今後もはたして「パウエル・プット」は有効なのでしょうか?おそらくそうなのでしょうが、今後本当にそうなのかを市場が確信することが必要で、そのリスクは、これまでよりもやや高い変動率という形で市場に反映されることになるでしょう。株式相場が急落した2月2日、これは雇用統計が発表された日であると同時に、イエレン氏がFRB議長としての任期を終える前日であったことを忘れてはなりません。

(2018年2月9日記)






最終更新日  2018.02.15 04:47:04
2017.12.12
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アメリカで約30年ぶりの抜本的な税制改革が成立間近となっています。法人税減税の20%への引き下げをはじめとする税制改革法案は11月半ばに議会下院を通過、12月2日に上院も通過して、現在上下院で条項の異なる部分について調整が行われており、早ければ議会が閉会する15日までに成立の可能性もあります。年内の成立が無理でもおそらく来年初には成立に持ち込める見通しで、懸案であった税制大改革はついに現実のものとなりそうです。一方で税制改革に対する最近のメディアの報道や市場の反応を見ていると、誤解と思われるものが多々見られます。

 第1に、「来年減税となるのだから、年内は株の売りを控え、来年1月に株を売ったほうがいい」という誤解です。実は今回、株式を多く保有する高所得者層の投資に関わる税率(キャピタルゲイン税率や配当税率)に変化はない見込みです。それだけではなく、上院・下院両方の法案で、連邦所得税からの州税・地方税の控除が廃止される方向です。これによってニューヨークやカリフォルニアなど州税・地方税率の高い地域に住む人にとっては逆に、来年は増税となります。

 さらに現在、上院の案では税法上「株式は先入れ先出し法によって売却しなければならない」という条項が入っています。現在は税法上、投資家はどの株価で買った株かを選んで売却することが認められているので、むしろ自由が利く今年中に売ったほうが有利ということになります。州税・地方税のない地域に住む低・中所得者という一部の投資家を除いては、全体で見れば、もともと予定していた株の売却を来年1月に持ち越す理由は見当たりません。

 第2に、「ハイテクは海外に留保している利益が多いので、減税のメリットをより大きく享受できる」という誤解です。確かにハイテクはグローバルに展開している企業が多く、海外に留保している利益が多いので、海外留保利益を米国に戻す際の減税措置が受けられます。ただその際の税率は当初予想された10%ではなく、上院案では14.49%、下院案では14%と高めになっています。

 また今回は「アメリカの」法人税が減税になるのですから、グローバルに展開しているハイテク企業にとってのメリットは相対的に小さいことになります。さらに今回の上院案には法人税の「代替ミニマム税」が盛り込まれています。これは設備投資や研究開発費に認められている減税のメリットが一定以上となった場合、減税額が制限されるというものです。ハイテク企業は相対的に設備投資や研究開発費を多く使っていますから、この条項はハイテク企業にとって不利ということになります。

 第3に、「税制改革審議の難航で株式相場が下落」という、メディアによる誤解を招く報道です。今年はここまでS&P500指数は18%上昇していますが、セクター別で見て最も上昇しているのは前述の通り、相対的に減税のメリットが小さいはずのハイテクで、36%上昇しています。逆に、相対的に「アメリカの」法人税減税からのメリットが大きいはずのエネルギーセクターはマイナス7%、通信セクターはマイナス10%です。

 要するに、今年株式相場は上昇していますが、税制改革法案の成立を期待して上昇してきたわけではないのです。よって審議が難航したからといって下落する余地など、そもそもほとんどないはずなのです。12月に入って上下院で税制改革法案が通過し、成立の見通しが立ってきたことでハイテク売り、エネルギー・通信買いという税制改革法案成立を織り込むような動きが少し見られましたが、全体としては税制改革による影響はまだまだという状況です。

 要するに、そもそもこれまで市場の税制改革法案に対する期待は高くなかったこともあり、そのメリットが本格的に経済・市場に表れてくるのはこれからです。そして忘れてはならないのは、この税制改革はトランプ政権にとって経済政策の第一歩であり、今後もインフラ投資やさらなる規制緩和などの重要政策が次々と控えているということです。

