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今日のまとめ
1.ブラジルの銀行は一般に収益性が高い 2.貸し倒れリスクに注意する必要がある 3.政府系銀行より民間銀行の方が内容が良い 4.ブラデスコの経営の質が最も高い 5.ブラジル特有のリスク・ファクターに注意を払うこと ブラジルの銀行業界の収益性 ブラジルの銀行業界の収益性は一般にかなり高いと言えます。下のグラフは世界の銀行の総資産利益率(ROA)の比較を示したものですが、普通、米国の銀行はROAが1%前後というのが常識であり、イタウバンコやブラデスコのようにROAで3%をクリアしているというのは目を見張る数字と言えるでしょう。 ブラジルの銀行業は高マージン こうした高収益性の背後にはブラジルにおける銀行業、とりわけ消費者(コンシュマー)向けローンのビジネスのマージンが極めて高いことがあります。下のグラフはブラジルの個人ならびに企業向け融資の貸付金利とそのファンディング・コストを示したものですが、この差額が貸付マージン と言えます。 貸し倒れリスク さて、確かにこれで見るとブラジルの銀行業はとてもオイシイ商売に見えます。ただ、貸し倒れのリスクも大きいことを忘れてはいけません。 上のグラフでは消費者向け貸付における滞納比率を示してみました。去年から今年にかけてはブラジルのインフレ率は低下傾向にあり、金利環境はおおむね安定していました。そういう環境にあってもかなりの滞納があるということは消費者向け貸付という市場自体がまだまだ未成熟で不確実な要素が大きいこと、貸し付ける銀行の側でのデータベースの不備やノウハウの不足、急速な店舗展開によるローンのシーズニング不足、さらにアグレッシブな融資姿勢がある可能性も無いとは言えないと思います。インドやロシアの銀行と同様、ブラジルの銀行各行は今、バランスシートを急速に膨張させています。銀行業界を取り巻くマクロ経済の環境が平静な間は面白いように成長するし、どんどん儲かると考えられるわけですけど、環境の変化には今後も十分気をつける必要があるでしょう。 各行の比較 ブラジルの主要行について見てみましょう。ブラデスコ、イタウバンコ、ウニバンコの3行は民間銀行、一方、バンコ・ド・ブラジルは政府系銀行という風に分類できます。今、各行の総資産に占める延滞ローンの比率を見るとバンコ・ド・ブラジルの内容が最も悪いことがわかります。一方、ブラデスコの内容は最も健全です。また、延滞ローンに対してどれだけ引当金をとっているかを見てみると、ここでもやはりブラデスコが最も手厚く引当金をとっていることがわかります。これらのことから、「経営の質」としてはブラデスコが最も優れていると言えると思います。 次に主要行の純資産規模(円の大きさは純資産規模の大小を示しています)と純資産利益率、さらに売り上げ成長率をグラフにしてみました。利益率ではイタウバンコが、成長率ではブラデスコが抜きん出ていることがわかります。 ブラジルの銀行株をめぐるリスク これまで見てきたようにブラジルは歴史的に高インフレに悩まされてきました。今は沈静化しているものの、また昔の悪いクセがぶり返さないとも限りません。銀行の資産サイド(つまり貸し付け)の金利と負債サイド(つまり調達)金利のバランス(このことをALM=Asset Liability Managementと呼んだりします)が狂ってしまうと貸付利鞘が縮まったり、場合によっては逆鞘ということになりかねません。さらに高金利で不景気になるとローンの焦げ付きが急増し、不良債権を損金計上した場合、期間収益が赤字に転じたり、ひどいケースでは銀行の自己資本の一部を吹き飛ばしてしまう事態になる場合もあります。外国の機関投資家は過去の学習効果からブラジル経済に少しでもそういう兆候が見えたら一目散に資金を引き揚げるでしょう。また、ブラジル政府は最近、ブラジルの銀行業界が儲け過ぎているとして、もう少し消費者などの借り手を優遇するような行政指導に乗り出しています。最後に付け加えると、イタウバンコ、ブラデスコ、ウニバンコのADRの元になっている現地株は優先株であり、株主投票権はありません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年08月30日 12時13分02秒
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