(2017年12月8日記)






最終更新日  2017.12.12 05:52:29
2017.10.20
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昨日、NY株式市場は1987年10月19日の株価急落、いわゆる「ブラックマンデー」から30周年を迎えました。30年前のこの日、ダウは508ドル下落して1738.74ドルとなり、この22.6%という1日の下落率は長いNY株式市場の歴史でも群を抜いて過去最大となっています。当時、私は「株とは何か」もよくわからない大学生だったので、直接その経緯を知るわけではありませんでしたが、社会人になってこの業界でもアカデミックな世界でも、しばしば原因を検証する機会がありました。30周年が近付いてきたことで、さまざまなメディアが「当時と似てきている」などの論調を取り上げています。しかし実際には、今ではほとんど考えられない現象と考えて良いでしょう。

 第1に、情報取得手段の違いです。ブラックマンデーの原因として一般に知られているものの他に、実際には市場ではさまざまな噂が駆け巡っていたとされています。たとえば当時、株価上昇の大きな一因とされたM&A(企業の合併・買収)に対して高い税率が課せられるようになるとの噂や、レーガノミクスに大きな影響を与えているとされたレーガン大統領の妻、ナンシー・レーガンさんが癌の手術で入院したなどという噂です。

 当時は今のようにインターネットで情報を入手できるわけでなく、テレビやラジオの情報も今のようなスピードで伝わるわけではありません。人々は、たとえそれが噂である可能性が高いと思っても、真偽を確認する手段がほとんどなかったのです。株価にはリスクプレミアムという名の、人々の不安心理が反映されているわけですが、情報が確認できないということ自体が原因で不安心理が高まりやすい状況だったというわけです。

 第2に、「ポートフォリオ・インシュランス」の役割です。1980年代は、機関投資家の株式相場の値下がりリスクに備えたい、という需要に応えるポートフォリオ・インシュランスが広く利用されるようになっていました。いわば「株式の値下がりリスクに備える保険」なので、保険を引き受ける側が株式の値下がりリスクを負うことになります。他の保険と同様、金融工学の発達とともに、計算上は株式の値下がりリスクも算出可能になったので、引き受けた側はその計算通りにヘッジしていけば問題はない、はずでした。想定外の下落となったので保険を引き受けた側に損失が発生する、というのは保険の世界ではよくあることですが、問題は引き受けた主体が比較的少数であったということです。

 それによってどのような問題が起こるのか? 引き受けた主体に大きな損失が発生して保険金が支払えなくなると、保険が役に立たなくなるので、保険を買っていた側も自分で株式を市場で売らなければならなくなったのです。これは2008年金融危機の際にも起こった現象で、当時世界最大の保険会社AIGが危機に追いやられたことで、AIGの保険を買っていた主体が慌てて自らあらゆるリスクのヘッジに走り、さらに悪循環を生むことになりました。

 しかし当時と異なり、今では株式の値下がりリスクの担い手はかなり分散されるようになりました。当時のポートフォリオ・インシュランスは、現在はオプションなどデリバティブの形で市場で広く取引されており、その多くは個人投資家でも簡単に取引できるようになっています。中には株式相場が下落して慌てるリスクの担い手も居るかもしれませんが、わざわざ好き好んでリスクを取りに行っているような人々ですから、逆に有利な価格になればさらにリスクを取ろうと思う人も多いでしょう。すなわち、リスクの担い手がごく少数に限られていて悪循環を生む可能性が高かった当時と異なり、分散するようになった今では、株式相場下落時のリスクの担い手の行動もさまざまなため、悪循環を生むことなく、十分吸収可能な状態になっていると考えることができます。

 第3に、株式のバリュエーションです。ブラックマンデー30周年を前にしてよく目にした論調の1つは、「当時のPER(株価収益率)は16倍、現在は20倍」というものです。しかし、当時の米10年物国債の利回りは8%~10%台の推移でした。PER 16倍というと益利回りは6.25%(1÷16)。リスクを取らなくても8%以上の利息が得られる時代に、株式は明らかな割安だったわけではありません(それでもその後の10年間、株式に投資していたほうがずっと高いリターンを生んでいますが)。 一方で現在、米10年物国債の利回りは2.3%という時代です。配当利回りだけで2%近いだけでなく、益利回りは5%と米国債利回りの2倍も出る状況です。さらに来年に向けての増益と、予想される法人税減税を勘案すれば、株価収益率は16倍台に低下、益利回りは6%近くに上昇します。もっとも、このような株式が割安な状況は今に始まった話ではなく、金融危機後ずっとです。

 これは、投資家の多くが金融危機を境に株式への投資というものに対して、必要以上のリスクを感じるようになったのが主因だと思います。ここにきて株式相場が上昇してきたので徐々に警戒を解くようになってきたが、とりわけ債券との比較ではまだまだ割安な状況が続いている、ということでしょう。

 株式というのは「ビジネスに関するあらゆるリスクを担う」ことがそもそもの役割です。当然ながら、今後もあらゆるリスクを反映して大きく上下する運命にあるでしょう。しかし、現代の投資を考えるにあたってリスクの中にブラックマンデー時のような状況まで想定するのはかなり無理があると思います。何よりブラックマンデーであっても、金融危機であっても、結局長期的にはリスクを担った投資家にご褒美がもたらされている事実を忘れてはなりません。

(2017年10月19日記)






最終更新日  2017.10.21 04:07:16
2017.08.18
カテゴリ:カテゴリ未分類
先月の日本出張時、ホテルでテレビをつけるとどのチャンネルも「一線を越えたかどうか」ばかり。このコラムでも繰り返し指摘している通り、もはやメディアというのはさまざまな情報を公平に伝えるものではなく、視聴率や購読者、クリックが獲得できるのであればそれを徹底的に取り上げるしかない、競争激化によってそれほど余裕がなくなってきているものだ、ということをつくづく感じました。このような時代の中で我々が公平で正確な情報を得ようと思えば、できるだけ自分自身で元のソースを確認しにいくしかない、ということなのです。

 先週末シャーロッツビルでの衝突事件後のトランプ大統領の対応についても、メディアの報道ではなく、私は実際の発言とツイッターのみをフォローするようにしていました。実際、一部誇張気味のメディア報道とは裏腹に、先週末や今週月曜日の声明の段階ではトランプ大統領の対応は十分挽回可能な範囲だったと思います。しかし、火曜日の記者会見とその前後のトランプ大統領の言動は衝撃的で、とうとう一線を越えてしまったか、と感じざるを得ないものでした。

 去年の大統領選挙前にも記しましたが、予算をはじめとする経済政策成立において大きな力を持っているのは議会です。大統領に与えられているのは拒否権のみです。しかしメディアでは圧倒的に大統領が大きく取り上げられるため、あたかも、大統領が考えている経済政策を何でも実行できるような印象を持っている方が多いのではないでしょうか。メディアでよく、「トランプ大統領は就任後、主要政策を何も成立させることができていない」と報じられるのも、そのような誤解を招く一つの要因でしょう。

 ただ今回のトランプ大統領の「一線越え」は、そもそも大統領の権限は限られているから、と安心して見ていられる範囲のものではありません。というのはこれから年末にかけて、ワシントンでは重要なスケジュールが控えているからです。まず、おそらく9月末前後のタイミングで、議会は連邦政府の債務上限を引き上げる必要があります。また9月末は連邦会計年度末でもあるため、少なくとも部分的にでも予算案を通過させなければなりません。夏休み前に成立させられなかったオバマケア代替法案も手付かずのままです。トランプ大統領の公約である税制改革やインフラ投資となると、さらにハードルが上がっていきます。

 オバマケア代替法案は、上院で過半数である50票に届かなかったことによって成立させられませんでした。しかし、債務上限引き上げや予算案を成立させるには上院でさらに10票多い60票が必要です。60票必要ということは少なくとも民主党から8票が必要となるため、自ずからある程度民主党の意向を反映した予算案を提示しなければならないということになります。しかし、民主党寄りの予算となると、オバマケア代替法案でも見られたように、今度は共和党の保守派がこれに反対して票が減ってしまうということになります。過半数のオバマケア代替法案も通せなかった議会が、このようなさらに高いハードルをクリアするのはかなり困難と考えなければなりません。

 このような政治的に重要なスケジュールが控えていたからこそ、大統領の求心力が必要なタイミングだったのです。これらハードルが高いと見られる法案を成立させられるとすれば、大統領が共和党だけでなく、民主党の一部議員もまとめ上げる以外にチャンスはなかったように思います。そしてそのためには、今回製造業評議会を去った大企業トップ達のサポートも必要だったはずです。現時点では、短期的な措置でいったんこの難局を乗り越えるという可能性が最も高いと考えられますが、トランプ大統領就任とともに市場や産業界が期待していたような一連の経済改革は、今週のトランプ大統領の「一線越え」で、可能性が大きく後退してしまったと考えざるを得ません。

 税制改革については、多くの個人や企業が今年中の成立を期待して、または見込んで経済活動を行っていたでしょうから、これが先送りになると見れば年末に向けては経済活動を控える動きに出るでしょう。債務上限問題については、毎度のことながら期限を前後してV字回復になるとわかりながらも、一時的な投資家心理の悪化は避けられないでしょう。そして何よりも、8-9月は多くの投資家が夏休み中で、悪材料が出たときにそれに立ち向かう買いが出にくい時期です。焦って売る人は沢山いる一方で、買う人は焦る必要はないという状況です。

 企業の業績は好調ですし、恐らく一連の経済改革は来年の中間選挙前には成立するでしょう。なので調整があるとすればそれは一時的な投資家心理の変化が主因だと思います。しかし今回のトランプ大統領の「一線越え」はその投資家心理を変化させるのに十分なものだったと思います。






最終更新日  2017.08.23 03:46:58
2017.05.22
カテゴリ:カテゴリ未分類
5年前のこのコラムで、「良いビジネスを安く買う:アップルとグーグル」と題し、どちらの株式に投資すべきかについて記しました。市場には様々なニュースが飛び込んできて、株式というのは短期的にはそのようなニュースに振り回される傾向がありますが、5年も経てば相対的にはそのようなニュースの影響は小さくなり、逆に本来ビジネスの持つ価値がより正確に株式に反映されるものです。我々が運用するファンドでも常に、その時のニュースに惑わされることなく、そのビジネスの3年から5年先の姿を見越して投資する方針を取っています。

「安く買う」というのはバリュー投資の基本ですが、バリューだけを見ていると質の悪いビジネス、いわゆるバリュー・トラップに引っ掛かるリスクがあります。一方で良いビジネスばかり追いかけていると高値を掴む可能性が高くなります。それでは「良いビジネスを安く買う」という方針を追求している我々はどうしているかというと、良いビジネスが短期的な理由で安くなっている機会を狙うのです。そのような観点から我々が5年前に目を付けたのがアップルとグーグルでした。

アップルやグーグルのような良いビジネスが安く提供されているような状況は、滅多にあるものではありません。しかし5年前は両社共に、「一株利益50円で年率20%で成長している株が610円で、しかもそのうち100円以上は現金」という状況だったのです。当時はグロース(成長)を追い求める投資家が、両社の巨大化と共に見切り売りを進める一方で、バリュー投資家がまだ積極的には買い出動していない(通常バリュー投資家は急いで飛び付くような買い方はしません)、いわばグロースからバリューへのバトンタッチの段階であったことによって「良いビジネスを安く買う」機会が提供されていたのです。

あれから5年間、アップルの株価が配当の再投資込みで82%の上昇にとどまったのに対してグーグル(2015年に社名をアルファベットに変更)は189%の上昇となり、当時予想をお示しした通り、グーグルへの投資がアップルを大きく上回る結果となりました。どうしてこのような差が出たかというと、これも5年前にお示ししていた理由の通りであり、グーグルの方が「金のなる木」に近い良いビジネスであったから、またグーグルはビジネスによって生まれたキャッシュフローを配当で還元するのではなく、再投資することによってさらに高いリターンに結び付けていったからです。

この5年間、ギリシャ危機、地政学的リスク、量的金融緩和終了、利上げ開始、エネルギー価格急落、エボラ熱、中国株急落、ブレクジット、大統領選挙等々、あの手この手で皆さんに株式に投資させまいとするニュースをメディアは率先して取り上げてきました。もちろん短期的にそのようなニュースが株式市場に影響するのは確かです。しかしよく考えてみて下さい。この中のどれ一つとして、グーグルの中長期的なビジネスの本質的な価値に影響を与えるものはあったでしょうか?最近のメディア間の競争激化を見るにつけ、今後ますます皆さんに株式に投資させまいとするニュースが優先して取り上げられると思います。そのような中でも、その会社のビジネスにさえ自信が持てれば、ほとんどのニュースは無視して良いはずです。これまでの5年間がそうであったように、今後の5年間も同じく、いやますます投資家としてはこのようなスタンスが重要になっていくと思います。

さてそれではグーグルはこの先5年間も、これまでの5年間と同じように、様々なニュースが出ても、それらに惑わされない良い投資であり続けるのでしょうか。恐らくそうでしょう。しかし同時に恐らくグーグルをしのぐ、もっと良い投資になると考えられる会社があります。それは昨年7月の楽天証券17周年記念セミナーでもご紹介したアマゾン(AMZN)です。

本稿執筆時点で、グーグルもアマゾンも株価は970ドル近辺です。時価総額を見てみると、グーグルが6,630億ドルに対して、アマゾンは4,640億ドルです。しかし両社が主戦場とする市場規模を見てみると、グーグルは広告市場であり、恐らく世界で数千億ドルの規模だと思います。一方でアマゾンが主戦場にするのはアメリカの小売市場であり、これだけでも10兆ドル単位と桁違いの巨大な市場です。これに加えて、小売りと並んで収益の主力になると見られるアマゾン・ウェブサービスは近年、インターネットの世界において顕著な成長を遂げてきています。そのような会社の時価総額がグーグルを下回っている状態というのは、時間の経過と共に修正されていくでしょう。

先日ビジネススクール時代の教授と食事をする機会があり、最近卒業生はウォール街には就職しなくなっている、と話していました。「やはりグーグルが人気トップ企業なのですか」と聞いたところ答えはNOで、トップはアマゾンとのことでした。アマゾンが狙う市場の規模、それに対する人材を含む将来に向けた積極的な投資、そしてアマゾンのこれまでの再投資実績を考えると、5年後のグーグルvsアマゾンの対決はアマゾンに軍配が上がると見るのが自然だと思います。結果はまた5年後、このコラムで。

(2017年5月22日)






最終更新日  2017.05.25 00:42:25
2017.04.13
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ウォール街に「5月に売ってどこかへ行け」という格言があるのはご存知かと思います。アメリカでは納税者の殆どが確定申告をしますが、その作成過程で、非課税で退職金勘定に積み立てられる金額が決まります。そして今年はその提出期限が4月18日となっています。アメリカの人は退職金勘定の多くの部分を株式で運用するので、この時期から株式市場に資金が流入しやすくなる=需給が引き締まって株式相場が上昇しやすくなる、という訳です。この傾向は歴史的なデータからも明らかで、過去50年間でS&P500指数の月別上昇率を取ってみると、4月の上昇率が一番高くなっています。

ただこれは確定申告時期という季節要因によって出来た需給の歪みであり、ファンダメンタルズを反映したものではありません。5月に入ってもこの要因はある程度残るものの、この要因が剥落すると相場は調整局面に入る可能性が高くなります。この傾向も歴史的なデータから裏付けられていて、過去50年間で6月から9月にかけては、年間で最もパフォーマンスの悪い時期となっています。もちろん年によってはこのような需給を打ち消すような好材料や悪材料が出て、過去の平均通りにならないこともあります。ですので実際の相場予測に適用するにあたっては、絶対ではないけれども無視できない、程度に考えておくのが良いと思います。

そこで問題は、今年はどうなるのか、ということです。今年は3月末までにS&P500指数は既に5.5%の上昇となっています。これは年率に換算すると24%近い上昇率となります。大統領選挙の結果判明からだと10.4%上昇していますが、これも年率に換算すると25%近い上昇率となります。実は私はこの、やや速い上昇ペースを心地良いものとはとらえていません。というのは下記の通り過去50年間で、大統領選挙で勝利した初年度(11月から翌年10月)にS&P500指数が20%上昇して、4年後に勝った大統領(または同党の候補)はいないのです。

1988年 ブッシュ(父)22.0%上昇 1992年敗北
1996年 クリントン29.7%上昇 2000年敗北
2012年 オバマ24.4%上昇 2016年敗北

これは感覚的にも分かりやすいと思います。人々の記憶はそれほど長続きするものではないので、政権としては4年後の選挙に勝とうと思えば、就任から3~4年目に景気や株価を持ち上げていきたいはずです。上記の確定申告という季節要因によって需給が歪むのと同じで、初年度から過剰な期待によって景気や株価が持ち上げられると、後になって息切れするのは目に見えているからです。実際、最近の大統領選挙で現職(または同党の候補)が負けた年は全て、S&P500指数の上昇率は10%以下にとどまっています。

1992年 ブッシュ(父) 6.7%上昇
2000年 クリントン 4.9%上昇
2008年 ブッシュ 37.5%下落
2016年 オバマ 2.3%上昇

私は、トランプ政権の経済関係閣僚は史上最高のメンバーだと思っているので、当然このような傾向も熟知していると思います。そして恐らく、これまでの速い株式上昇ペースを心地良いものと思っておらず、出来れば抑え気味に行きたい、そしてそのような方針を取っていくのではないかと考えています。具体的には、市場の期待が高くなり過ぎたら抑え、好材料のペースが速くなったと見れば遅らせ、更には目下の好景気や株価上昇という「糊しろ」があるうちに、悪材料を出しておこうという考えも視野に入ってくるのではないかと思います。穿った見方をすれば、オバマケア見直しが先送りになったり、税制改革が遅れたり、軍事的に強硬姿勢を取るというのも、その一環と考えることもできます。

4月第3週から本格化する米1-3月期決算はおよそ5年ぶりの高い増益率になる見通しです。確定申告期限という需給要因や、決算というファンダメルズ要因はいずれも株式相場のサポート材料です。もし4月、これらサポート材料に支えられて、この3月までと同様の速い上昇ペースが続くのであれば、私は「5月に売ってどこかへ行く」のが賢明だと考えています。というのはトランプ政権としては上記理由から、何らかの形で市場の過度な期待は抑えたいはずで、現状では株価が上がれば上がるほどその動機は強まっていくと考えられるからです。

一方で、これまでの季節的傾向に反し、4月や5月が調整色の強い展開となるようであれば、年後半に向けて再び期待が持てるので「5月に売ってどこかへ行く」のはもったいない、ということになります。4月相場は調整から始まっているので6月から早々と夏休み入りできる可能性は低そうですが、今後1-3月期決算があまりに良いものになり、それに市場が素直に反応していくようだと、今年に関しては「5月に売ってどこかに行く」ことも考え始めないといけなくなるでしょう。但しユナイテッド航空以外で。

(2017年4月13日記)






最終更新日  2017.04.14 23:27:59
2017.03.01
カテゴリ:カテゴリ未分類
トランプ政権が誕生してから約1カ月半が経ちました。去年の大統領選挙において、予めクリントン支持を表明していたアメリカの新聞は92%、購読者ベースだと97%に及びますが、その殆どが予想を外す結果となりました。選挙結果判明後、しばらくは予想を外したことに対する反省や検証に紙面を使っていたと思いきや、トランプ氏が大統領令を連発し始めるやいなや、再びトランプ氏に対する攻勢を強めています。通常、「大統領就任100日」というのはメディアも新大統領の出方を暖かく見守るものですが、近年インターネットやSNSの台頭により競争が激化しているのか、「100日」を待つ余裕も無いように見えます(第317回 何故メディアの情報を鵜呑みにしてはならないか 参照)。

それでもアメリカの多くのメディアは、大統領選挙のかなり前から、どちらの候補を支持しているかを表明してくれますので、情報を取り入れる方も、それを割り引いて取り入れることができます。しかし日本ではそのようなおことわりもなく、それら報道があたかも中立メディアのものであるように報じられるケースが多いように思います。もちろん事実と異なる情報を流しているわけではありませんが、やはりトランプ氏の暴言は何にも優先して取り上げられる傾向は顕著です。大統領選挙以降、日本の友人から頻繁に「アメリカは大丈夫か」と聞かれますが、トランプ氏の選挙演説を聞いていれば選挙前も後も変わらないし、連発してきた大統領令も、言っていたことを実行しているだけで特にサプライズはありません。恐らく暴言ばかり報道されていた日本では、そもそもトランプ氏がどのような選挙演説を行っていたかご存じない方が多く、「アメリカは大丈夫か」になってしまうのだと思います。

このような「アメリカは大丈夫か」という懸念を嘲笑するかのように、大統領選挙後、特に企業や消費者心理を示す指標は絶好調ですし、株式相場は連日の史上最高値更新となっています。「アメリカは大丈夫か」と聞いてきた友人は、アメリカの株式相場が史上最高値更新中であることを知らない、殆ど報道されない、と言っていました。しかし少なくとも投資家はトランプ政権の本質を見失わないように行動すべきです。それは今後、法人税率や個人所得税率が引き下げられて資本コストが低下すること、規制が緩和されていくこと、遅れていたインフラ投資が実行されていくこと、そしてそれらを通じてアメリカの成長率が引き上げられていく事、です。

トランプ政権になってかなり長く続いたデフレへの懸念が払拭されたことに伴い、世界の投資家は債券から株式へと大規模な資産アロケーションのシフトを行わなければなりません。通常、投資家の不安心理を示す変動率指数(VIX)は株価下落時に上昇するものですが、最近は株価上昇時にも上昇しており、そのような投資家が焦っている様子がうかがえます。恐らくメディアの多数を占める反トランプの報道を妄信してしまう結果「アメリカは大丈夫か」と不安を感じてしまい、多くの投資家が米国株式を買い遅れていることによるものでしょう。逆に言えば、これだけメディアのネガティブキャンペーンが続く中で株式相場が上昇しているということは、相場の腰はかなり強いと見て良いと思います。

今後リスクが考えられるとすれば、それはメディアのネガティブキャンペーンではなく、トランプ政権及び共和党の目指す経済政策の実行が遅れてしまうことでしょう。まずトランプ大統領が近々「驚くべき税制改革」を発表する、と言ってしまったので、市場の常として、本当に驚くべき税制改革であったとしても、発表後は一旦相場が調整する場面が想定されます。また私は今のところ、減税等の法案成立は秋口と見ていますが、これら来年にずれ込むようだと経済への影響は避けられなくなると思います。というのはトランプ氏の大統領選挙勝利以降、企業も個人も既に減税をはじめとする経済政策が実施されることをかなり織り込んできているはずです。減税等法案の成立が先延ばしになればなるほど、企業や個人の経済活動がスローな時期が長くなるからです。

トランプ政権のスピードを見ていると現時点ではそれほど心配する必要は無いと考えていますが、例えばオバマケアの撤廃・改革で予想以上の時間を費やしたりあまりに議会で敵が増えてくるようだと、このリスクは視野に入れ始めなければならなくなります。しかしその場合でも調整は一時的で、その後実際に政策が実行された時の経済へのインパクトが相場を下支えしていくことになるでしょう。

(2017年3月1日記)






最終更新日  2017.03.04 08:05:48

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